第46話

 躑躅森が白と黒のカードをよく混ぜてから、花屋とわたしに裏返しの状態で4枚ずつ配る。


 そして残りのカードは机のちょうど繋ぎ目に、山札として配置された。


「それでは両者、自分の手札を確認して、左から右に数字の小さい順に並べてくれ。ちなみに並び順を誤魔化す行為は、即反則負けとする」


「…………」


 わたしは花屋に見えないように、こっそり自分の手札を確認して並び替える。


《吉高》

 ③❹⑦⓫


 これがわたしが花屋から守り抜く数字だ。それと同時に、花屋の手札の数字を推理する材料でもある。カードの数字は白と黒で対になっていて、同じ色の同じ数字はどこにも存在しない。


 わたしは10秒間手札のカードをじっと見つめて、いちいち手札を確認しなくてもいいように、色と数字を頭の中にしっかり叩き込んだ。


 それから、対する花屋の机の上のカードに視線を向ける。


《花屋》

 ◯◯●●


 どうやらあちらも、白二枚、黒二枚の組み合わせのようだ。


「ところで吉高さん、先攻後攻はどうやって決めます?」


 花屋が天気の挨拶でもするようにそう言った。


「僕としてはどちらでも構いません。吉高さんのお好きな方を選んでください」


「…………」


 ……どうする? 先攻と後攻。どっちを選ぶのが正解なんだ?


 これまでのギャンブル対決でも、先攻後攻を選択する場面は何度かあった。


 たとえば化学部の加岳井かがくい犀子さいことの『積羽沈舟せきうちんしゅう』のときは、先攻の行動をそのまま真似できる後攻が有利だった。

 柔道部の卍山下まんじやました篤郎あつろうとの『グサッと一発』では、先に『急所』を刺した方が勝ちのルールだったので先攻が有利とされた。


 ――今回はどうだ?


 先に相手の数字を全て当てた方の勝ちなのだから、一見先攻の方が有利なように思える。だが、攻撃が失敗すれば相手に大ヒントを与えることになってしまう可能性がある。

 そして、そのヒントがわたしにとって致命傷になるかどうかは、山札から引いたカードの数字次第。つまり、運次第だ。


「……じゃあ、先攻で」


 考えに考え抜いた結果わたしが出した答えは、「わからない」だった。


 このゲームを実際にやったことがないわたしには、先攻と後攻どちらが有利かなんてわからない。けれど、そんなことでいちいち立ち止まっているわけにもいかない。


 わたしがこれからやろうとしていることは、ギャンブルだ。どの選択が正しいかだなんて、わからなくて当然。その上で自分の行動を選択しなければならない。


「では先攻・吉高、後攻・花屋でゲームスタートだ。吉高、山札から一枚カードを引いて、花屋の手札の中から一枚、狙うカードを指差して数字を宣言しろ」


 わたしは山札の一番上のカードを引く。引いたカードは❸だ。


「…………」


 現状、花屋の手札を予想しようにも、まだ手掛かりが少な過ぎる。


 こちらでわかっている白の数字は手札にある③⑦のみ。花屋の最小のカードは白なので、③よりも小さい数字、つまり⓪①②のどれかではないかと推測する。


《花屋》

 ◯◯●●

 ⬆

「⓪」


「正解ッ!!」


「……え?」


 何と初っ端から予想が的中し、花屋の手札が一枚晒される。


《花屋》

 ⓪〇●●


「吉高、そのまま続けて攻撃」


 いきなり数字を当てることに成功したのは思わぬ幸運だった。勢い付いたわたしは、今度はその隣のカードに狙いを定める。


《花屋》

 ⓪〇●●

  ⬆

「②」


「不正解ッ!!」


 今度は攻撃失敗。わたしの手札に❸が加えられる。


《吉高》

 ❸◯●◯●


 連続成功にはならなかったが、初めての攻撃で花屋の手札を一つ開けることができた。運も味方して、まずまず順調な滑り出しといえそうだった。


「……吉高さん、中々やりますねェ。これはこちらも気合を入れて臨まねばいけません」


 花屋は何が嬉しいのかクスクス笑っている。


「さァて、反撃開始と参りますか」

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