第3話 日本崩壊後

 ぽつぽつとした雨がまた降ってきた。


 秋の夜は、身体には応える。スッと冷えてしまうものだ。


 食料は補給してある。


 あれから、運よく信号機の傍にあるデパートに駆け込んだのだ。そこで、手と足の震えに耐えながら、三日分の食料をクレカで買い。アウトドア用品コーナーで寝袋、カッターナイフ。生理用品や薬品を地下の薬局で買う。モバイルバッテリー。ランプ。マッチなども買った。いずれも、現金は使わないようにした。


 シェルター代わりに地下の赤煉瓦の喫茶店へ行く。ここは、昔は防空壕だったと友達が冗談交じりに言っているのを聞いたことがある。


 これで、三日くらいはスマホから生じた崩壊の不安を凌げるだろうと思い。私はウエイターへアイスコーヒーを頼もうとした。


 だが、代わりに天井から大きな音と共に、人々が雪崩込んできた。


 今は床に無造作に置いた寝袋によって、身体の熱と精神の安定感が奪われないようにしているのが、精一杯だった。


 喫茶店内でも、さっきまでの恐怖を克服するかのような。談笑も消えてしまった。


 ここには、20人くらいの人達が蹲っている。


 喫茶店のオーナーも、レジを前にして項垂れていた。


 外は、どうなっているのだろう?


 当然の疑問が芽生えた。


 寝袋から起き上がり、出入り口の赤煉瓦の階段まで行くと、一人の男に呼び止められた。

 

「あの。さっき、蝿や蜂、野鳥の大群が空を飛び交っていたから、危ないから外へ出ないほうがいいよ」 

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