Episode.6 取扱説明書

---正直、手はずっと震えていた---



____ここはアニメの世界か??


 射撃訓練場に行き、Aエースから手渡されたものは本物の“銃”。もちろんヨウは初めて見るし、触る。


「君のクユスコがイメージしやすくするためには、本物を触るのが一番だからね。」

「______。」


そんな冷静な顔で言われても!? 

 どうやらここへ来たのは、この為らしい。Aは慣れた手つきでヘットフォンを付け、銃に弾を込める。そしてあなたにもヘットフォンを渡し、少し後ろで見ているように言った。まさか、、、、、。

Aが的に向かう。綺麗な姿勢で、躊躇なく引き金を引いた。


≪≪≪≪≪≫≫≫≫≫


_____初めて聞く銃の音は、“バン”ではなく“パン”でもなかった。ヘットフォン越しでもかなり大きな音が響いているのが分かる。Aが撃った弾は、的のほぼ中心にめり込んでいた。


「実物を見てイメージ沸いたかな。これが“拳銃”。まずは構造とか、手触りとかよく触れてみるといいよ。大丈夫、君のは弾が入ってないから。」


 Aは普段通りの冷静顔。この時ばかりはその冷静顔がイラついた。それと同時に、Aと自分が過ごしてきた世界の乖離を思い知らされた。


 その後、ヨウはAから拳銃についての詳しい説明を受け、言われた通り撫でまわした。最初に感じたのは、“冷たくて重い”という感想。

まさか俺ががこんな“モノ”を触る日が来るなんてな、、、、、。

 他にも様々な種類の装備についての説明を受けた。ナイフ・グレから無線機・手錠まで。どれも初めて見るし、本当に存在していたのかという驚きもあった。一通り説明が終わり、相談課へと戻ることになる。射撃訓練場を出て、一階への階段を上ると人通りのある廊下へ。いつも過ごしている光景にヨウはやっと現実味を感じた。


「ここはラキンの身分証があったらいつでも入れるから、暇があったら来るといいよ。あと、一階にはトレーニングルームもあるから適度に動けるように鍛えといてね。」

「、、、、、一応子供のころから運動神経は良かったから、多分ある程度は動ける方だと思う。」

「それはなにより。」


 ただ会社で働き始めてからはまともに体を動かしていないので、早く体力を取り戻したいところだ。射撃訓練場に関しても、実物を見た方がイメージしやすかったので機会があればまた来よう。


 そのまま来た道を戻りながらエレベーターへ向かう途中、ふいにAが立ち止まる。何事か、と聞こうとした時ヨウも気づいた。Aの目線の先にいる一人の男性隊員。その背後の“イフロ”に。


「まだ小さいね。けど祓っておくに越したことはない。ちょうどいい、見てて。構造が分かってればこういう応用も効く。」


 そう言うとAは手を拳銃の形にして構えた。そしてその人差し指にクユスコが集まっているのが分かる。

そのまま狙って、撃つ。

途端、目線の先にいた隊員のイフロはキラキラ光りなが弾けて消えた。


やはり、綺麗だ。


 そのままAは隊員のもとへ向かう。その隊員はまだ若く、見たとこヨウと同じように新人だろう。少し色白な肌が目についた。


「ねぇ、そこの君。」

「!? はいッ! 何でしょうか!?」

「もし困っていることや悩んでいることがあるなら8階の相談課へ来てね。力になるから。仕事、お疲れ様。」


 Aはそう言うとエレベーターへと向かう。彼は急に知らない人に労われて、その人は言いたいこと言って帰っていくというわけのわからない状況に困惑してるようだ。ヨウは隊員に同情しながら会釈してAに追いつく。


「彼、相談に来てくれるといいんだが、、、、。」




_____彼とはまた、話す機会があるだろう。

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