あなたと
じゅん
第1話
青い空に少しひんやりとした風。見慣れた校舎を彩る様に咲いた淡いピンク色の桜。決して綺麗とは言えない校舎でもこの時期は何だか鮮やかに感じる。
俺は高校二年生になった。去年の今頃は高校生になったことへの嬉しさや浮ついた感覚、それと慣れない新しい環境への不安を抱えていたっけな。今では友達もそこそこ増えたし、この学校での生活もすっかり馴染んでいる。自分で言うのはなんだが俺は顔もスタイルもかなり良いし、運動も得意だ。この高校に入ったのもバスケで推薦を貰ったから。ただ勉強は、、、まあ人並みにはギリできる。ほんとにギリギリだけど。中学に入ると一気に勉強は難しくなって、あまりにも理解出来ないから諦めた。それに毎日部活が忙しかったし。そんな俺らからしたら分からない授業は聞いてて段々眠くなるし、テスト期間の休みなんかには遊びたくなる。そういうもんだよね?と言っても遊びつつ俺は周りの誰よりもバスケの自主練をしていた。部活でも一日一日全力で練習していたし、何よりバスケが大好きで楽しかった。それで気づいたらバスケはトップレベルにうまくなったが勉強はバスケの大会でいうと地区予選1回戦敗退レベルになっていた。でも、一切後悔も負い目も感じていない。今のままで充実している。
歩いていると、俺を呼ぶ声が聞こえた。良く通る声で、聞き馴染みのある声。
「おーい!優ー!」
愛だ。愛とは小学校から高校までずっと一緒だ。幼馴染、なのか腐れ縁なのか。愛もバスケをやっていて男子並みにやかましい。背は女子の中でもかなり高い。顔は気に食わないが整っているし、目元に強さを感じる顔をしているからなんとなくきっとみんな一回会えば印象に残るだろう。ただ口は悪く、よく俺にスキンシップに見せかけた暴力をふるってくる。だから俺は愛を女子とは思っていない。
「うるせーなー。新年度早々話すのがお前かよ。」
「なにー?なんか言った?いやー良かったね。こんなに明るくいつも話しかけてくれる女子がいて。」
「うるせー。自分で言うことか?それに愛こそ良かったな。こんなうるせーやつ、普通の人ならみんなすぐ相手にしてくれなくなるのに、辛抱強く相手にしてくれる優しいイケメンがいて。」
「いやそんな事ないから。それに優、知らない女子とは全然喋れないじゃん。私がいなかったら優は女子とまともに話せないまんま大人になってたかもね。」
悔しいが一理ある。俺はこの恵まれた容姿のおかげで女子に絡まれる事はしょっちゅうある。ただそんなに関係値の無い女子とは何を話したらいいのか、相手を傷つけていないかなどが気になってうまく話せない。メールでは普通に会話できるけど。そのせいか、メールでやり取りしたことのある人は結構いるが、実際に学校で話したり、仲良くなった女子はそんなにいない。それに、学校で仲良くなった女子は、愛を経由して関係を得た子が多い。他にもあるが、実際愛のおかげによる部分が多い。まあ、本人にはお礼は言わないけど。
「もういいから、早く行こうぜ。クラス替え気になるし。」
「そーだね。また優と一緒だったらウケる。」
「いやさすがにないだろ。また一緒だったら、もう怖えーよ、さすがに。」
「確かに。私たち、小六からずっと一緒だもんね。」
そう、俺と愛は小六から高一まで同じクラスだ。こんな偶然あるのか?もはやなんかしらの見えない力が働いてるんじゃないかと疑うレベルだ。そんな話をしながら二年の下駄箱へ向かう。周りではすでにクラス発表を見たらしき人たちが騒いでいる。多くは同じクラスになった者同士で喜んだり、はしゃいでいる様子だった。まあうちの学校は治安はけっこう良いほうだから揉め事とかもそんなに無いし、大体の人がみんなとうまくやれているだろう。
「優!早く行こ!」
そう愛に急かされ、俺たちも新しいクラスの表を見る。これ地味に大変なんだよなあ。表に近いとこはすでに他の生徒で埋まっていて、離れたとこからだと見えにくいし、うちの学校は一学年八クラスあるから自分の名前を探すのもちょっとだるい。
一組から順に見て、結果、八組に俺の名前があったらそれだけで何だか疲れた感じがするだろう。だがまあ、基本一組と二組はほとんど可能性がない。このふたつのクラスは基本的に成績上位の人たちで埋まるらしい。まあ、言うなれば特別進学コースみたいな。学校は公には言ってないが見たら分かる。この学校の中でも特に治安が良い雰囲気だし、みんな真面目でおとなしそうな人が多い。もしそんなクラスに俺が行ったらきっと一年間ほぼ一人で地味におとなしく過ごすんだろうな。それはなんか嫌だ。
「優ー、自分のクラス見えた?」
「いや、まだ。愛はもう確認したの?」と言って愛を見るとなんだかにやにやしている。こいつはもう確認したんだろう、愛自身と、俺のクラスも。なんだか嫌な予感がする。
「私はもう見たよー!だから先に自分のクラス行ってるね!優も自分が何組かだけ見て教室行きなよー!じゃねー!」と言って愛は先に教室へ向かった。おい待て。こんな騒がしくて人が多いとこに俺を置いてくな。周りはみんな誰かといるんだぞ。でも愛にそんなこと言ったら絶対またからかわれる。仕方ない、ひとりで確認するか。だがこの位置からでは、なかなか見えない。無理やりにでも確認して、すぐ教室に行こう。俺は強引に前のほうへと進みだす。身長一八三センチ、バスケで培った身のこなしで前へ、前へと進んで行く。
結構まだ人いるな。思ったよりも前の方は人が密集していた。あと少し、と、そこで後ろ向きに倒れそうな女子がいた。
危ない!けど周りは気づいてない。俺はとっさにその子の両肩に手を伸ばし、俺の体をクッション代わりに受け止めた。軽っ。力んで引き寄せたせいで俺が後ろから抱きしめようとしてるみたいになってしまった。目の前にいる子のさらさらの髪が揺れる。シャンプーなのか石鹼系の爽やかで優しい香りがする。
まずい!こんな人が多くて誰が見てるか分かんない状況で浸っている場合じゃない!とにかく早く俺のクラスを確認して教室に行こう。
俺はその子の顔を見ないよう、そしてその子に見られないよう受け止めたその子の頭に優しく手を乗せ「大丈夫?気を付けてね。」と言いながら前へ逃げた。
よし、これできっと俺だと分からないだろう。それに変な勘違いや揉め事にもならないだろう。そして俺はようやく最前列に来た。
一、二組は無い。もしあったら俺のこの一年間憂鬱すぎる。三組から俺の名字の辺りだけを目を高速で動かしながら確認する。
あった!俺は五組だった。それだけを確認して俺は早足で教室へ向かった。なんとなく視線を感じたが、俺は振り返らずに早足でその場を去った。
二年五組。新しくまた一年が始まる。去年も何だかんだあっという間だったな、と思う。去年は同じクラスに知り合いが愛しかいなかった。まあ、この高校に俺らのいた中学から入学したのはそんなに人数いないしな。それに俺と愛以外はけっこう勉強できる部類の人がこの学校を選んでいる。俺と愛はスポーツ推薦で入学した。この高校は進学校として有名ではあるが、実際に勉強に力を入れているのは割合で見れば少ない。一学年八クラスに対して、本格的に勉強しているのは二クラス、授業に真面目に取り組みはするが、ほどほどに勉強しながら遊んだりバイトしたり部活に力を入れているのが二クラス。残り四クラスはほとんどがスポーツ推薦で入学した人達だ。勉強なんか二の次、何より部活、というやつらだ。その中に一部、恐らく希望の公立に受験で落ちて、滑り止めのこの高校に入学したであろう人がちらほらいる。明らかに温度差がある。陰キャとスポーツ推薦で入学した陽キャなのか馬鹿なのかってやつらが同じクラスだからクラスで周りを見ればだいたいどっち側か分かる。まあ幸い今のところいじめや問題ごとが起きたという話は無い。先生の指導がいいのか、たまたまそういうやつらが集まったのか。去年の最初は愛しか知り合いがいないんでどうしようかと思った。愛はもともとああいう性格だからか、入学してそんなに時間が経っていないのに女子だけでなく、男子とも普通に仲良くなっていた。恐らくスポーツに真面目に取り組んでいる者同士、気が合うんだろう。俺は基本、周りに初対面の人しかいない時は何もしない。人見知りだからだ。ふたりで話す隙があれば距離を縮められるよう試みるが、あいにく、去年のクラスはバスケ部俺一人、周りはみんなサッカーと野球部で俺だけアウェーだった。サシで誰かと話す機会なんかほぼなかった。それを気にしてくれたのか、愛はよく俺に話しかけてくれた。あんな性格だが、愛は良く周りを見てるし、気も使えて優しい一面もある。きっと気にかけてくれていたんだろう。おかげで俺は段々周りと打ち解けられたし、気づいたら俺はクラスの中心人物になった。女子の友達?知り合いも多くできた。
今年はどんなやつらがいるかな。不思議と不安は無い。人見知りではあるが、男子相手ならわりときっかけがあれば仲良くなれるし。俺は少しわくわくしながらドアを開けた。
ガラガラッ。
クラス中の視線が俺に集まる。知った顔が何人かいる中で、もう見飽きた顔のやつがいることにすぐ気づいた。
やっぱり。しかも俺の顔見て笑ってやがる。このアホが。
「愛、お前分かってたんなら言えよ。無駄に時間かかったじゃねーか。」
まったく、あの場で同じクラスだって愛が教えてくれたらゆっくり他に誰がいるかとか話せたじゃねーか。変な思いもせずに済んだし。
「えー?だってそれじゃつまんなくなーい?一年に一回のクラス替えなんだから、自分の目で確かめたほうが面白いじゃん!」と愛は笑いながら言う。
まあ、確かにそれはわかるが、朝あんだけ一緒に見てたんだからそれは教えてもいいだろ。俺ら一応幼馴染なんだし。愛には適当に言葉を返して周りを見る。男女比は六対四くらいで若干男のほうが多い。男は主にサッカー部がほとんどだ。まあそもそもサッカー部は人数多いし、しょうがないか。あとは珍しく野球部がひとり、ほかは文化部系や少数の運動部。またバスケ部俺一人かよ。にしてもサッカー部多くないか?俺は黒板に提示されている席順を見て自分の席に座る。廊下側二列目の後ろから二番目。悪くない。俺が席に着くと、愛と一緒に加奈が来た。
「優!一緒のクラスだね!席近いし!」
加奈が言う。加奈はバレーボール部だ。愛と仲が良く、俺もたまに加奈とは体育館などで話したりしているし、メールもよく来る。少し色素の薄いベージュ色のロングの髪で愛嬌があり、顔だちも可愛い系で男子からは結構人気だ。
「席、後ろに加奈がいてよかった。あんま知らない人多いし、助かるよ。よろしくね。」
俺は加奈に言う。と、愛が口をはさんでくる。
「なあに、優。ずいぶん加奈には優しいじゃん。」
うぜえ。おまえが特殊なだけだ。
「そりゃ加奈は愛と違って可愛いげのある女子だからな。お前みたいな男子もどきとはそりゃ対応も変わるよ。」
「はあ!?なにそれ?一応わたし、優以外には優しくしてもらえてるし、わりとモテてるんですけど?」
まじかよ。こいつを好きになる理由がわからん。いいところはもちろんあるけど、それよりも俺には、愛の、このやかましさが勝つ。恋愛感情なんか皆無だ。
「へー。物好きもいるもんだな。なら、本性ばれないうちに、早く彼氏でも作ったほうがいいんじゃねーの?」と俺が返すと、一瞬、愛の顔が曇った。なんだ?キレたか?沈黙が訪れ、気まずい空気になりかけたが、加奈が察したのか、明るく話し始める。
「でも、優も愛もモテるよね!結構いろんな人から噂とか聞くし、相談されたこともあるよ!」
助かる。明るい話題かつ、俺も愛にとっても嬉しい話だ。でも、そんなに愛はモテるのか?かなり疑問に思うがさすがにこの話題はしまっておこう。せっかく加奈が雰囲気を変えてくれたんだ。ここでまた雰囲気を壊したら恐らく、喧嘩になるか、傷つけることになるだろう。
「へー。まあたしかに優のそーゆー話しは昔から多いよね。私にはどこがいいのかわかんないけど。まあ顔とスタイルは良いし、運動もできるとこは認めるけど。優は馬鹿でやかましいことばっか言ってくるからなあ。きっとそーゆー女子たちも優と実際に話したら幻滅するよ。」
愛が笑いながら言ってくる。うるせえやかましいのはお前だ。俺はそれに対して答えてるだけだ。俺は言い返そうとしたが、加奈が何か思ったのか、少し真剣な顔で言う。
「でも、優は愛にだけそういう感じで、私とかにはいつも優しいよ!それに、髪切ったり、なんかいつもと違う機嫌のときとか、少しの変化でも優は気づいて声かけてくれるもんね!」
どうした加奈!急に俺を祭りのおみこしくらいわっしょい?よいしょしてきたぞ!急にそんなあからさまに褒められても反応に困る。愛はそれを聞いて、反論してくるかと思ったが、にやりと笑い、何か企んでいる顔をして言う。
「ふーん。加奈は優のことそういうふうに思ってたんだー。へー。」
おい、やめろ。俺が気まずいだろうが。加奈のほうに一瞬視線を向けると、明らかに困ったような顔をしている。ここは俺が出るべきか。
「加奈は優しいから、そーゆー人の良いところに沢山気付けるんだよ。それに、相手の良いところを素直に口に出して伝えられるのは俺はすごい、良いことだと思う。だから、加奈は色んな人に好かれるんだろうね。」
俺は思ったことを素直に言った。お世辞じゃない。加奈が言ったことはお世辞かどうかなんて分からない。でもきっとあの表情から見て、素直に、俺をかばうためにも伝えてくれたんだろう。だから、俺も素直に伝えるべきだと思った。加奈を見るとじわじわ顔が赤くなってきている。まずい。愛に見られたらまたいじられる。愛は俺が思っていた反応とは違い、どこか思うところがあったのか、真顔だった。何か言うべきか、と考えたが、チャイムが鳴った。朝礼の予礼。みんなこのチャイムで席に着く。愛は我に返ったように真顔からいつもの顔に戻り、「あ、席着かないと。とりあえず、今年もよろしくー!」と言って自分の席に向かって行った。俺も自分の席で前を向き、朝礼が始まるのを待った。
今日は半日で学校は終わった。自己紹介をして明日の予定を説明され、今日は下校となった。部活は休みだし、体育館は入学式の設営のため使えない。俺は何人か友達に遊びに誘われたが、断った。行くか迷ったが、俺はバスケの自主練をしたかったから。俺は一度自宅に帰り、バスケの練習着に着替えた。まだ午後二時。すぐバスケットゴールのある公園に行ってもいいが、先にランニングをすることにした。俺は長距離を走るのは好きじゃない。なぜなら、めんどくさいからだ。走るなら短距離で一気に全力で駆け抜けるほうが好きだし、得意だ。でもバスケの試合は十分を四回という仕組みになっている。それだけの時間、全力でプレーするにはどうしても体力が必要だ。しかもバスケは攻守が頻繁に入れ替わるし、走ったり飛んだりはもちろん、その中でさらに細かい動きが多くある。例えば、全力で走っているときに攻守が入れ替わり、急な方向転換があったり、全力でドリブルをしながら急停止し、ジャンプしてシュートなどバスケは短時間に動きが変わる。こういったスポーツなので、ランニングでスタミナをつけることが必要不可欠なのだ。
ランニングを始めて一時間、まあこんなもんだろう。俺は汗だくになった練習着を別の練習着に着替え、ボールを持って公園へ移動した。公園は幸いにも空いていた。普段は近くの中学生などが遊んでいたり、自主練したりしていることが結構ある。もしかしたら、中学生は今日、普通に部活なのかな?いいなあ。やっぱり体育館じゃないとやりづらいし、感覚も違う。足元は滑るし、ボールは汚れてハンドリングに支障がでる。でも誰よりも練習していたい。バスケだけは今俺の中で誰にも譲れないから。身長に恵まれたし、運動神経もかなり良いほうだ。バスケは中学から始めたが、地元では有名な選手になったし、選抜にも選ばれた。県代表にはなれなかったが、その手前の地区選抜には選ばれた。そのメンバーは俺以外、みんな小学校低学年からバスケをやっているやつしかいなかったが、俺はほかのやつらにも引けを取らなかった。でもさすがに県代表に選ばれたやつらはレベルが違った。体は強いし、身体能力も高い。それにやっぱり経験値が高いので、プレーの質も高いし、ミスが少ない。俺はそいつらを素直に尊敬した。きっと小さいころから必死に練習してきたんだろう。俺もバスケを始めた日から誰よりも練習してきた自身はあった。でも、届かなかった。あいつらに比べて、自分がどれだけぬるいか痛感した。家に帰って泣くほど悔しかったし、あんな思いはもうしたくないと思った。もっと意識もレベルも高く保たないと。あいつらには勝てない。この気持ちを忘れたくない。もし忘れてしまったとしたら、そのときはきっと俺はもうバスケを諦めたときだろう。
公園に来て二時間が経っていた。気づいたらいつも夢中で時間があっという間だ。冬を超え、春を迎えて明るいが、もう夕方だ。明日は部活ができる。今日はこれくらいにしとくか。あとは各エリアからシュートを決めて帰ろう。俺はフリースーロー、台形、とシュートを決めていく。そして台形の外側も終わり、次はスリーポイント。まあここの公園にはラインが無いから全部だいたいで、勘だけど。スリーポイントの内側のシュートは、ディフェンスがいなければ八割くらい入る。でもスリーはそう上手くはいかない。きっとかなり計算されているんだろうしらんけど明らかに成功率が下がる。本来のスリーポイントラインになぞって五か所決める。ゴールの真横、斜め四五度、正面で計五か所。四か所はそこそこの本数で決め終わった。あとはゴールの真横の左側。この角度はゴールのバックボードが見えないので恐らく一番難しい角度だ。宙に浮いているわっかにボールを入れる感じだ。くそ、もう三本外した。こんな成功率じゃだめだ。しかもバックボードが無いので、ボールはリングにバウンドし、俺がいるところの真逆に転がっていった。くそっ、めんどくせー。さすがに疲れた。俺は膝に手をつき、うなだれる。汗がぽたぽたと落ちる。息も上がっているし、体が重い。さっきよりも日が落ちて暗くなっているし、早く決めて帰ろう。俺は顔を上げ、ボールを取りに行く、行こうとしたが目の前に俺のボールを持って、こっちを見ている女の子がいた。
夕陽が落ちた、暗い公園を照らす明かり。公園を照らすには心もとないような明るさだが、その白く、やわらかい光が彼女と俺を照らす。肩までの長さの綺麗な黒髪のショートカットヘアー。白く透明感のある肌。これだけでも綺麗な子だ、と思うが加えてぱっちりとしていて、どこか儚さとやさしさを感じる綺麗で大きな目。今までにも誰かをかわいいと思ったことは無くはないが、レベルが違った。今目の前にいるその子は、まるで映画やアニメに出てくる美少女、と言えるくらい綺麗な子だ。俺は思わず、思考が止まった。今まで感じた事のない感情だ。言葉にしようにも言い表せない感情。ふと、我に返る。誰だ?会ったことも無ければ話したことも無い。でもその子は俺と同じ高校の制服を着ている。同い年でこんな子いたっけ?まあクラス多いし知らない人もまだいるか。それとも、先輩か後輩か?綺麗で整った顔立ちだがどこか、学生らしいあどけなさ?がある。いや待て。てかボール拾ってもらったんだから俺から何か言わないと。俺は止まりかけている脳みそを、頑張ってフル回転させた。
「ごめん、ボール、ありがとうございます。」
緊張と困惑、その子の歳もわからず、敬語とため口がごっちゃになってしまった。それになぜか相手の顔が見れない。気まずい。
「どういたしまして。」と、その子が言う。声も綺麗なのか、この子は。俺は頑張って前を向く。その子は両手に抱きかかえていたボールを俺に渡してくれた。くそ、そのしぐさまでも可愛くみえる。何か話すべきか、切り上げるべきか。俺が迷っていると、その子が口を開いた。
「今日、部活お休みなのに、練習してたの?」
よく知ってるな。ってことは同い年か、先輩かな。
「うん。練習しないと、負けたくないから。」
俺はとぎれとぎれに言葉を紡ぐ。くそっ。緊張する。この子は緊張、しないか。こんだけ綺麗な子だ。きっと男子にも女子にも、たくさん話しかけられるだろう。落ち着きあるし。
「えらいね。やっぱり。さすがだなあ。」
ふと、その言葉を聞いて俺は顔を上げる。
その子はとてもおだやかで、微笑んでいるような優しい顔をしている。てか、やっぱりってなんだ?どーゆー意味だ?
「同じ高校だよね。俺、二年なんだけど、そっちは?」
「私も二年だよ。同い年。」
よかった。とりあえず先輩じゃなくて。同い年で同じ学校でこんなかわいい子がいたのか。なんで今まで気付かなかったんだ。
「そっか。会ったことないから分かんなかった。はじめまして。」
なんか、よそよそしいし、合コン?ってやつみたいだ。言ったこっちが恥ずかしい。調子狂うな。その子は一瞬間を開けて、すぐにくすっと笑った。大きくて綺麗な目が、笑うとなくなって、なんとなく幼くて可愛らしい。
「初めまして、じゃないよ。わたしは知ってるよ。優くんのこと。」
そうなのか?会ったことあるなら、俺は絶対忘れないと思う、けど、俺はたぶんほんとにはじめましてだ。どこで、まあ、学校ですれ違ったりはしてるかもしれないか。なんか、嬉しい。
「そうだったんだ。なんかごめん。俺わかんなくて。」
その子はまだ笑ってる。おとなしくてクールな感じかと思ったけど、表情豊かだな。「ううん。優くんは有名人だから。知らない子のほうが少ないんじゃないかな?」
まあたしかに俺は学校でもトップクラスに見た目は良いし運動もできるけど、なんてこの子には言えない。愛には言えるけど。絶対キモがられる。こんなかわいい子に知り合って速攻キモがられたらたぶん学校に行けなくなる。俺が何か言おうと迷っていると、その子がぽつりとつぶやく。
「わたしは、有名になる前から、知ってたけどね。」
なんだ?急にぼそっと言うから聞こえない。
「なんか言った?ごめん、聞こえなくて。」
俺が聞き返すと、またその子が笑う。
「なんでもない!わたしは優くんのこと知ってる。だから、優くんはわたしのこと、探して、見つけてね。」
そういうと、その子は後ろを向いて走って行ってしまった。かわいい。最初から最後まで。俺はボケーっとしながら、その後ろ姿を見つめていた。あ、名前聞くの忘れた。
ピピピピッ!ピピピピッ!朝六時。アラームに起こされた俺はシャワーを浴びて支度する。今日が入学式のため、まだ朝練が無い。ほんとは朝ランニングか公園で自主練をするか迷ったが、朝から公園で練習するのは近所迷惑だし、ランニングもいいけど、せっかく今日は午後に体育館が使えるので休むことにした。睡眠時間が短いのも良くないと聞くしな。通学は自転車か電車。家から近いのもこの学校を選んだ要因で、そんなに遠くないので、歩いても行ける。今日は少し早く起きて時間もあるので歩いていくことにした。帰りは最悪電車で帰れるし。イヤホンを耳にして、家を出る。今日は雲ひとつない快晴。こんな天気がいいと気分も自然と上がる。俺は携帯で曲を選ぶ。何にするか迷った結果、GReeeeNのオレンジにした。本来、この曲はたぶん帰りに聴く曲だけど。曲を聴きながら昨日のことを思い出す。鮮明に覚えている。はあ、可愛かった。今までこんなに誰かを可愛いと思ったことは無い。好き、とかではまだ無いと思う。きっとあの子の人柄に惹かれたんだろう。今までの子たちとは違う。可愛らしい見た目だが落ち着きがあるが、どこか隙があるような。どっかの誰かさんみたいに騒いだり、何かと突っ込んでくるような粗雑な感じじゃない。おしとやかでなんだかこっちまで穏やかになれるような感じだった。同い年、だったな。全然会った記憶が無いけど。あの子は俺のことを知っていた。中学、小学校はもちろん違う。去年のクラスにもあんな子いなかった。と、なると、部活関連か去年の学校行事のどれかかな。考えるが、まあ行事が一番ありえそうだ。自分で言うのはなんだが、行事全部で目立ってたからなあ。
ひとりでいろいろ考えてるうちに学校に着いた。俺は教室に入り、まだ残っていた席順の表を見る。まあ見てもあの子の名前が分からないから探しようがない。こう見ると、男子は何人か知っているやつがいるが、女子は愛と加奈くらいだな。他は顔と名前は一致するが、特に接点がない子とまったく知らない子が結構いることに気づいた。そういや、昨日の自己紹介、まともに聞いてなかったしな。もしかしたら、このクラスにいるのか。あの子が。俺は自分の席に着いて、イヤホンで曲を聴きながら顔をふせた。今聴いているのはAAAの恋音と雨空。高校で彼女はまだ作ってないのに、恋愛の曲ばっかだな。ってか、もしあの子を見つけたら、なんて声を掛ければいいんだ?そういや、女子から声を掛けられることは日常茶飯事だが、用も無いのに話し掛けたことは無い気がする。まいったな。と思っていると、俺の肩が叩かれた感覚がした。ちっ。これは愛だな。俺が顔を上げるとやはり愛がいた。それと加奈も一緒にいる。一緒に来たのか。俺はイヤホンを外し、口を開く。
「おはよう。加奈。」
愛には触れない。めんどくさいから。加奈は満面の笑みで俺に言う
「おはよう優!学校来るの早いね!」
無邪気だ。加奈と話してると、なんかすごい俺に対して関心があるような感じがして、こっちからも話しやすい。本人の無自覚なんだろうが、きっとこれも加奈の良いところだ。聞き上手、みたいな。
「今日朝練無いからね。少し余裕持って起きて来たら、結構はやくついてさ。」
「そーなんだ!なんか新鮮!まあ優と初めて同じクラスになったからだけど!」
ほわほわしてんな。和むわー。と思っていたら、耳障りな声が俺の耳を突いた。
「なに、さっきからふたりでいい感じになってんの。私もいるんだけど。」
知るか。どうでもいい。それに昨日の今日で愛みたいなやかましいやつと話してると、あの子とのことが霞んじゃいそうだ。しゃべるなアホ。
「朝からやかましいな。少しは加奈のこと見習えよ。」
俺はそう言って、寝ようとする。が、愛がそうはさせてくれない。
「ふーん。昨日もそうだけど、随分加奈に優しいねえ。もしかして、できてんの?」
このアホが。すぐそうやって恋愛に結び付ける。付き合ってらんねえよ。それに、もし仮にそうだとしても、愛に関係ねえだろ。と思うが俺はそれは口に出さず、表情で伝える。愛も察したのか、何か言おうとしたが、加奈が誰かに向かって声を掛ける。「あ!夏!おはようー!」
加奈の友達か。聞いたことねーな。俺は再び寝る体制に入る。
「おはよう。」と加奈に返されたその声を聞いて、俺は気づく。
この声。あの子の?俺は顔を上げる。そこには昨日会ったあの子、なのか?黒縁のでかい眼鏡をしている女の子がいた。誰だ。でも、髪の毛とか雰囲気はあの子に似ている。でも、なんだその眼鏡。でかくねえか?似てるだけか?と俺がひとりで頭の中をぐるぐるさせていると、加奈が言う。
「あれ?またコンタクト忘れたの。眼鏡も良いけど、夏はそのままの方が絶対可愛いのに!」
夏はそれを聞いてあたふたしている。
「ちょっと朝準備に時間かかって、めんどくさいから眼鏡にしちゃった。」
そう話す声はやっぱり、昨日のあの子の声だ。眼鏡がでかすぎて、ぴんとこないけど。そこで愛が混ざってくる。
「夏ちゃん。ちょっと眼鏡外してみて!」といいながらすでに眼鏡を奪い取る愛。
ったく、こいつは。眼鏡を奪い取られた夏は、少し恥ずかしそうに下を向く。眼鏡の度がけっこう強いみたいで、さっきよりも明らかに目が大きく、綺麗で、その姿はやっぱり、間違いなく昨日のあの子だった。おんなじクラスだったのか。それに、あんな眼鏡を頻繁に掛けていたなら気付かないだろう。やっぱり、ずば抜けてかわいい。「え待って。夏ちゃん、めっちゃかわいい!」
愛も夏のことを知らなかったのか。まあ俺と愛は去年同じクラスで、夏は別のクラスだったからな。中学も違うし。
「そんなこと無いよ。でもありがとう。あと、眼鏡返して。」
夏は照れている。愛のキャラとは全く違うから、より夏のかわいさが引き立てられている。
「えーでも眼鏡してないほうがいいよ!ってかこの眼鏡、度強すぎない?」
愛が自分の顔にかざす。眼鏡の度のせいで愛の目が小さくなり、アンバランスでアホっぽくなる。俺は思わず噴き出した。
「愛、その眼鏡一生着けてろよ。笑えるから。」
加奈もそう思ったようで、手で顔を隠して声を殺しながら笑っている。相当面白いんだろう、肩から頭までピクピクしている。
「いや私目悪くないし。てかこんな度強かったらみんな変な顔になるだろ。」
「優が掛けてみたら?変装になるかもよ。」
愛に続いて加奈が俺に言う。
「加奈、変装ってなんだよ。俺べつにそんな有名人じゃないんだけど。」
「いやいや!優は有名人だよ!いっつも女の子に話し掛けられたり、目で追われてるじゃん!」
「いやいや、そんないっつもはないだろ。大げさだなあ。」
「いやいや!全然、大げさじゃないから!」
加奈と愛が同時に言う。いやいやいやいやって、何だこの会話。
「優は気づいてないけど、ほんとにすごいんだからね!今年は後輩も出来るんだし、もっとモテちゃうよ!?」
加奈からの圧がすごい。反応に困る。話題を逸らせるため、目だけで周囲を確認する。夏が眼鏡を取られてほったらかしになっていることに気づく。ボーっとしている。目が見えないからか?なんとなく、何考えてるかわかりずらいな。でもこれ以上ほったらかしは良くない。俺は愛から眼鏡を取る。たまたま持ってきていたティッシュを取り出し、眼鏡のレンズ以外を軽くふいて夏に眼鏡を返す。
「愛がごめん。無いと困るよね、これ。」
夏の顔を見て言う。だめだ、近くで、こんな明るいところで見ると眩しすぎる。顔が熱くなる。夏は下を向いて眼鏡を掛ける。眼鏡にかかる髪を手櫛で整え、顔を上げた。俺と夏の目が合う。その度の強い眼鏡越しでも、この距離で見るとやっぱり人よりきれいで、大きい目をしているのが分かる。愛の眼鏡姿はあんなに笑えたのに、夏の眼鏡姿は清楚でおしとやかな夏の魅力をさらに際立たせる。
「ありがとう。優くん。」
夏が言う。少し目じりが垂れて、微笑む。やっぱり、夏はほかの人には無い、独特の雰囲気がある。さっきまで愛と加奈が話の中心だったのに、今はまるで俺と夏の二人だけに感じる。
「おふたりさーん。なあに見つめあってんの。」
この穏やかな空気を愛が邪魔する。くそがっ。
「ってか、優と夏ちゃん今まで接点無いよね?夏ちゃん、そんなやつほっといて私と仲良くしてね!」
愛め。こいつは可愛い女子にすぐ絡みたがる。ずるいぞ。
「まー、うん、無くは無い、かな?こちらこそ、よろしくね愛。」と夏が愛に返す。なんだこの光景。なんかむかつく。愛に。
「え、まって?二人接点合ったの?」
愛の話が終わらない。もういいって。愛は興味ある人に絡むと長いんだよなー。
「うーん、まあね、ちょっとだけね。」
夏が照れ笑いしながら言う。そして俺を見る。
ちょっと!?こっち見られても困るよ!?それに、昨日公園で会っただけしか俺には接点がない。あわせて、愛と加奈が俺に視線を向ける。素直に言うべきか。でも絶対この二人、食いついてくるよなあ。俺はぐるぐると、頭の中で言い訳を考える。誤魔化す。
「そりゃあ、だいたいみんな接点あるだろ。おんなじ学校なんだから。」
だいぶむりやりになった。ほんとは初めて昨日知り合ったんだけどね。
「ふーん。でも夏はみんなと違って、優に群がる感じでもなさそうだしなー。」
愛が疑うような視線を向ける。しかもにやけている。まずい。だが夏がそれに答える。
「わたし、バレー部だから!だから体育館で見かけるし、バスケ部のコートにボール入ったときとかに、ね!」
え?夏バレー部だったの?なら体育館で気づきそうだけど、でも俺、部活中はそんなほかの部に興味無いしなあ。てか、バレー部なら、加奈と一緒じゃん。だから仲良さげなのか。
「そうそう!この間もボール取ってくれたよね!助かるよ。結構あれ気まずいからさ。」
俺はとりあえず話を合わせる。
「ふーん。」
愛は期待していた様な答えじゃ無かったのか、不満気だ。
そこでチャイムが鳴り、それぞれ席に着く。良かった。愛はああいう時、話止まらねーからなあ。俺が一息つくと、後ろの席の加奈が俺の背中をつつく。
「なに、加奈。」
加奈はなんだか心配そうな顔をして、言葉を探している様に見える。加奈は優しいから、誰かに何かを言うとき、相手が傷つか無い様言葉を選ぶ。何だ?
「何かあったの?」
「いや、そんな大したことじゃないんだけど。」
言いずらそうだな。
「加奈、俺は加奈のこと、結構仲良い友達だと思ってるし、信頼もしてる。だから、俺と話すときくらい気を使わないで加奈の話したい事話してよ。」
俺は仲の良い人達に気を使われるのが嫌いだ。言いたいことを変に気使って、本心を言い合えないような関係なら、そんな友達、俺はいらない。学校で上辺だけ取り繕って、相手のこと詳しく知らない、その人に何かあっても、まあ本人が良いなら別にどうでもいい、みたいなのは嫌だ。学校で明るく話したり、遊んだり、一緒に飯食ったりするのも大事だけど、俺は仲の良い人達には、何かあったとき、一緒に抱えたい。辛いことや嫌な事があったら、ひとりにしたくない。それでいつか卒業して、ふと、そういえば、こんな事あったなあ、あの時あいつがずっと一緒にいてくれたなあって思い出してもらえるような存在になりたい。ひとりで抱えて、これからも思い出すたびに、あの時誰も助けてくれなかったって思い出をみんなには作って欲しくない。「ありがとう、優。優って、たまにそういう恥ずかしいこと、面と向かって堂々と言ってくるよね。」
加奈は笑っていた。確かに、ここ教室だしちょっと恥ずかしくなってきた。
「うるせー。別にいいだろ。ほんとのことなんだから。」
俺は加奈の頭を軽く小突く。えへへ、と加奈は笑っている。
「やっぱなんでもない!気のせいだった!」
加奈はそう言って俺の体を押す。もういいから前向けってことか。まったく、よくわかんねーなあ。
入学式を終えた後は、教科書の確認や明日からの時間割などの話をホームルームでして、今日は昼に学校が終わった。俺ら体育館の部活組は入学式で使った椅子や備品の片づけ、軽い掃除をしてから部活になった。やっと体育館でバスケができる。まあ今日は俺ら前半だけど。うちの体育館はバスケのコートで言うと2面分しかない。その2面を男バス、女バス、女バレで日ごとに分けて使う。まるまる使えることをオール、あとは時間で交代するので前半、後半と呼んでいる。片付けが終わり、部活開始まで少し時間があるが、俺は誰よりも先にコートに降りる。もうすぐ学総、そのあとは俺らの代になる。楽しみだ。気合い入れていかねーと。軽く準備運動をして、シュート練をする。タッチは悪くない。良かった。隣は女バス。後半は俺らと入れ替わりで女バレらしい。各々部活まで着替えたり準備をしたり、休んでいる人もいる。ふと上を見ると、女バレが何人かいた。その中に加奈と夏とあとは知らない女子二人がいた。加奈と夏が俺を見ている。あれ、夏がさっきまでかけていたクソデカ眼鏡をしていない。コンタクト持ってきてたのか。ちゃんとしてんな。すると、加奈が俺に手を振ってくる。こういうことを何気なくしてくるところがかわいいと思う。俺は照れ臭いけど。俺は手を振り返す。それを見て、知らない女子二人はキャーキャー言っている。何だこれ。俺が恥ずかしいんだけど。何やらはしゃぎながら加奈とその二人は走って消えた。夏はそれにゆっくりついていく。途中、俺の方を向き、目が合う。遠くからでも、やっぱりかわいいのが分かる。手、振るべきか、でも、今二人だし、そもそも昨日今日ちょっと話しただけなんだよな。さすがにキモイか。と悩んでいたら、夏が先に俺に手を小さく振ってきた。夏らしい、控えめでおしとやかな感じだな。俺も小さく手を振り返す。夏はそれを見て、昨日みたいに大きくて綺麗な目を細くして微笑む。可愛すぎだろ。俺も思わず顔が緩む。夏は小走りでさっきの三人を追いかけていった。よし、俺も部活に集中だ。なんだか今日は調子が良い、そんな気がした。
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