昔のあたしは……
あっ、あぁぁっ! ……
「カスミっ!! っ!! …………」
あぁ…… すごいぃ……
「はぁっ、はぁっ……」
気持ち良かったぁ…… ふふっ、しかも幸せな気分で満たされている……
でも不思議だよなぁ、同じ『パコ』でもこんなに違うなんて…… 直接触れ合っているからかな?
それに…… ふふっ、たっぷりと中に…… これで身も心も全て一つになれたみたいで幸せだ……
こんな幸せな気持ちになれるんだったらもう少し早くヤッておけば良かった。
んっ…… あぁっ、いつも最後にしてくれる、あたしを労るような優しいキスも好きぃ…… もうコイツ以外となんて考えられないな……
これも色々と経験して失敗を繰り返したおかげ…… と思えるくらい、こんなに愛されているあたしはなんて幸せ者なんだろう……
だからこそ、この幸せを逃さないように…… あたしも全力でコイツに愛を伝え続けるんだ……
◇◇◇
中学時代のあたしは調子に乗っていて、少し荒れ気味だった。
家族関係は良好で家庭には何も文句はなかったけど、学校って場所にあまり馴染めず、あたしは孤立気味だった。
女共はキャピキャピしながら群れているし、男共は思春期特有の悶々とした劣情を帯びた目で女をジロジロ見ているし…… あたしにはそんな周りの人達に合わせる事が出来なかった。
だから近寄りがたい雰囲気を出すために髪を金色に染めたり、不良っぽく見られるように変な方向に努力していた。
そんなあたしに転機が訪れた…… 転機といっても悪い転機だが。
周りに不満を抱えていた中学一年生の時、押し付けられるような形で嫌々任された美化委員の仕事中、同じ委員会だった一学年上の男子バスケ部の先輩と仲良くなった。
孤立気味だったあたしにも優しく接してくれて、あたしが抱える悩みを親身になって聞いてくれる先輩が周りの人間と違うように見えて徐々に好きになり…… そして先輩から告白されて、あたしに初めて恋人が出来た。
そして付き合い始めて一ヶ月…… あたしは先輩に初めてを捧げた。
一緒に登下校して、デートを何度もして、遂に…… という感じだったが、正直…… 初めての行為は痛かっただけ。
でもこれも男女交際ではいつか通る道だし、そのうち何とか良くなるのかな、と思っていたが…… 実際はそうならなかった。
初めてを捧げて以来、先輩はデートそっちのけであたしを求めてきた。
あたしも先輩が一応好きだったから応じていたけど、大して気持ち良くないし疲れるだけで、行為というのはあまり良いものだと思えなかった。
だけど先輩はあたしのそんな様子に気付きもせず、自分勝手に身体ばかり求めてくるもんだから…… 段々と先輩の事が好きじゃなくなり、あたしはすぐに先輩をフッた。
先輩も先輩で負け惜しみのように、別れ際にあたしに向かって『マグロ女』とか言ってきて、今なら『バーカ、お前が下手くそなだけだ』と言い返していただろうが、当時のあたしはその言葉を聞いてかなりショックを受けて、家に帰って自分の部屋で泣いてしまった記憶がある……
だからもう恋なんていいや、と思っていたんだけど…… 今度は二学年上でイケメンだと有名だった先輩と仲良くなり、それからすぐにイケメン先輩に告白されて…… 今度こそは大丈夫かなと思い、付き合ってみる事にした。
その時に『あたしってばこんなイケメンに告白されるくらい特別で可愛いんだ』と変な自信をつけてしまったのが失敗を繰り返す原因の一つになっちゃったんだが…… まあ、それは置いといて……
だけどイケメン先輩もバスケ部の先輩と大して変わらなかった。
最初は色々と不満を抱えたあたしに寄り添うような甘い言葉をかけ、いかにあたしが大切かを語っていたのに、一度身体の関係を持ったら、後は…… 男はサルって言葉の意味を理解したよ。
それでも童貞だったバスケ部先輩よりも女の扱いに慣れていたイケメン先輩との行為は…… 『苦痛』とまではならなかった。
だけど所詮は中学生、下手なくせにこっちの都合も考えずに毎日のように求めてくる姿にやっぱり腹が立ってきて、イケメン先輩もすぐにフッてやった。
そして中学二年の頃だったかな? アイツと同じクラスになったのは。
あまりカッコ良くはないが、同級生とも平等に仲良くしていて、でも時々冷めた目で同級生達を見ていたのが少し気になって…… だから最初はあたしから声をかけたんだよ。
そして気付いたらアイツと仲良くなっていて、更には当時付き合っていた男の事を愚痴るような仲になり……
「おい、聞いてくれよ…… また失敗したぁ」
「またか…… お前も学習しないなぁ」
「今度はいけると思ったんだよ…… だけどやっぱりヤンチャな奴はアッチもヤンチャでイマイチだな」
「童貞の俺にアッチの話をされても困る」
「あーあ、もう恋人なんていらないや」
「と言いつつまたすぐに彼氏を作るんだろ?」
「んなもん、いつ誰を好きになるか分からないんだから…… 仕方ないだろ?」
「はぁ…… まずはその惚れっぽい性格を直せよ」
冷めている…… というか、周りの生徒よりも中身が少し大人なんだろうな、コイツは。
でもあたしの愚痴を聞いて、忖度なしにズバッと言い返してくれる所が話していて楽だったんだ。
この時にコイツの良さに気付いていれば…… 下手したら高校生でママになるくらいイチャイチャしていたかもしれないが、その当時のあたしは『話せば楽しいけど、童貞のくせに生意気な奴だな』くらいにしか思ってなかったんだよ…… 本当に男を見る目がなかった。
そして高校生になってもいい人に巡り合えず更に男を取っ替え引っ替えしていた、そんなある日……
あたしがあまりにも切り替えが早いのを浮気と勘違いした元カレ共が、あたしの事で喧嘩になってしまったんだ。
『お前が俺の女を取った』だの『お前が俺の女に付きまとっていた』だの…… 浮気とか二股をしていたと勘違いされて、あたし達の学校に他校の生徒が乗り込んでくる事態になってしまった。
あたしはというと、どちらとも別れていたつもりだし、そんな事になっていると知らず、今度は大人な男性が良いとイケメンな大学生と付き合い始めたばかりだったから状況が分からずに混乱していたんだけど……
「おい、ここにいたら危ないからこっちに来い」
高校でも同じクラスになったコイツと…… 外であたしを巡って喧嘩になっているのを回避するため、こっそり入手していたらしい合鍵を使って学校の屋上へと逃げた。
「だから男はちゃんと選べって言っただろ」
「でも…… だって、今度は上手くいくと思って……」
「でもでもだってじゃねーよ、ったく…… 仕方ない、外が静かになるまで昼寝でもしてるか…… おい、立ってないで座ったら?」
「何で屋上にカーペットが用意されてんだよ……」
「これ? しばらく動けないだろうと思って、屋上に来る前に用意しておいた」
「マジかよ…… よっと…… はぁぁ…… この後彼氏と遊ぶ約束だったのに、今日はもう無理か……」
「この状況じゃ無理だな、ついでに言うと、今付き合っている彼氏もやめておけ…… お前の話を聞く限りその男、他にも女がいるぞ?」
そんなわけ…… でもコイツの忠告、かなりの確率で当たるんだよ。
何でコイツは……
「なあ、何でお前はあたしの話を親身になって聞いてくれるんだ?」
普通なら女の…… しかも男が絡んだ愚痴なんて聞きたくないだろうに、でもコイツは嫌な顔もせずに、しかも遠慮せずにズバズバ答えてくれる…… それが最近、心地良いと思うくらいにズバズバと……
「んー? 何でだろうな? でもお前の話は聞いてて楽しいし…… 冷たい言い方をしてもしっかりと受け止めて、きちんと考えて答えてくれるから…… 一緒にいて楽…… というか、心地良く感じているのかもな…… ふぁぁぁ、眠っ…… 俺は寝るからな……」
えっ…… まさかあたしと同じように感じていたのか?
えっ? えっ? コイツ……
もしかして…… あたし達って意外と相性が良いんじゃ……
いやいや、いくらなんでも…… これは友達としての話だよな?
「すぅ…… すぅ……」
よく見たらコイツ、まつ毛が長いな…… しかも見慣れてきたから顔も可愛らしく見えてきたかも…… って、いやいやいや! あたしってば何を考えているんだ!!
でも…… でも……
うん、性格の相性が良くたって、アッチの相性が最悪だったら大問題だ。
それで散々失敗してきたんだから……
ああ、もう! あたしがこんなに悩んでいるのに隣でスヤスヤ寝やがって!!
……よし決めた!!
試しにいっぺん、コイツの童貞…… 奪っちまうか。
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