3話_関わってはいけない人
大きな日本家屋の屋敷。
屋敷から旬が制服姿で、出てくる。
「若!おはようございます!」
家の使用人が旬に、近所に響き渡るような大声で挨拶する。
旬は面倒くさそうに使用人に言った。
旬「おはようさん、朝から元気やなぁ。」
使用人「昨日から、お世話になってます!よろしくお願いします!」
旬はため息をつき言う。
旬「俺にまで挨拶は、ええよ。俺は組長の息子言うだけや。」
使用人「はい!わかりました!」
またも大声で返事をする使用人に旬は、またため息をついた。
旬「後、声のトーン下げてくれ、鼓膜が破れるから。じゃあな。」
使用人「はい!わかりました!若!いってらっしゃい!」
後ろからまた大声をかけられるが、無視して歩く。
旬「なんやね…朝から人の話を聞かんやつばっかりか?」
使用人は、家を出た旬が見えなくなるまで、頭を下げ続けていた。
旬の後を車が追いかけて走ってくる。
月光島に新しくできたピカピカの黒塗りの車だ。
後部座席は革張りとなっている高級車である。
乗っているのが人物だけか分からなかったものの旬の前に止まり助手席ドアが開いた。
旬「ええ言うたやろ、もう17になるんやぞ。」
運転席に座っていた、黒いスーツのオールバッグの男が旬を注意する。
運転手「あなたは、組長の息子さんなんですよ、立場をわきまえてください。」
旬は、嫌そうに言うが運転手に一蹴される。
運転席から降りてきて助手席のドアを開けた。
旬は、諦めたように助手席に座る。
助手席にも、後部座席と同じように革張りの高級シートだ。
旬「はーぁ、ウッザ」
旬の口癖に運転するオールバックの男運転手が嬉しそうに答えた。
男「悪態ついても、お見送りしますよ。卒業までは。」
旬「ほんま、嫌や……」
旬はぼそっと言い窓の外をボーッと眺めていた。
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人間の慣れる力とは、凄い物で、 記憶喪失で何も覚えていない空も蒼穹も2日経ったらもう慣れてしまった。
教室から校庭を眺めていると旬が車から降りて登校してくる。
空「あ、あの人……ここの生徒だったんだ……」
眼鏡をかけた茶髪の少年が旬を見て顔が青くなる。
「学校来んのかよ…。」
空「斑鳩どうしたの?」
眼鏡をかけた、茶髪の少年は、斑鳩と言うらしい。
斑鳩「そっか…お前…最近島に来たばっかだったもんな。あの人……大道寺組組長の息子なんだよ。」
斑鳩は、とても緊張しビビっている様子で窓の外をしげしげと眺めている。
空「そうなんだ。」
斑鳩「お前、関わったりするなよ?あの人あんま良い話聞かないしさぁ。」
空は、あまり納得しなかった。
空「でもさ、悪い人じゃないんじゃない?」
斑鳩「お前なぁ……ヤクザの息子なんだぜ?悪いも良いもあるかよ。」
空は、斑鳩の言い草が気に食わずムキになって言う。
空「でもさ!良い人かもしれないじゃん!」
斑鳩「お前なぁ……」
その時チャイムが鳴る。
教師が入ってきたので席に戻る2人。
空は、旬が悪い人には見えなかった。
それに、助けてもらった恩人だ。
だが、一度由美子さんとお礼に行こうとしたが、由美子さんが必要ないと言われてしまい、行けなかった。
その理由がわかり納得した反面、気まずくお礼も言えない状況は少し後味が悪かったと、思ったがその日は一日の授業に集中した。
放課後は直ぐに斑鳩と家に帰る。
斑鳩「22時まで塾だ、ダルいけどサボったら、親に怒られるしなぁー。」
空「そうだね……」
斑鳩は塾に行くらしい。
斑鳩「空、お前はいいよなぁー。勉強できてさぁー、この間のテストも学年トップだったし、俺なんて下から数えた方が早いんだぜ?塾行かなくていいってずるくない?」
空はそれを聞いて苦笑いした。
斑鳩は勉強ができる方ではないらしい。
道が二手に別れる所で、空は斑鳩に手を振って帰って行った。
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「おい!お前、空だな!」
空「そうですけど……。(なんか定番だな。)」
空に男が絡んできた。
「お前結構強いんだってな?」
空の容姿は、金髪で目立つ事もあって、学校に入ってからは不良達に絡まれる事は日常茶飯事だった。
最近、不良達に絡まれる事がなかったから油断していた。
「面貸せ!」
空は、男達に河川敷まで連れていかれた。
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30分後。
空「はーぁ、疲れたー」
空は不良達を倒した後だった。
息を切らしながら、不良の1人の身体の上に座る。
空「痛っ!」
空の鼻からは、血がぽたっと垂れていた。
血が制服に垂れないように鼻を抑える。
しかし、制服に垂れてしまった。
空(あー……やっちゃった、由美子さんなんて言えば…心配されちゃうよなぁーどうしよ…)
そんな事を考えていると、迎えが嫌で歩いて帰る旬が乗通りかかる。
旬は、不良の身体の上に乗っている、空を見つける。
空が鼻血を抑えているのを見て、声をかける。
旬「おーい!大丈夫かー!」
空は、旬の声に気づく。
空「あ、大道寺さん!大丈夫です!」
旬は、空に近寄る。
旬は、180cmの長身で、ガタイも良い。
辺りには、7人ぐらいの不良達が倒れていた。
旬「お前、これ1人でやったんか?」
空「…あ…はは、はい」
旬は空の顔を見て少し驚いたが、すぐに笑った。
旬「お前強いんやな!でも……鼻血出てるぞ?」
空「え?あ……」
空は、慌てて手で鼻を抑えたが遅かったようだ。
鼻からポタリと血が滴り落ちた。
空「一発喰らっちゃいまして……」
旬「災難やったなぁー、でも鼻血だけで良かったな。」
空「はい……。」
旬は、鼻血を出している空が心配になったが、白い肌に赤い血が滴り落ちていて妙に色っぽい。
旬は、突然空の鼻血を手で触り、自らの口に持っていき赤い血をペロリと舐め上げた。
それだけで空の身体はびくりと震える。
空「え?(何?何したの?この人…俺の鼻血舐めてる?)」
空が旬のきこうにかキョトンとしている。
旬「あ、すまん。なんや、お前がえらい、色っぽいから舐めてもたわ。」
旬は、自分の行動に少し驚いたが、悪びれる様子もなく言った。
空「え?」(色っぽい?俺が?この人……頭おかしいのか?)
そんな空の思いをよそに旬は言った。
旬「あ!帰らな!気ー付けて帰りや
!」
旬はそそくさとその場を後にし走り去って行った。
1人残された空はしばらく呆然とした。
その後、何故か猛烈な鳥肌と寒気がする。
空「キモ……キモい!あの人、何?……頭がおかしいの?」
空は、旬の行動にドン引きした。
空は、一刻も早く家に帰りたいと思い早歩きで足早に帰った。
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旬も同じで、走っていた。
旬(何してんだ俺!キモすぎやろ!俺ぇーー!!!)
旬も人並には恋をしたことがある。
だげど、無意識に顔に血が付いていた事もあり指を鼻元に持っていきそれを舐めてしまったのだから、思考回路が壊れているのが自分で自覚できた。
旬(絶対、変態だと思われたわ!最悪だ!)
旬は、自分の行いを心底反省した。
家に戻ると、朝に家に居た新人の男と他の男性が居たが、目に止まらぬ速さで自分の部屋に戻り、襖を素早く閉めた。
旬(最低や……俺、ダサすぎやろ……)
そう思って手を顔に当て、腰が抜けたように壁に寄り掛かり呆然とし落ち込んでいた。
顔が熱くて赤くて堪らなかった。
しかし、空の顔がフラッシュバックで更に顔を真っ赤にさせ、首を横に振る。
旬(なんやねん!マジで変態やんけ……色っぽかったからって……あかんやろ!相手男やん!普通ないわぁー、あぁぁぁぁぁぁ !!!クソォ……どないしよ。)
旬の思考回路は、いよいよ壊れてしまったようだ。
旬は、1人部屋で悶え苦しんでいたのだった。
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空は、家に帰ると由美子さんが台所に居た。
空の制服の血を見た由美子。
由美子「空、その血どうしたの?」
空「え?あ……ちょっと……」
空は、不良達にやられたなんて言えず言葉を濁す。
由美子「大丈夫?」
空は、心配をかけまいと笑って言う。
空「大丈夫です!ちょっと転んじゃっただけですから!」
そんな空に由美子は呆れて言った。
由美子「……全く……気をつけなよ。」と由美子は、呆れながらも心配してくれた。
空「はい」
空は、笑って部屋に入った。
制服から私服に着替えて窓の外に目を向けるとさっき男達に絡まれていた道が見える。確かあそこで不良達に喧嘩を売られたんだ……と空は思った。
空は、不良達に喧嘩を売られた事なんてもうどうでも良かった。
それよりも旬の事が気になってしょうがなかったからだ。
さっきの出来事が衝撃的過ぎて頭から離れない……あの行動の意味がいくら考えても分からなかったからだ。
空(もう…関わらないようにしよう、さっきのあの人はなんかおかしいよ……)
空は、その日から旬に関わらないようにしようとした。
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