異世界古民家ひとり暮らし生活
@SadukiAme
第1話:潮干狩りの春、薄紅の花
覗き込んだ水瓶の底から、黄色い魚がゆらりと浮かび上がってくる。
小ぶりな体のくせして、『毒があります!』と全身で主張するかのような派手な色味。
「やあ、今朝も元気だな」
声を掛けて、古くなったパンのカケラをひとつまみ。
大きな口が開いてパンが吸い込まれていくのを見ていると、入り口側に影が差した。
「おはようございます!」
小柄な少女が片手に籠を下げ、もう片方の手をひらひら振っている。
「おはよう、ジアちゃんは今日も元気だね」
きらきらと輝く髪は青い。
数日おきに訪ねてくれる彼女を見るたびに、俺は別に田舎に遊びに来ているわけじゃないんだと自覚する。
「ナガレさんは他の来訪者さんよりも大人しいですよね」
そう、ここが異世界で、俺が異邦人であること。
しかもどうやら、異世界から来る他の人々と比較してさえ、俺は異端であるらしい。
「派手に冒険できるような若者じゃなくなっちゃったからかなあ」
「何言ってるんですか、お父さんより若いくせに」
「それはそうなんだけどね」
俺は30過ぎで、異世界に来たことを無邪気にはしゃげるほど若くもなく、逆にこちらの世界の人々に語れる何かを持つほどの人生経験を積んでもいない。自分でも半端だなと思う。
「皆さん、村をすぐに出ていかれますよ。大きな町で商売を始めたり、王様から依頼されて冒険に行ったり」
「うーん、そういうのって格好いいけども」
性に合わないんだよね、と告げて、ぱしゃんと跳ねた魚に目線を戻す。水面にぽっと浮かんでくる魚たちの泡を眺めながら、動きに異常がないことに安心した。
「地味な生活の方が肌に合うのかなあ」
「ほーんと、よくこんな商売で生活できますよね! 村のみんなもビックリしてます」
「俺もそう思うよ」
俺は現在のところ、異世界で魚を売って生活している。
食べるほうの魚じゃない。観賞魚だ。
「売れるとは思わなかったんだけどなあ。行商人さんの腕に感謝してるよ」
「もう! パンここに置きますよ!」
「ありがとう、ジアちゃん。ちょっと待っていてね、お金を持ってくるから」
小さくて古い家の壁は、土を固めて作られている。その壁にはいくつかの窪みがあって、小物を乗せるのに最適だ。ひんやりとした肌触りの素焼きの壺から数枚の硬貨を取り出し、俺はパンの代金を支払う。
「はい、確かに。まあ私は、ちゃんとお代を貰えれば、出所は気にしませんけれど」
「さすが、しっかりしてるよ」
俺の苦笑に取り合うことなく、ジアはそういえば、と人差し指を唇に当てた。
「ナガレさんよりも前に村に来られて、王様に会うって旅立って行かれた異世界の方も、冒険者を目指したらしいんです。しばらく行方を町の人から教えてもらっていたんですけれど、半年くらいでどこに行かれたのか分からなくなっちゃいました」
「どこへ行く、って村に伝言を頼んだとしても、遠くなるとなかなか届かないだろうね」
パソコンでメール、どころか、郵便局もないこの世界では、人間の足取りをたどるには伝聞しかない。
「王都から離れた村ですから、情報が来ないのは仕方がないんですけど、ちょっぴり心配です」
「行く道にパンくずを撒いてくれるわけでもないしね」
「え?」
「ごめんごめん、俺の元居た世界の話。道に迷わないように、パンくずを撒くお話があるんだ」
「うーん。パンだと動物に食べられちゃいませんか」
少女の、曇りかけていた表情が明るさを取り戻す。
「そうだね、美味しいからね。鳥に食べられないように白い石を撒く話もあったかな。そうすれば後から、どの道を通ったか分かるだろう?」
「道しるべの魔法はあるらしいですけれど、冒険しながら自分が通った道を残すのは危険なんじゃないですか」
「それもそうか」
二人で笑って、それからジアは手にした籠をぎゅっと抱える。
「あーあ。今頃どうしているのかなあ」
「もっと遠くで冒険しているんじゃないかな。いずれこの村にも寄ってくれるかもしれないよ?」
最初の町に戻るっていうのは、ゲームなんかでもよくある行動だ。
現実で戻る理由をあまり思いつけないけれど、俺はそんな風に優しい少女を慰めた。
「そうですね。そうだと良いです」
考えを振り払うように前髪をかきあげて、少女が微笑む。
「昔から、この村には異世界人が来たことがあるんですけど……、住みついちゃう人ってご年配の方も聞いたことがないって、話題になっています。私もビックリしましたし。村長さんも、空き家がダメになっちゃう前じゃなくて良かった、って仰っていましたよ」
「俺も家が貰えるなんて思わなかったから、感謝しているよ」
本当に、前の住人が町へ出て行ってから無人だったという古屋を譲ってもらえたのは幸運だった。
村に宿屋はあるけれど、1階は酒場となっていて夕方から騒々しいし、隣の部屋で過ごす人間が定期的に入れ替わる場所というのは、俺の性格では落ち着けないだろう。
一方この家は、村の中心地からは適度な距離があって環境が静かだ。玄関に繋がる土間が一つと、奥に寝る部屋が一つあるだけの簡素な家だけれど、それでも立派な一軒家。
奥の部屋は小上がりの板間になっていて、ベッドもある。もっとも夜はランプを点けなければ真っ暗だし、ベッドは木枠の中に藁のような植物を詰めてシーツを被せた程度のものだけれども、少なくとも雨をしのげて柔らかい場所で眠ることができる。
住み始めるときの掃除も埃を払う程度で済んだし、土壁にヒビ一つないのだから、よく手入れされていたのだろう。
正直言って、俺が東京で住んでいた部屋よりも広い。
どうせ使っていないのだから家賃は払わなくて良い、と言われたときには喝采を叫びそうになったほどだ。なにしろ俺はワンルームに、毎月給料の四分の一近くを支払っていたのだから。
「あ、そうだ」
ジアが音を立てて両手を合わせると、肘に掛けた籠が揺れる。
「お父さんが、きっと今日辺りは貝がたくさん取れるぞって言っていました。ですから、午後は皆で浜辺に行くんです。畑仕事を切り上げて参加する人もいるし、ナガレさんもどうですか?」
「貝か。教えてくれてありがとう、参加させてもらうよ」
他の人々と同じように行動するのは、大切な交流の作法だ。村の人たちが食べている食材を採ることを許されるのなら、ぜひ欲しい。異世界から来たくせに、特殊能力のひとつも持っていない俺にとって、食材の調達は日々の生活に欠かせないから。
「縄網、ありますか?」
「家に置いてあったものがあるよ。それに最近、自分でも籠を編めるようになったんだ」
漁師たちが捕った貝を、船から家まで細い縄を編んだ袋に放り込んで持ち歩いているのを見たことがある。彼等はそれを家の壺に放り込み、海水を注いで数日に分けて食べているようだった。
縄は漁の道具としても、家の中の細々としたものを引っ掛けるのにもよく使われている。女性だけではなく、男性も枯草を用いて縄を編み、漁具を修理していた。
だからなのだろう、自分の家にも、初めからぐるりと撒かれた網があった。
それにしても、森の中に落ちている木の枝を拾ってきて乾燥させ、編んで籠にするだなんて、東京に住んでいたときには思いもよらなかった。
なにしろ荷物を運ぶ野菜を運ぶのにも、魚を買って持ち運ぶのにも袋がいるけれど、ビニール袋なんてないのだから困ってしまって、村の人々に相談したのだ。そうして見よう見まねで習い始めた籠編みも、それなりに形にできるようになった。別に売り物でもないし、物が入れられればいいんじゃないか、と自分を納得させながらではあるけれど。
「それじゃあ、後でお会いするかもしれませんね。また午後に」
「ああ、俺も魚たちの世話をして、家の周りの落ち葉を片付けたら行くことにするよ」
「はあい。それじゃ」
くるりとスカートの裾を翻して、少女が去っていく。
初めて俺がこの世界に来た時も、彼女は海辺で貝を採っていた。
休日にふらっと訪れた海辺で、どうして洞窟に入ろうと思ったのか、もう覚えていない。
ただ少し生活に疲れていて、入れそうな洞窟を見かけて、子供の頃の冒険心が蘇ったのかもしれない。それでも奥まで進む勇気はなく、暗くなったら出ようと思っていたんだ。実際、進んだ時間は数分も経っていなかったと思う。
ごつごつした岩場をゆっくりと足元を確かめながら進んでいる間、なぜか仄かに明るかった。
そうして角を曲がったら光が見えたから、なんだ、洞窟は別のところに抜けているんだな、と思って、外に出たらそこは異世界だった。
いや、異世界だってすぐに分かったわけじゃない。
「異世界から来られたんですか」
髪の青い少女に日本語でそう話し掛けられて、面食らったことを覚えている。
冗談かと思って振り返ったら、洞窟の奥が行き止まりになっていた。
あまりのことに言葉も出ない俺に、彼女は近付いてきて笑いかけた。
「この村には時々、異世界から迷い込む人が来るんです。神様から使命を授かったとか、どうしても叶えたい夢があるとか、そう仰る方もいるらしいですけど」
あなたは、と首を傾げながら見つめられて気恥ずかしかった。
「いや……俺は、別に、誰とも会わなかったし、大きな夢もないよ」
我ながらつまらない回答だと思った。けれど少女は俺の言葉を、批判も否定もしなかった。ただ淡々と、そうなんですか、と頷いてくれた。
「じゃあ迷子さんですね。どうぞ、村長のところまでご案内します」
そんな風に、限りなく地味に、俺の新しい生活は始まった。
(結局、異世界から来たからといって、変に期待されることもなかったし)
悪の魔王を倒せとか、危険なモンスターを退治しろとか命じられたなら、俺はプレッシャーで潰れていたかもしれない。
もっとも、ここから遠くに行くほど、危険な生き物がいることはいるらしい。
ジアが初めに教えてくれたように、神様からそういった使命を授かって平和のために戦いに行く異世界人もいるようだ。
もしかしたら彼らのお陰で、俺は村でのんびり生活できているのかも。
(っていうか、俺と同じ世界から来るとも限らないんだよな、この分だと……)
戦えない人間、戦ったこともない人間、そういった人間が紛れ込んでしまうこともあると、この世界の国々にも認識されているらしいのが救いだ。
異世界から来た人間がどうしても生活に困るようなら、国から貰える補助があるらしい、と教えてもらったものの、俺は特に自分を特別扱いして欲しいとも思えなかった。
ただ、暮らしていくのに必要な衣食住だけは気になったから尋ねたところ、今の家を世話して貰えた。しばらくは食料も分けてもらえるとのことだったが、申し訳なくて村人の仕事を手伝っているうち、漁網に見たこともない生き物が混じっていることに気付いた。
色鮮やかな、不思議な形。
子供の頃、父親が飼っていた熱帯魚を思い出す。
「これ、貰っても良いですか」
「良いけどよ、それ、毒あるぜ。素手で触るなよ」
「分かりました。飼ってみたいので、そこの壺も貰っていいですか」
革製の手袋でつまみあげられた魚を壺に入れ、海水を手ですくって持ち帰ろうとする俺に、周囲の村人たちは呆れ気味に声を掛けてくれた。
「異世界人って言うから、何かデカイことでも始めるのかと思ったら、魚飼うのかよ」
「薬にするとか魔法を掛けるとかじゃないのか」
神様とやらに魔法を授かった人間だとか、もとから知識の多い人間なら、そういったこともできたかもしれない。でも俺は、ごく普通のサラリーマンだし、何ができるでもない。
「変なことを始めた人間がいたんですか」
「おう、魔法で魚を薬にパパッと変えたりな」
「できそうにないですね……」
「ははは、落ち込むなよ! きっとアンタにはアンタのいいところがあるさ!」
ただ昔父親が飼っていた熱帯魚が懐かしかったのと、見たこともない生き物だったから、ちょっと飼ってみたいと思っただけだ。
持ち帰って、壺に入れて、試しにパンのカケラなんか与えてみて、それで生きられる魚もいれば、残念ながら翌朝にはぷかりと腹を見せて浮いてしまった魚もいた。
「あの、以前貰った魚以外にも、食べられない魚がいたら持ち帰りたいんですけど」
「いいぜ、どうせ海に放るしかないしな」
漁を邪魔しなければ、彼らは寛大だ。
(そりゃそうだよな)
ここでは生活が、生死に直結する。
働いていたとはいえ、都会のインフラに囲まれていた俺とはそもそも感覚が違う。
彼らにとって漁や作物は、まさにその日の糧だからだ。
魚が獲れなければ、畑が野生動物に荒らされれば、その夜食べるものがない。
金で交換しようにも物がないのだ。
潤沢な在庫を常に用意できる店舗は、かつての世界での交通網に支えらえたもの。王都から離れたこの世界の村には存在しないのだから。
「すみません、変なお願いをして」
「いいよ、兄さんよく手伝ってくれるしさ」
「そうそう。村からさっさと出ていく異世界人が多い中で、アンタ変わってるよ」
「そうですかね……」
邪魔をしないのならと、漁をしていない間は海に入ることを許され、やがて小舟を使わせて貰える日もあった。うまく操れなくて、足がつく範囲で船を引っ張っているだけになってしまうことも多かったけれど、たまには釣竿と柄杓のような道具を使って自分で魚を捕まえることもできるようになった。
やがて、俺が遠浅に生えている海草を拾い始めた頃には、漁の合間に呼んでもらえることも増えた。
「おーい、網に掛かったヤツをやるよ」
「釣れちまったマズい魚もどうだい」
「ありがとうございます!」
俺は彼らから貰った魚を大切に持ち帰り、俺なりに世話をした。
たまには、小さすぎて食べられないが、捕ってしまったから、と食用の魚を貰ったりもした。
そういう魚たちが、俺の小さな家の土間にはたくさんいる。
食べられない魚が圧倒的で、食べられる魚も、小さな壺では大きく育たない。
それでも、どの魚も、飼い始めるとなんとなく可愛く見えてきて困る。
「よし、これでエサやりと掃除は終わり……っと」
土間から立ち上がり、ジアが届けてくれたパンを一口かじる。半分ほど食べてから湯冷ましの水を飲むと、簡素な昼食は終わりだ。
瓶を一つずつ、外に出していく。こうやって日中は光に当ててやり、夕方には土間に戻すのだ。日差しが強い季節には短くする必要もあるだろうけれど、今は大丈夫。
「今日は天気も良いし、このまま出かけるか」
俺は枝で編んだ籠を腕に引っかけ、縄でくくった水瓶を背負って歩き出す。
道は緩やかな下り坂で村に続いている。ヒョォロロ、と、こっちの世界に来てから聞き慣れた、不思議な鳥の声がする。
「こんにちは」
「ああ、ナガレさん。こんにちは」
昼時、農作業はお休みだ。
あちらこちらの畑の脇で、人々が昼食をとっている。すっかり顔馴染となった村人たちと挨拶を交わしていると、そうだ、と年配の女性が手を叩く。
「ナガレさん、この間貰った魚、お隣の方も欲しいって言っていたのだけれど、まだあるかしら」
俺は彼女に渡した魚と、現在飼っている壺の中の魚たちを思い返す。
「同じのはいませんね。似たような色のでしたら持ってきましょうか」
「そうね、お願い。でも午後はみんな貝採りでしょう、明日でいいわ」
「了解しました」
観賞魚なんて売れないだろうと、俺も思っていた。
なにしろ村では半数が漁師で、俺が飼っている魚は網に掛かったものを貰って育てているだけなのだから。
しかし実際には、意外にも需要があった。
「魚はねぇ、食べるばかりだと思っていたけど、飼ってみると可愛いものね」
「本当ね」
女性たちの好意的な感想に、俺も嬉しくなる。
もとの世界でも、川の魚よりも海の魚の方が煌びやかなものが多かった。
父親が飼っていた熱帯魚の世話を手伝っていたころは海水を作るのが難しかったけれど、この村は海に近い。汲んでくればいいだけの話だった。
(ペットを可愛がる気持ちは世界共通か)
考えてみれば、猫も犬も古くから飼われていた動物。始まりはネズミ対策や狩りのためだったかもしれないけれど、きっと可愛がっていたはずだ。日本には金魚という前例もあるのだし。
「触らないように子供たちには言うのだけれど、ちょっかいを出しそうで、それが心配ね」
「あー……申し訳ありません」
「あら、ナガレさんが謝ることじゃないわ」
「そうよ。それに、いい勉強になるわ。漁でこの魚を見ても触るんじゃないわよって」
朗らかな言葉におじぎして、俺はさらに道を進む。
最初は無害な魚を選んで譲っていたのだが、村人たちが飼っているほかの動物にちょっかいをかけられて水から飛び出てしまったり、鳥に狙われて食べられてしまったり……無事に生き残ることができなかった。
そこで毒がありそうな、野生動物から見向きもされない魚ばかりを譲るようにしたところ、結果的に人間の目を楽しませる派手な魚として好まれるようになったわけだ。
何しろガラスの壺なんてないから、鉢に入れて眺めて楽しむことしかできない。
派手な色は、上から見るだけでも目立つ。きっとどこの世界でも、警戒色で身を守るのは同じなんだろう。
子供たちも楽しそうに、あちらこちらの家の魚を眺めて回るようになった。確かに、何にでも興味を持つ子供たち相手に、「触るな」なんて注意したって止められない。
多分何人かは棘に刺されたりするんだろう。
(強すぎる毒を持っている魚は避けなくちゃな……)
道々、それぞれの家の前に置かれた壺を覗いて回る。あまりに水が減っているものがあれば、後で海水を汲んできて足しておくのも俺のサービスだ。
なにしろ、これが広告でもある。
村人たちの多くが家の入口で魚を飼い始めた頃、村に干し魚や貝を買いつけにくる行商人が目をつけた。
山道を通っていくのに、馬車で壺を運ぶなんて大変だと思ったのだが、商人というのは売れると思えば多少の無茶をものともしない。彼らは古い酒樽を持ってきて俺からありったけの魚を買っていき、さらにはなんと、海水まで一緒に売ることにしたらしい。
「少なくとも、こっちに来れば無料で手に入るんでね」とは彼らの弁だが、いくらなんでも重くて効率が悪いのでは。そう聞いた俺に、商人は笑いながら教えてくれた。
「なに、見るだけで食えない魚なんて買うのは物好き、物好きとくれば金持ちと決まってます。海水もね、それなりの値段で買ってくれますし、なにしろ足すだけですからね。いや、小銭稼ぎにはいいんですよ、なにしろ盗もうったって重いだけだから、盗賊に狙われたりもしないしね。感謝してます」
販路もなく海水など盗んだって、確かに何の利益にもなりはしない。水はそのまま持って行っても腐る危険性があるが、海水は川の水と比べて、塩が含まれている分だけ腐りにくいのだろう。
ともあれ俺は行商人という販路と、安定した収入源を得たというわけだった。
(でも、毒に注意てねって、今度伝えなくちゃ)
行商人が飼っていく魚は、町で売られているはず。つまり漁師の子供たちよりも、もっと魚を知らない人間が買うのだ、売るときも重々注意してもらわないと。なにしろ病院がすぐ近くにあった世界とは違うのだから。
或いは、食べなければ害がない魚を探すべきか?
(また漁師さんに聞いてみよう)
考えながら歩いていると、村の中央広場に到達する。
「ナガレ、今日は東の方が貝が大きいらしいよ」
広場から声が飛んでくる。見れば、朝の漁を既に終えたらしい漁師たちが網具の修理をしていた。
「ありがとうございます。行ってみますね」
挨拶をしながら道を更に下っていく俺に、行き交う漁師が様々な情報をくれる。
「海は昨日から濁り気味だぜ。ナガレが魚を掬うのは難しいかもなあ」
「釣りもしばらくは止めておいたほうがいいかもな。狙うならもう少し後がいいぜ」
「分かりました」
海が濁る、か。きっとプランクトンとかの影響なのだろうけれども、詳しくは知らない。
(生き物はすごいなあ)
村のひとたちも、春になると海が濁り、のちに豊漁になることを知っているけれども、それが何故なのかまではきっと知らないだろう。
けれども生活力は圧倒的に、俺よりも村の漁師たちの方が上だ。
俺は彼らに助けてもらって生きている。
なにか、強い力とか、そういうカッコいいものが俺にもあれば、彼らに恩を返せるんだけれども。
「山道は気を付けなよ。春になって、いろんなヤツが動き出す」
「はい、ご忠告ありがとうございます」
戦闘ができない俺は、安全面に気を配ることを忘れない。
なにしろこの世界の野生動物は、あまり人を恐れないらしい。モンスターと呼ばれるくらいの大型動物もいるようだし、人と野生動物の力関係が元の世界とは違うのだろう。
もっとも大型のものは広い場所に住むらしく、俺は幸いにも見たことがないけれど。
「気を付けますね」
「なんかあったら大声出しなよ。村の誰かにゃ聞こえるだろうからな」
「はい」
会話しながら浜辺へ降り、俺は背負っていた水瓶を下した。
子供たちの声もそこかしこから聞こえている。
貝を採るのには静かにしなくてもいいから、大人も注意しないのだろう。にぎやかで良いことだ。
「さて、夕食のために頑張るか」
*
「このくらいでいいかな」
水瓶にざらりと貝を入れる。せいぜい今日と明日の食事用だから、採りすぎても仕方がない。
潮干狩りと似たようなものだが、熊手はない。仕方なく枝を使って採っていたが、意外と自分の分くらいなら採れるものだ。
小さな貝は逃がしたが、数個だけは瓶に放り込んだ。もしかしたら育てている魚のどれかが食べるかもしれないからだ。
冷蔵庫があればなぁ、と思わなくもないが、意外と飢えることなく生活できている。
「ナガレ」
「なんだい……何かあったのか?」
振り向いた先にいたのは確か、アルノーという名前で、村の自警団長を請け負っている青年だ。
どこか焦ったような表情に、俺にも緊張が走る。
彼も自警団の仕事がないときは漁師で、いつもなら漁に出ているはず……と考えを巡らせたところで、そういえば他の漁師たちも広場で漁の道具を修理していたな、と思い出す。
漁は早朝に行うことが多い、彼も戻ってきて、浜の子供たちを見守っていたのだろう。
「ジアが何処へ行ったか知らないか?」
「え?」
そういえば、午後からは貝拾いに来ると言っていた少女の姿を見ていない。声くらいかけてくれてもおかしくはないはずなのに。
「浜についてすぐに、いなくなっちまったみたいなんだ」
目線が忙しなく周囲を探っている。
「忘れ物でもして、家に取りに戻ったんじゃないか?」
「いや、酒屋のマリと一緒に来たらしい。友人に声を掛けずにいきなり帰ったりはしないだろう?」
「そうだな」
後で浜で、と言って手を振ったジアの顔が浮かぶ。
「浜に野生動物が出てきちまったのかもしれない」
「叫び声とかは、聞こえなかったけれど」
「そう、騒ぎにはなっていないんだが……」
アルノーは腰に下げた剣の柄を撫でた。
「危険な生き物を見たら木に登って隠れろって、子供たちには教えてる。ジアも逃げようとして木に登ったかもしれない。ビビると声が出なくなることもあるだろう」
咄嗟に声が出ない感覚は、俺にも分かる。
砂浜に、あまり背の高い木はない。木に登ろうとすれば森に入るしかないが……他の村人たちが誰も見ていない、というのも気になる。
何かがおかしい。
アルノーの不安が、俺にも分かってきた。
「モンスターが村の側に出るって話は聞いてないが……町の方じゃ、春になると見たことのないヤツが来ることもあるらしい。冬の間に食えなかったヤツや、子連れの動物は気が荒い。手分けして探そう」
「分かった」
頷いて、俺は水瓶を浜に押し当てて底の部分を砂に埋める。とりあえず倒れなければいいだろう。
「俺はそこらの子供に、他の自警団の連中を呼んでくるよう伝えてから探す。お前は道沿いから探してくれ」
「ああ」
「だが無理はするなよ!」
「分かった!」
返事をして森に向かいはしたものの、若干心細い。野生動物と対峙したことなんてないし、更にはモンスターなんて生まれてこのかた見たこともない。
(何があったんだろう)
咄嗟に声が出せないほど驚いたとしても、友達と貝を探しに来たのなら、海辺からはそう離れていないはず。野生動物が出たとして、誰にも気付かれないままに、少女一人が消えることがあるだろうか?
見渡すと、ふと空を鳥が舞っているのが目に留まった。随分と位置が低いな、と思いながら見ていると、スイと木立の中に消える。
「ん?」
思わず声が出た。
あれは多分、浜でも良く見る海鳥だ。魚を捕るために海面に降りるならともかく、陸地に降りるのは珍しい。海にエサが無く、森で何か別の食べ物を探しているのだろうか。
(いや、おかしくないか?)
野生の生き物は普通、食べるものを大きく変えることはない。
ましてや魚や貝を食べている鳥が、森にある木の実などを食べるとは思えない。そもそもまだ春で、木の実は冬の間にすっかり食べつくされているはずだ。
しかも、俺たち人間に拾えるほどの貝が浜にあるのに。
(なんで森の中に降りて行ったんだ?)
見間違いではないと思うけれど、と考えている間にも、さきほどの海鳥が再び木々の上を舞う。いつの間にか数も増え、空には数羽が飛び交っている。
(あそこに何か、浜よりも簡単に手に入る食べ物があるのか?)
嫌な予感がする。
潮干狩り。
海鳥。
エサ。
魚。
貝。
―――自分が通った道を残すのは
(ジアちゃんが、持っていた貝を、撒いた?)
動物の気を逸らそうとして貝を撒いたんだろうか。それとも?
―――盗賊に狙われたりもしないしね
盗賊は、一見金にならなそうな、海水なんて狙わない。
じゃあ、若い女の子は?
「誰か来てくれ!」
反射的に叫ぶと、俺は木立に飛び込んでいた。
*
落ち葉の重なった柔らかい地面を蹴って、走る。
時折足の裏でぱきぱきと枝が折れる音がする。
息が上がる。
(こんな……ことなら……職場の先輩にジムに誘われたときに……付き合っていれば良かった……!)
思うように足が上がらず、鳥のいたと思わしき方角へ走っても走っても、追い付けた気がしない。
新緑が枝の間から芽を覗かせている。
ちらちらと視界の端で花も咲き始めている。
白。
黄色。
薄紅色。
(こんなにっ、景色は、綺麗……なのに……!)
俺はただひたすら必死に走っている。
異世界に来て、わけがわからないことだらけで、特別な力なんてなくて、そんな俺にも生きる手助けをしてくれた少女のために。
(息、苦し、……どのくらいぶりだろうな、全力疾走なんてッ)
海鳥が鳴いている。
空から舞い降りてくる。
あと少し、もう少し先だ。
(……見えた!)
大柄な男性が、青い髪の少女を担いで歩いている。
カッと頭の奥が熱くなった。
(このまま不意打ちできるか……?)
淡い期待は、男がくるりとこちらを振り返ったことで消える。そうだよな、足音がしているよな。静かに走るなんて器用な真似はできっこない。
「人攫いだ! 誰か来てくれ!」
せめてもと俺は叫んだ。自警団の誰かの耳に届きますように。
だって戦ったことなんてない。
ただ、みすみす逃がすわけにはいかない。絶対に!
「その子を放せ!」
俺は叫びながら走った。もう心臓が苦しくなるほどだったけれど、それでも。
怯みはしなくても、せめて彼女を下ろしてくれないだろうか。そうしたら、ジアは逃げられるんじゃないか。時間くらい稼げるんじゃないか。
ああ、どうしたらいい!
「止まれ、ナガレ!」
盗賊がまっすぐに俺を指して叫ぶ、その指先が光った。
ビックリしてよろけそうになって、どうにか踏み留まる。
(何してるんだ、俺!)
盗賊はすぐにくるりと向きを変えた。少女を抱えたまま走り出す。まるで、俺がもう追いかけてこないことを確信しているみたいに。
そうか、それがお前の力なのか。
この世界でも珍しい魔法の使い手、その力を、人を攫うことに使っているのか。
しかも俺の名前を知っているなんて、朝の会話を聞いていたのか。
ずっと、彼女をつけ狙っていたのか。
「残念だったな」
俺は走る。
音を聞きつけた盗賊が止まる。驚愕に見開いた目が俺を見る。
「俺の名前、本当はナガレじゃないんだ」
勢いよく飛びついて、一緒に地面に転がった。さすがに人間二人の体重を支え切れるほどじゃぁなかったらしい男から、少女が放り出される。俺は夢中で起き上がり、再び「誰か来てくれ!」と叫びながら男に掴みかかった。
こんなガタイのいい男、1人で抑え続ける自信なんてない。
(ジアちゃんは)
見ると、離れようとして少女がもがいている。身体にぼんやりとした光が纏わりついていた。
(魔法?)
よく見れば口元にも光がある。
魔法で彼女を拘束したのか。声も出せずに攫われるなんて、さぞや怖かっただろう。
「くそ……!」
盗賊が立ち上がると同時に、視界の端で光が弾けて消えた。ジアが大きく息を吸い込んだことで、彼女に掛かっていた拘束魔法が解けたことに気付く。
魔法を解いたということは、ジアを攫うのを諦めて逃げるつもりなのか。そうはさせない。だって別の場所で、別の誰かを狙う可能性がある。
「貝、まだ持っている?」
俺の投げた言葉に、じゃらじゃらと音が返った。震える手で懸命に袋の口を開けようとしている少女から、奪うように袋ごと受け取る。
「ごめん、貰うよ」
俺の体力、頼むからあと少し頑張ってくれ。願いながら土を蹴る。袋に手を突っ込んで貝を掴むと、男に向かって投げ付けた。
「こんなもんで止まるかよ! ……うわッ!」
ばさばさと羽音を立てて舞い降りてきた海鳥たちが、あっという間に男の周囲を取り囲む。
「離れろ、この……!」
この世界の野生動物たちは人をそれほど恐れない。まして、春先は腹を空かせて気が荒い。海鳥たちは怯むことなく盗賊の男をつつき、貝を探しては翼を広げて纏わりついた。
「ここだ! 誰か来てくれ!」
「おい、いたぞ!」
張り上げ続けた俺の叫びに、やっとアルノーが追い付いてきてくれた。人間が増えたことで海鳥たちは不満げに鳴きながら飛び去って行く。
性懲りもなく逃げようとした盗賊に、自警団の面々が飛び掛かって抑えつけた。
「こいつ、俺たちの村で人攫いなんて……!」
「町の役人に報告だ!」
さすが漁師たちの腕力で抵抗を封じ、荒縄で縛り上げていく。
もう、彼らに任せてもいいだろう。
俺はとても立っていられず、地面に座り込んだ。
もう喋るのも辛い。喉の奥がヒリヒリする。
「ナガレさん……!」
目を涙で一杯にしたジアが、胸に飛び込んできた。
「っと……!」
とっさに抱き締めてから、震える肩をぽんぽんと叩いてやる。……泣いている少女を宥める手段なんて、知らない。
「ケガはない?」
どうにか捻りだした言葉はありきたりなものだったけれど、ジアは何度も頷いた。
「大丈夫、ありがとう、あの人、私を売るって、怖くて」
「無事で良かった」
心から思う。
「君を助けられて嬉しいよ」
異世界から来て、特別な力も何も使えない俺を受け入れてくれた村。
仕事の手伝いも上手くできないのに、魚を育てるなんてことに熱意を注ぐ俺を、呆れながらも受け入れてくれた村。
そんな村で暮らす少女を、救い出す手伝いができたことが誇らしい。
しゃくりあげる彼女を支えながら、こんなに必死になったのはいつぶりだろう、と思う。
仕事だって友達との付き合いだって、別に適当に過ごしていたわけでもないのだけれど。
ただ、異世界に来てしまったことを理解したあの日、怖いとか寂しいとか、そう感じることができなかった俺は、どこか現実から浮いてしまっていたのだろうか。
「助けてくれてありがとう……!」
「俺だけの力じゃないよ」
謙遜ではなく、そう思う。真っ先に気付いたのは自警団のアルノーだったし、今も俺はタックルしただけでほとんど役に立っていない。
「違うよ。だってナガレさん、咄嗟に魔法に掛かったふりをして助けてくれたでしょう」
ただ転びそうになっただけだよ、という正直な言葉を吞み込んでしまったのは、せめて尊敬のまなざしを向けてくれる少女にくらい、カッコつけたいと思ってしまったからだ。
*
「あれ、お出かけですか?」
翌日、身支度をしていた俺に、玄関から声が掛かった。
村では日中、扉に鍵など掛けない。
「うん。ジアちゃんこそ、今日はパンの日じゃないだろう?」
籠を見て首を傾げると、少女は頬を膨らませた。
「お礼を届けに来たんですよ」
「ありがとう。怖い思いをした翌日に来てくれなくってもいいのに」
「私もいるから大丈夫だよ」
ひょいとジアの後ろから顔を覗かせたのは、明るい赤の髪を二つに括った少女。貝を一緒にとっていたという、酒場のマリだ。友達思いの良い子だな。
「自警団の人たちも、見回りをするって言ってくれました。今回みたいなことはそうないと思うけれども、他に村のみんなも困ることがあるかもしれないからって」
「見回りしてくれたら、畑の柵の腐ってるところとか見つけて貰えるしね」
「なるほど」
少女からありがたく籠に入ったパンを受け取って、奥の部屋に移動させる。
魚を育てている俺の家の土間は、他の家よりも湿っぽいのだ。ひんやりとしていて今の時期はいいけれど、夏は食料の保存方法を考えなくては。
「さっきのお話ですけれど、どこへ行くんです?」
「あー……昨日、走っている途中で、花を見かけてね」
恐怖を思い出させることにならないといいんだけれど、と恐れながら口にしたけれど、少女は気にすることもなく「花?」と会話を続けた。
見る限りでは震えてもおらず、不自然なそぶりもない。彼女は思ったよりもずっと強いのかもしれない。
「桜っていう、俺の故郷の花に似ていたんだ」
「へえ」
「実は俺の名前、2つあってさ。片方が桜と似ているんだ」
実際には苗字と名前なのだが、村には苗字を持つものがいない。家名があるのかと問われるのも面倒なので、適当なことを教える。
日本での俺の苗字は、三倉。
みくら、と読むのだが、さくら、とも読めて、時にはさんくらさんですか、と聞かれたものだ。
そして名前も、本当は流司郎、という。
古風だなと先輩に笑われたことがある。
―――ミクラでリュウジロウか。三なのか二なのかハッキリしろよ。
―――俺のジロウはツカサであって、二じゃありませんよ、先輩。
そんな会話は、多分もう、この世界では通じない。
「ナガレさんもお花の名前なんですか?」
「いいや。そっちは川が流れるほう」
あの日、名前を聞かれて「ナガレ」と名乗ったのには、別に深い意味があったわけじゃない。
ただ何となく、少女たちの名前と響きが違いすぎたから、流司郎から取ってナガレと名乗っただけだ。
それが、役に立つなんて。
あの魔法。
おそらく名前を呼ぶことで相手を束縛する魔法。
拘束され、抵抗できなくなってしまったジア。
止まれ、と言われて、止まらなかった俺の身体。
俺はまだ、「ナガレ」を自分の名前だとは認識していないみたいだ。
元の世界に未練なんてないと思っていたのに、だからといってこの世界に馴染み切れたわけでもなさそうな自分。
流されるばかりの人生で、どういうわけか異世界にまで流れ着いてしまって、いまだ定まり切らない己の在り方。
「じゃあ、お花が流れるっていう意味になるんですね!」
「そんな可愛いモノではないけど……」
「珍しいお話を聞いちゃいました」
ナガレさん、あまり前の世界のお話をされませんから、嬉しいです。そう言ってくれる少女の笑顔が失われずに済んで、本当に良かった。
「お花を見に行くんだったら、自警団の人にも一緒に来てもらいましょ! 村からそんなに距離がなくっても、離れるときは声を掛けろって言われてるし」
「迷惑じゃないかな?」
マリの提案に俺は遠慮しようと思ったけれど、「私たちも一緒に行く」と言われて反論を引っ込める。
「そうだね、君たちも来てくれるのはありがたいけど、女の子2人もいると危ないからお願いしよう。自警団の誰かを呼んできて貰えるかな」
はーい、と声を揃えて、少女たちが駆け出していく。
私用で村の自警団についてきてもらうのは申し訳ないが、彼女たちは村の住民だし、俺からは後でパンをお裾分けすればいいだろう。
(今日くらい、いいよな)
綺麗な花を見たい、と、素直にそう思えた。
生活のためではなく、誰に強制されるでもなく、ただ、自分のために過ごす1日があったっていい。
(天気も良いしな)
この世界の住人として、これからも日々を生きていくのだから。
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