第28話 オズワルドの動向

 ルーン家と決裂したライガとアルスは今後の方針を決める必要が出て来た。


「どうするんです? 家と決裂した訳ですし今後の方針を決めないといけないのでは?」

「そうね。とはいえ私たちは魔人についてを知らない。けれど今の私たちでは魔人と戦うには力不足だと思うの。何せ大帝国のトップにも勝てないのが現状だからね」

「そうですね。腹立たしいですが」


 自分の弱さを再認識して腹が立つライガ。


「だから特訓場に行きましょう! フルール家の秘密の特訓場に」

「そんなのがあるのですか?」

「そうなのよ。そこにはオズワルドに存在した魔法について記されていてその扱い方が記されているの。そうして学んだ技術を試す広場もあるの」

「それは良いですね。ですが、今のオズワルドの状況で第二王女の貴女にそこの使用が認められますか?」

「多分大丈夫だと思う。お母様も今のオズワルドに求められるのは強者だと思っているはずだから」


 そうと決まればとアルスは母であるアリサにフルール家の特訓場の使用許可を得に行き予想通り了承を得る事に成功した。そしてオズワルドの最南端にあるフルール家の特訓場に2人は来ていた。特訓場は生活スペースと書斎のある一階とだだ広い訓練場のある地下一階の二階建てとなっている。そんな一階にある書斎にて2人は自分たちの使う雷魔法と重力魔法について記された書物を探していた。しかし、


「全然ない! どういうことなのよ! フルール家は魔法大国オズワルドの王族の1つ! それなのに雷と重力魔法だけないのはおかしいでしょ!」


 ないのだ。万に届くだろうという魔法の本があるにもかかわらず雷と重力の魔法がない。


「確かに雷と重力魔法は珍しいと言われてるとはいえおかしいですね」

「明らかに処分したわよね」

「魔人共の仕業ですかね?」

「でしょうね」

「どうします? わざわざオズワルドの最南端まで来たというのにこれだと意味がないのでは?」

「本当にね。でも重力魔法以外の書物はあるからそれをアレンジ出来るか試してみるわ」

「出来るのですか?」

「これでもフルール家でもトップクラスの魔法の才能があるもの。あんたで霞んでるけど私だって強いの! そんな私が最近は雑魚狩り専門みまいな戦闘しかしていない! 意地でも今回の特訓であんたを! 大帝国の連中を! お母様を超えてみせる!」


 アルスはフルール家の王族であり珍しい重力魔法を持つ優秀な魔法使いで国でもトップの実力を持っている。そんな彼女でも勝てない存在があまりにも多く活躍出来ていない。そのせいで姉であるアリスを失ってしまった。だからこそ強くならないとアルスは思っている。


「そうですね。俺もクルーズに負けっぱなしだから強くなりたいですね。そのために雷魔法の使い手たちが残した書物を読みたかったんですけどね。そうなると俺は大帝国に行きますかね」

「えっ! な、何で?」

「正直な話雷化という最強魔法が使える以上俺が伸ばすべきは素の身体能力を鍛える必要があると思うので大帝国に行こうと思ったんです」

「ん〜それはそうかもしれないけど潜入出来るの?」

「賭けですね。それでも行動しない事には話にならないんで行かせてください」

「分かったわ。だけど約束して頂戴。バレたら速攻で帰って来る事」

「了解」


 こうしてフルール家の2人は強くなるために行動を開始していた。そしてルーン家では、


「アルスくんたちはフルール家の特訓場にて強くなろうとしているようだ」

「そんな簡単に強くなれるなら苦労しないというのに」

「そうだね。だからと言って侮りは禁物だよ。あの2人の使用する魔法はオズワルドでも珍しい雷と重力魔法の使い手なのだからね」

「む〜、お父様は私が負けると思っているのですか?」

「ん? そう思っているように感じたのならごめんね。だが安心しなさい。アルフリートはまだまだ強くなれるのだからね。何せ我が家に伝わる秘奥義である炎化をアルフリートは習得していないのだからね」

「炎化ですか。確か報告ではアルスの専属騎士であるライガが雷化というものを使い一瞬とはいえ大帝国最強であるクルーズを瀕死まで追い込んだという最強の魔法ですね」

「そうだ。それをアルフリートには習得して貰う。最強魔法であるが故に難易度は高いが安心しなさい。歴代の炎魔法の使い手によって習得方法が簡略化されているから他の魔法よりは短時間で習得出来るだろう」

「はい! 頑張ります! そしてその魔法を持ってこの国に巣食う魔人共を片付けてルーン家の代表としてこの国の実権を手に入れてみせましょう」

「その粋だよ。期待しているよ。私の可愛いアルフリート」


 ルーン家も対魔人のために準備を整えていた。そうして準備を整えられている魔人たちはというと、


「どうやら我々の存在に気づいているようですよ。うちの娘とルーン家が」

「そのようですね。さっさと殺せば良いのでは?」


 アリサとソーン家の代表であるメルトが会話していた。


「問題ないです。我々魔人の存在に気づいて対策した所で無駄だという事を知らしめるために泳がせておきましょう。どんなに努力しても絶対的な力が存在していて敵わないという事を我々魔人が教えてあげましょう」


 そう言って怪しく笑うアリサであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る