第10話 ホクホク転生者

821:イッチ

ふふふ……ふふふ!ボクの子は最高だぁ!


822:転生者

おお、随分とご機嫌じゃないか

アスプロスが強くなりでもしたのか?


823:イッチ

そうなんだよねぇ!

強くなりたい性質と特性を積み込みまくったとは言え、この成長速度は異常なのさ!

ははは!ボクの見極めセンスは間違っていなかったという事だね!


824:転生者

それってどれぐらいなんだ?


825:イッチ

そっか…数値がないと分かりづらいもんね

ボクの眷属独自のステータスで表すと……こんな感じ!


Level23

(力)3→121

(敏捷)2→135

(魔力)8→146

(技量)1→103


って感じ

ちなみに補足入れとくと、ステ値3桁なると、小さな山なら壊せる!


826:奇跡の天童

は?……はぁ?何バカな事言ってんだよ


827:轟音天神龍

理解できねえって事が分かったわ、さんきゅ


826:転生者

コテハンニキ達が意味分からなすぎて頭抱えとるやんけ


827:奇跡の天童

事実訳が分からない内容だからな

なんだよ、転生者の眷属がその成長スピードって

眷属でそのスピードとか鬼か?

成長に伸び悩んでいる転生者達に謝罪してこいよ


828:イッチ

えぇ……そこまでの内容なの?他の転生者の成長スピードもっと早いと思ってたんだけど


829:転生者

ワイ氏、転生してから600年でようやく富士山くらいの山を破壊できた


830:転生者

はっはっは!俺さあ、転生してから400年目なんだけどさあ、ようやく破壊できたんよな


831:転生者

はっ!転生者達の阿鼻叫喚がスレ内に響いている!


832:イッチ

みんな!落ち着いて!!

今からアスプロスの様子をスレ内で配信するから落ち着いて!


833:転生者

最悪


834:転生者

ゴミクソ主やめろや


835:転生者

俺、次に転生するとしたらコイツの部下にはなりたくねえや

多分ゴキブリに転生する方がマシだと思う


836:イッチ

ボロクソに言いやがって……

そんなんだったら見せないよー?


837:転生者

ごめんなさい見せてくださいお願いします


838:イッチ

ひどい手のひら返しだなあ


839:転生者

これが転生者クオリティ


840:転生者

さすが我ら転生者、自慢できるほどの愉悦主義者だな


841:イッチ

愉悦主義は自慢にならないんだよタコ助

それで?結局見るんだよね?はいはーい、流しますよー





『ん?なんか見られているような……気のせいか』


この子はボクの子供のアスプロスー

人間としての名前は鏑木慎二って言うんだ


842:奇跡の天童

もしかしてだが……イッチ、俺たちにアスプロスの成長具合を見せるための配信か?


843:イッチ

半分正解だけど、半分不正解

答えは……まあ、見ていたら分かるよ


844:LIVE

『どうしたんだ?慎二』


『いや…気のせいだったみたいだ。周りに気配なんて見当たらないしな』


『そうか。…今日も潜るのか?』


『あぁ。俺を生かしてくれた人。その正体を知りたいからな』


慎二の声は覇気があった。実力だけの話ではない。何が何でも、命を救ってくれた恩人に会うという心意気があったからこその覇気。

実力は決して上位層には及ばないが、絶対に戻ってきてくれると確信していた。


845:転生者

ん?もう小さな山は壊せるんだよな?なら既に上位層なんじゃないのか?


846:イッチ

能力だけならの話ね、それは

ボクら転生者みたいに魔力を適切に運用できる訳じゃないし、フルパワーで使うにしてはアスプロスは人間寄りなんだよ

そんな理由があるって事で、正真正銘の100%は使えないって訳!


847:転生者

そういうことか…


848:イッチ

そーいうこと!


849:LIVE

『ここが…俺とあの人が出会った初めてのダンジョン…』


瞳を鋭く変化させ、目の前のダンジョンに意識を集中させる。

忌まわしきゴブリンに食われた記憶。名前も知らない恩人に助けられた記憶。そして、「君も私も化け物」と言われた記憶。


今の自分を形成する不可思議に空気を叩き込み、頭を冷静に変化させる。

目的を間違えないように。脳裏に焼き付いてある思い出を胸に収め、ダンジョンへと足を進ませる。


『ぐき…』


『天地春闘式・一式。春嶽しゅんごく


『喧しい』


850:イッチ

きゃー!ボクが作った加護スキルで習得した『天地春闘式(刀剣バージョン)』だー!


851:奇跡の天童

加護スキルとかも作ってたのかよ…


852:転生者

なにサラッと武闘系スキルも開発してんだよ


853:転生者

加護スキルってどんな感じ?


854:イッチ

ふふん!ボクの愛がたんまりと詰まってるスキルなのさ!


855:転生者

キモい


856:転生者

最悪


857:転生者

控えめに言って地獄に落ちろやボケナス


858:イッチ

ひどない?


859:LIVE


【エネルギーを吸収。加護スキル『天貫きし盲目』の強度が上がりました。『天貫きし盲目』の強度が上昇した事で『天地春闘式』に三式が追加されました】

『アナタはきっと…俺を見てくれているのでしょう。ならば、俺も……』


刀剣の柄を強く握りしめ、ダンジョンを力強く駆け抜ける。

ゴブリンなどではない。もっと強くなる上で大切な強敵を目指して。


道中に存在しており、隙があれば襲ってくるゴブリンは範囲攻撃である一式で片付けつつ、元々持っていた『探索』のスキルで強者と思える魔力を探す。


『この強い魔力…!まさかあの人の…』


『残念、不正解。あれは異常事態を起こそうとしているだけの異形だよ。同じ化け物でも私達とは永遠に相入れる事はないであろう、ね』


860:転生者

イッチ!?


861:転生者

なんで居るんすかねえ


862:転生者

さっきまでワイらと話しとったやろがい


863:轟音天神龍

なるほどなぁ…

最初からそのつもりだったって訳か…

アスプロスの成長具合、そして世界の崩壊具合を見せるつもりだったのか


864:イッチ

大正解〜


865:LIVE


『アスプロス…いや、慎二。体力全然あるよね。だったら一緒に行こうか』


『そっ、そりゃ良いですけど。アナタは一体…』


『それは君がもっと強くなってからって言ったはずだけど?それに、もう話している時間はなさそうだよ』


空間魔法から刀剣を取り出し、戦闘態勢を取る。

段々と巨大化する魔力に眉を顰めてしまう。


慎二も異様性溢れる魔力が危険だと察知したのか、刀剣を構える。


察知するまでの時間の長さは問題だが、察してからの動きは悪くない。

息子の動きに微笑みを浮かべつつ、脳内にこれから展開されるであろう作戦を練りあげる。


『慎二。多分、これからの敵は君の手には余る。だから、私から学んでね?』


『天地春闘式・二十一式。夢馬ペガサス


穏やかに呟き、刀を構える。そこから何の変化もなかった。


…なかった筈だった。一秒にも満たない僅かな時間の中、地面の中から大量の血が吹き出した。


866:転生者

何が起きた?


867:転生者

ワイ氏、なんも見えなかった


868:転生者

安心しろ、ワイも同じやで


869:転生者

どゆことなーん!助けて天童ニキ!轟音ニキ!


870:奇跡の天童

イッチ……どんな経緯があったらあんな武術を編み出せるんだよ…


871:轟音天神龍

あぁ…完全同意だ


872:轟音天神龍

…分からないお前らに説明してやるよ、イッチがどれだけ逸脱した武術を使ったかをな

夢馬ペガサス、あの技は規格外と言っても良い技だな

それも当たり前…あれはイッチの空間把握能力と驚異的なフィジカルがあるからこその技だからな

理論を言えば小難しくなってしまうからな、簡単に言えば敵の場所把握してクソ速く切っているだ


873:転生者

へ?そんな真似であんな速さが?


874:転生者

できなくはないな…イッチの特典には眷属や隷属対象の力も行使可能と聞く

アスプロスの眷属化から今まで、身体能力強化のモンスターを重点的に狩ってきたイッチだからこそ出来るんじゃないか


875:奇跡の天童

あぁ、そうだな……


876:轟音天神龍

強いのは間違いないが…その技は体力を大きく削るものなんじゃないか、イッチ

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