自分の噂

町中でわたしを見たという知り合いが、幾人も出た。

「本当のあなたって、あんなだったのね……」

しみじみそういう友人が出てくる始末。


あんなって、どんなだよ!

わたしは必死になって、友人に食らいついた。

「いいの、いいの。人には人の人生があるものね」

そう言って、友人はどういうものなのか教えてくれなかった。


そこで、自分で推理することにする。

最初に浮かんだのが、枕元で旦那に言われたセリフ。

ホテルならまだしも、町中でさらすわけはない。

いや、何考えてるんだ、わたし。


『本当の』というからには、おそらく今のわたしとギャップのある姿なのだろう。

自分のイメージを、変化させていってみる。


たとえば男っぽく、ひょっとしたらハゲてて……。

……。


わたしは、父が最近この辺に遊びに来ているという話を思い出していた。

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