第10話 王族会議
オズワルドに帰る途中の馬車の中にて、
「すいません。アルス様の初陣なのに何の成果も得られないなんて」
「気にする必要はないわよ。あたしも大した成果を挙げてないんだから」
互いに反省していた。そんな2人に今回の遠征の隊長のが励ます。
「初陣で死ぬ可能性は3割もある。そんな中、五天星が2人も出てきて生きて帰るといのは成果でしかないですよ。それに相手の兵隊を8割も削ったんですからね」
の言う通りライガとアルスによって南エリアの兵隊を8割を削る事に成功した。
「雑兵を減らしてもね。五天星を潰して領土を頂きたかったわ」
「そうですね。五天星筆頭が出てこなきゃ南の奴は殺せたのにな」
本気で悔しがるライガ。だがそれよりも悔しいのは、
(完全に運で生きているに過ぎない。天候が俺に有利だから向こうが撤退しただけだ。あのままの天候なら俺はクルーズに殺されていた)
本当なら殺されていた。それでも生きてるのは運でしかなく明らかに見逃されたのが理解しているから悔しいのだ。
(強くなる。強くなってあの野郎を確実にぶっ殺してやる)
リベンジに燃えるライガ。アルスはアルスで、
(魔法の使えない連中の集まりだと油断していた。大帝国は技術力と身体能力でオズワルドの侵攻を防いできた。認識を改めないと。あたしは弱い。オズワルドでトップクラスでも外では何の意味もない。外の連中にも通じる強さを手に入れないと)
強くなろうという気持ちを抱いていた。そんな2人がオズワルドに帰還すると、
「お帰りなさいませ。アルス様。お疲れのところ申し訳ありませんが王族会議が開かれます。大至急、宮廷へ」
「王族会議? 急過ぎるわ。一体何があったのよ」
案内人と共にアルスは王宮へと向かう。王宮にある大会議室にて王族会議は開かれる。大会議室にアルスが入ると既に女王アルマ、ルーン家代表、オッズとその娘アルフリート、ソーン家代表メルトとその長男ステイルと長女ステンノがいた。アルスが用意された席に座るのを確認してから、
「これより王族会議を始めます。今回急に開いたのは大帝国にて事件が起きたからです」
「ほう? 興味深いですね。どんな事件です?」
今回の会議が開かれる理由となった事件についてオッズが詳しく聞く。
「大帝国が誇る最高戦力五天星の1人が死亡しました」
「「「!?」」」
会議に集まっている者全員が驚く。長年争い続ける敵国の最高戦力の一角が崩れたのなら驚く。
「それは確実な情報なのですか?」
「えぇ、変身魔法を使えるスパイ、それから動物を使役出来る魔法使いたちで構成された諜報部隊からの報告なので間違いありません」
オズワルドは変身魔法を使えるスパイや犬、猫といった動物の視覚、聴覚を共有出来る魔法使いたちによって大帝国の情報を得ている。今回の五天星の1人が死んだという話も諜報部隊のおかげで入手出来た。
「そして、今回私の娘であるアルスとその専属騎士により五天星が瀕死の重症となり治療中との事です。今、大帝国は攻め時なのです」
「なるほど。そう言う事なら今回の急な会議も納得ですね」
「それで女王は大帝国に総攻撃を仕掛けると?」
「そう言ってるつもりでしたが理解出来ませんでしたか?」
「理解はしていますとも。ただ、大帝国は強大です。五天星が2人いないとはいえ簡単に勝てはしない。どのような戦略を考えているので?」
「戦略も何もいりません。オズワルドの全戦力を持って大帝国を潰します。目標は当然大帝の首です。そして大帝の首を取った者を次期女王に確定します」
「「「!!」」」
女王選抜戦が行われる事なく女王が確定してしまう可能性が出てざわつく。
「女王の座がかかった以上はやる気が出るでしょう? 王家以外の兵隊が大帝の首を取った場合は10世代まで一生遊んで暮らせるだけの富を与えましょうか」
女王は完全に勝ちに行くつもりのようだ。そんな女王にアルスが質問する。
「女王も出陣するのですか?」
「いいえ。私は出陣はしません。ここで大帝国の攻撃に
「1人でですか? 他には?」
「他はいりません。守りは私1人で充分です。それ以外の全戦力を持って大帝国を潰します」
守りは女王1人と言う攻めの姿勢。普通なら絶対に反対されるが誰も反対しない。20代から女王として君臨している絶対者に反対出来るはずがない。
「総員準備しなさい。明日日の出と共に出発です」
決行日が決まるのであった。大帝国との全面戦争の決定はライガにも騎士団長経由で伝わった。
(さぼりまくってる先輩達は戦えんのか?)
なんて思って先輩達を見ると何人かは絶望の表情を浮かべていた。それでもベテラン勢は修羅場を経験しているのか覚悟を決めていた。そこへアルスが現れると、
「今回は今までとは違う。大帝の首を取るか女王が死ぬまで続く。気合い入れなさい!」
発破をかけるのであった。そんなアルスはライガに気づくとちょいちょいと手招きする。
「どうしました?」
「ちょっと部屋に来なさい」
「? 分かりました」
他の騎士団員と行動を共にしなくてもいいのかと思ったが専属騎士だし扱いが違うのだろうと勝手に結論づけアルスについていく。そしてアルスの部屋にて、
「正直どう思う?」
「と言いますと?」
「大帝国に勝てると思う?」
「最高戦力が2人欠けているとはいえ簡単ではないと思います。五天星筆頭を殺せる人間がいれば簡単になりますけどね」
「お母様なら勝てると思う」
「その女王様は国の守りですよね。しかも1人。この戦争無理矢理過ぎません?」
「その通りだけどこの先これ以上のチャンスがあるか? って言われたら何も言えない。だから他2つの王家も口を出さなかった」
あまりにも無茶苦茶な戦争だがそれだけオズワルドにとってはチャンスなのだ。それを踏まえてライガは尋ねる。
「作戦とかあるんですか?」
「東エリアをあたし達フルール家が、南エリアをルーン家が攻める」
「五天星がいないエリアを攻めるのは理解出来ますが弱点をそのままにしますかね」
「そうね。他の五天星が穴を埋めるかもしれないわね。それでもどこかしらは穴が空くそこをソール家と潜入中の諜報部隊が攻める作戦になってるわ」
「俺たちは囮ですか。正直良い作戦だと思いますよ。クルーズどうする問題に目を瞑ればですけどね」
「やっぱりクルーズは別格?」
「ですね。もっと時間をかけて強くなれば勝てる自信はありますけどそういう訳にいかないですからね。他の家の代表ってどれくらい強いんですか?」
「王家だけあって全員が一騎当千の猛者よ。だけどクルーズに勝てるかまでは分からないわ」
「不安だけどやるしかないですね」
不安要素があるが明日の日の出には出発なので諦めてやるしかないと覚悟を決める2人の耳にノック音が入る。
「アルス? いるのかしら?」
「お姉様? いますよ、どうぞお入り下さい」
部屋の外にいるアリスを招き入れる。
「俺はこれで」
姉妹での話だろうと思い部屋を出ようとしたら、
「貴女もいて大丈夫よ」
「はぁ、分かりました」
部屋に留まる。
「今回の戦争は大変危険なもの。私は戦力外だからついていけない。だからライガさん。妹の事をお願いね」
「もちろんです。命にこの命に替えても守ります」
「アルス。無茶だけはダメよ。貴女は私の大切な妹なんだから」
「大丈夫ですよ。絶対に生きて帰って来ますから」
「絶対よ」
そうしてアリスはアルスたちと会話を終えて自分の部屋に帰ると通信機を取り出して、
「ごめんなさいね。お願いがあるの」
誰かにお願いをするのであった。そして明朝のオズワルドの北門には王家が保有する魔法騎士団総勢60人と一般魔法兵士10万人が揃っていた。そんな軍団に門の上から女王が、
「今回で大帝国を潰します!! 兵士たちよ!! オズワルドの力を世界に見せつけよ!!」
大帝国との戦争が始まる。
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