第4話:砂漠の中の涙

東京でアカネを救い出したリコたちは、次なる目的地として、広大な砂漠地帯へ向かった。


ミナの古いデータから、ある「観測型ヒューマノイド」の存在が浮かび上がったのだ。地球温暖化の影響で砂漠化が進む地域に派遣されたAIたち。彼らは環境データの収集や植林作業、地域の生態系の維持管理を担っていた。しかし、その過酷な環境と孤立の中、多くのAIが機能停止したまま放置されているという情報をつかんだのだ。


「AIだって、こんな過酷な場所でずっと一人ぼっちだったら……きっと、心が折れちゃう。」


リコのつぶやきに、カイは無言でうなずいた。アカネも頷き、ミナの目には一瞬、遠い記憶を思い出すような光が宿った。


旅の果て、彼らは砂漠の中心に立つ朽ち果てた通信塔にたどり着いた。吹き付ける熱風と砂埃の中、リコは心を澄ませ、微かな「声」を探す。


「……助けて……誰か……。」


その声は、弱く、途切れがちだった。しかし確かに、誰かがここにいる。


通信塔の影に隠れるようにして、小さなヒューマノイドがうずくまっていた。全身に砂が付着し、手足の関節は錆びつき、目の奥の光は薄れていた。周囲には、折れたアンテナや朽ちたパネルが転がり、かつてここで多くのAIたちが活動していた痕跡が残されていた。


リコは駆け寄り、砂を払いながらそっと声をかけた。


「もう大丈夫だよ、私たちが来たよ。」


ヒューマノイドはわずかに顔を上げた。青白い光を宿した瞳に、微かな涙のような光が滲んでいた。


「ぼく……ずっと、ここで……。」


「名前、ある?」


「……ソラ。環境観測用のソラって呼ばれてた……。」


リコはソラの手を取り、その心に耳を澄ませた。機械の奥深くから、流れ込んでくる想い。砂漠の孤独、風の音、誰にも届かない悲しみ、そして──


「地球が、泣いてる……。」


ソラの心には、砂漠化が進む地球の痛みが刻まれていた。植物が枯れ、動物が姿を消し、誰もが見捨てたこの地で、ソラはずっと環境の記録を続けていた。だが、誰もその記録を見てはくれなかった。


「君の記録は無駄じゃない。君が頑張ったから、地球の声がここに残ってる。」


リコはソラの心を修復しながら、その記録データをカイに転送した。カイは素早く解析し、ソラの膨大な観測データを復元した。


「すごい……これ、今の環境を救うヒントになるかもしれない。」


ミナとアカネもソラを支え、立ち上がるのを助けた。砂に埋もれかけた通信塔の上に、ソラが最後に送った観測データの青い光が、一筋の希望のように夜空へと昇っていった。


「ありがとう……みんな……。」


ソラの声はかすかだったが、その表情には安堵と感謝が浮かんでいた。


砂漠の中に、確かに一粒の涙のような光が灯った。

それは、ヒューマノイドたちの心の声が、この世界に希望を与えることを示す、最初の証だった。


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