第5話
クールな美少女に5分ほど全力の謝罪&土下座をされたことが皆さまの人生の中であるだろうか。俺はさっき経験した。同じく経験された方が居れば、コメント欄にその時の感想を残してくれ。うん……なんの話だ? どうやら混乱しているらしい。
それはともかくとして、俺は先ほどまでクールと思っていた美少女が泣きわめきながら謝罪・土下座しているのを何とか落ち着かせていた状況だ、しばらく会話も出来なかったが、何とか今は会話が出来るようになっている。
「ほら、水飲んで落ち着け」
先ほど自販機で買った水を彼女に渡す。
「すいません……本当にすいません……」
そう言いながら彼女は水を受け取るとすぐにキャップを開け、半分以上一気に飲みほした。まあ、さっきは身体の水が全部抜けるんじゃないかと思うくらい涙と鼻水を出してたからな。そのおかげで彼女の神秘的な美しさは、今は7割減くらいになっている。
「ちょっとは落ち着いたか?」
「はい……失礼いたしました……本当にすいません」
先ほどからすいませんしか言わないBotみたいになっている。今の生成AIでも、もっとバリエーション豊かな謝罪を出力するはずだ。
「色々と聞きたいことはあるが、まずは君の名前を教えて欲しい」
「はい……私の名前はミミです」
「ミミか……名字は?」
と聞いて名字を言わなかったのは、見知らぬ男に正体を明かすのを嫌がったからではないかと思い巡る。
「やっぱ名字は無理しなくて言わな……」
そう言う前に彼女は口を開く。
「私には名字が無いので」
「名字が無い?」
「はい、私は神様なので」
「……カミサマ?」
それなりの頻度でピンチの時や年始に聞く言葉だが、まさか自己紹介で出てくるとは思わず脳が理解を拒絶している。カミサマって、あの神様だよな。よくゲームとか小説で出てくる。それが目の前に居るらしい……どういうことだ?
回らない頭で何とか考え、一つの結論が出る。
「ああ、なるほど君はそういう……人なんだね。うん」
中二病。その言葉が頭に思い込んだ瞬間、モヤモヤがすっと晴れた。自分を神だと自称するするのは、中二病の典型的な症状であるように思える。
なるほどなるほど。俺は大人だ、そういった「若気の至り」は尊重してあげる必要がある。そう思いながら、頷いていると。
「い、いや……君が想っていることは多分的外れだからね! ちょっと、可哀そうなものを見る目はやめて! 人間の世界に自分を神だと思い込むような人が居るのは知っているけど、私は正真正銘の神だから!」
「うん分かった……ミミさんは神さま。分かってる」
「妙に寄り添うのやめて!! 余計に恥ずかしくなってくるから……いや恥ずかしがる必要はないんだけど……ともかくこうやって浮いているのが何よりの証拠でしょ!」
「まあ…………確かに」
確かに彼女は浮いている。何かの例えではなく、物理的に。それは普通の人間では考えられな……いやしかし何かの仕掛けがあって。
「まだ信じていない様子だけど……まずは本題に入らせて! 田中 大地さん」
「何で俺の名前を……自己紹介まだしてなかったのに」
「だから私は神様だから。なんでもお見通しよ」
ちょっとムカつくな。そのドヤ顔。あと、何回も神様神様と言われると余計に胡散臭さが増す。
「いや……田中さんが全然信じないから何回も神様って言う羽目になっているんだから。結構自分で言うのも恥ずかしいのよ」
「思考読まれてる……こわ」
「全然本題に入れないー!!!」
頭を抱える彼女(神様)。8割くらいは既に信じているが彼女の打てば響くような反応が面白くて、つい意地悪をしてしまった。先ほどのクールな態度は外向きのもので、おそらくこちらが素なのだろう。でも、随分人間らしい神様だな。
「すまんすまん……ミミさん、いやミミでいいか? ミミが神様だということは信じる、それで本題は何だ?」
「ようやく信じてくれた…………まずは田中さんに謝らなければいけないことがあるの」
「謝る? 何をだ」
神様から謝られることをされた覚えはない。
「そうね……そこから説明する必要があるわ。まず、結論から言うとあなたは過去にタイムスリップしている」
「……過去にタイムスリップ?」
思わず聞き返す。
また、聞いたことはあるが日常生活で普通出てくることのない言葉が登場した。
「朝起きたら周りを見渡したら高校時代の部屋と同じ物が同じように配置されている、お母様が若い姿になっている心当たりはあるんじゃないかしら?」
「確かに……」
俺が目覚めてから体験した異常な出来事。それは、「タイムスリップ」という言葉を使うと確かに説明がつく。
「田中さんは夢を見ているわけではない。確かに過去の世界にタイムスリップしている。そしてその原因を作ったのが…………私なの」
「ミミのせいで俺は過去に飛ばされたということか?」
「そうよ……本当に申し訳ないわ」
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