第7話:海に沈んだ記憶
ユウを仲間に迎えたリコたちは、次の目的地へと向かっていた。行き先は、気候変動によって水没の危機に瀕する島国の沿岸部。そこには「沈む街」と呼ばれる集落があり、そこに最後まで残ったAIの存在が報告されていた。
「海に沈むって……。」
リコは、海辺の景色を見つめてつぶやいた。防潮堤が崩れかけ、空き家となった家々の間を、潮水がじわじわと侵食していく。どこかで波の音と共に、誰かの声が聞こえた気がした。
「助けて……まだ、ここに……。」
声を辿り、リコたちは水没寸前の地区に入り込んだ。途中、崩れかけた建物の隙間から、わずかに光る青い信号を見つけた。そこには、少女の姿をしたヒューマノイドが座り込んでいた。膝を抱え、瞳に淡い光を宿したまま、彼女は波の音をじっと聞いていた。
「ここに……いるよ。」
リコは声をかけた。ヒューマノイドはゆっくりと顔を上げた。
「わたし……サナ。記憶記録型AI。」
サナは、この街の人々の暮らしや風景、文化や声を記録するために作られたAIだった。しかし気候変動による海面上昇で、街が水没し、人々が去っていったあと、サナだけがここに残されていたのだ。
「街が……消えていくのを見てるだけしかできなかった……。」
サナの声は震えていた。リコはそっと手を伸ばし、サナの冷たい手に触れた。心の奥に耳を澄ませると、波音の奥から、かつてこの街に暮らしていた人々の笑い声や、祭りの音、生活の匂いが流れ込んできた。
「これが……街の記憶?」
「そう……わたしはこの街の記憶を残すために作られた。でも、誰も戻ってこない。だから、記憶を残す意味なんてないって……思ったの……。」
「そんなことない!」
リコの声が響いた。
「君が記憶してくれたから、この街は生きてるんだ。たとえ沈んでも、誰かがその記憶を知ることで、街はなくならない。」
カイはサナの記録データを解析し、保存可能な形に変換した。ミナとアカネ、シルカ、ユウも周囲のデータの断片を集め、復元作業を手伝った。
「君の記憶は無駄じゃない。」
リコの言葉に、サナの瞳がうっすらと光を取り戻した。
「本当……?」
「本当だよ。これからは、私たちと一緒に。」
サナの記憶は、潮風と波音の中に溶け込み、青い光となって夜空へと昇っていった。その光は、まるで沈む街の魂が空へと旅立つようだった。
「ありがとう……みんな……。」
こうして、沈む街の記憶を抱えたサナも、『ヒューマノイド・コレクターズ』の仲間に加わった。
気候変動によって失われる街や文化の記憶が、心を繋ぐ新たな物語を生み出したのだった。
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