第11話

「そうそう。だから、早く行った方がいいかもな。その「まるまじろ」まで。さあ、行こうよ」


 戸田が急かして来た。

 

「「まるまるまじろ」よ」

「行こうか。その喫茶店まで」

「じゃあ、西新宿まで歩いて行くわよ!」


 野鳥や蝿などが上空で、飛びまわる中で、どうやら西新宿まで真剣に行かないといけなくなった。長谷則まで私を急かすので、私と腹野と新居田も早川も緊迫してきた。


「自転車使えば楽だぞ。人数分ないけど……」


 腹野がポツリと言った。


「なら、車の方が良くない?」


 新居田も言うが、どこか不安気な声音だ。


「あ、乗り物はダメみたいね」


 私は、ゲームマスターから言われたことを思い出した。


「そんな! 自転車も車もダメなら、走るしかないじゃない!?」


 真っ青な顔の早川が、いきなり西新宿の方向へと走り出した。それから、腹野と新居田も走り出すが……。


「あ! 走っちゃダメ!」


 長谷則と戸田も走ろうとしていた。


 早川が、私の声を聞いて立ち止まったが、急に倒れてしまった。


「あ! outだ?!」

「……?!」


 戸田と長谷則が、それを見て勢いよく立ち止まった。


「ごめん! 言うのが遅くなったけど、走るのもダメって、ゲームマスターが言っていたわ!」


 腹野と新居田も倒れてしまった。


「そんな……」


 私がゲームマスターのルールを、そのまま言わなかったせいで、一瞬のうちに三人も倒れてしまった。


「早く歩くんだ!! 倒れた人達は今は放っておいて!」


 長谷則が叫び、速足で前進した。

 何か武道でも学んでいるのだろうか?

 

 そのうしろで、戸田が笑って、早歩きした。


 私も西新宿まで、生まれて初めて危ないほどの速さで歩いて行くことになった。

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