文章の中の魅力《ミサノ》

安野葉月

第1話 自分の小説のファンは変態だった!

「はぁ……、中々感想が無いな〜。仕方ないか、つまらないんだから」


 俺は普通の高校生1年生である桜乃巧さくらのたくみだ。いや、あと1日で正式に高校2年生になるのか。


 感想というのは自分がネットに上げている小説の事で、もう書いて1年になるというのに中々感想が貰えずにいた……、いや嘘をついた。本当は貰っている。


 とんでもなく罵倒されたコメントを……。今思い出しても泣きたくなる、つまらないとかこれを面白いと思ってる感性に驚いたとか……結構ギリギリな事を書いてた気はする。


 まあ、そのコメントおかげで日々精進して書き続けているわけだが……感謝しているのか? 先輩達は卒業したが結果を出していたのを見ると悲しい。


 俺が入っている部活は漫画・小説部というかなり特殊な部活だ。他の高校には多分無いんじゃないかな?

活動としては基本的に書いたものをコンクールやネット小説として掲載する、またはコンテストに出す……。


 今の所俺はゼロだ。反応が、ね。


 ……今も自分の部屋のベットでこうやって愚痴を垂れているだけ。桜乃巧よ、もっと自分の為になることをしたらどうだい?


 そんなことは分かってるわ! ……虚しくなるだけだな……寝よう。


 そう思って俺はベットに横になり目を閉じた……その時スマホからピコンと通知音が鳴った。


「ん? こんな時間に誰だ?」


 通知には感想が1件届いていますというネット小説のアプリからの通知だった。


「マジか! うぉーッ! やったぜ! 遂に俺にも良い感想が? ……いや、待て待て。冷静になるんだ桜乃巧、そっと見るんだ、またショックを受けるかもしれない」


 俺はアプリを立ち上げ恐る恐るアプリに感想欄をタップする……そこには長文の感想が書かれていた。


「凄いコメント量だな、1000文字くらいあるんじゃないのか? 名前は……ラブリーエンジェル373。平成チックな名前だな……、正直好きだこういうのは」


 俺はそのコメントを少しずつスクロールしながら見ていく、感想の感想としては「凄いな」という感想しか出てこなかった。


「全話分の感想じゃないか! いったい何話あると思って……スッ……」


 感想を全て読もうとしたら少し血の気が引いたというかなんというか嬉しいけど怖さを感じたというか……結論嬉しいんだけれども……なんというか……。


「流石に1万文字のコメントは今日は全部読めません! 寝よう……」


 俺はベッドで横になり寝た。


 翌日、今日は始業式だ。午前中に始業式をやって午後から部活動……今日はアイツいるか?。


 アイツというのは同級生でかつ幽霊部員の南野南という女子だ。会話をした覚えが無いのに向こうはたまに会う度、俺の詳細を語ってくる……一体誰から情報を買っているんだか……。


 俺は学校に向かった。そして始業式式が終わった。特に何もイベントは無かったしカットしても良いだろう、というか早く終わんねーかなーと思っていたらいつの間にか終わっていた。


 校長先生の長い話の間はボーッとしていればあっという間だ。入学式は昨日あったらしいが果たして美少女はいたのだろうか? 


 まあ、とりあえず部室へ向かうとするか〜。部室は高校の1階の校長室の隣にある、その理由はまあ何だ? 俺には聞かないでくれとだけ。


 俺は部室の扉を開けて中に入る、そしていつも通り机の下を覗くと……。


「やっぱりいやがったな? 南野南みなみのみなみ! お前はいつもなんでそんな場所にいるんだ!」


 南野南は美少女だ、それにに加えて校長の娘という点もある、校長室の隣なのはそれが理由だ。娘大好き過ぎるお祖父ちゃんが心配すぎて校長室の隣に部室作っちゃうっていう暴挙に出たと校内ではかなり話題になった。

 

 それに加えてこの女は……。


「お前な! なんでいつも全裸なんだよ! そのせいで何回俺が校長に殺されかけたか! 今まで何回も先輩達もいない時間狙いやがってよ! 今度こそ許さんからな?」


「見つかっちゃった……私は君をからかいたいだけなんだけどな〜、おもしれー男だからさ」


 ミナミナはそう言う。これはコイツのあだ名だ、先輩達が言っていたからその流れでいつの前にか俺も言っていた。


 全裸なのは校則上どうこうじゃなくて社会的に色々と駄目なんだよ……、まあ流石に丸くなって色々な所は隠してるから良い……わけ無いんだなコレが。


 俺はとりあえず自分の着ていた黒のブレザーを脱ぎ渡す。机の下にしゃがんで手渡す、猫みたいな口をしながらミナミナはそれを受け取る。


「ありがと」


「感謝されることじゃねぇよ。このビッチが……」


「それは褒め言葉なんだよ? 私は変態だから」


「なーる。納得行くわ、なんでそんな感じでこの高校いられるんだろうな〜。っていうかもうすぐ新入生来るかもだから早く着替」


 その時ガチャッ! と扉の開く音がした。マズイ! 非常にマズイ! 今俺は全裸の上にブレザーを羽織って誤魔化しただけの半全裸状態の女と向き合っている!


 こんな状況を新入生に見られれば羞恥心では済まない! というか……これは物凄いオタクでかつ! 特殊プレイとか好きな変態オタク(エロも好き)な奴じゃ無いと失望される!


 それに、男子ならいざ知らず! 女だったらどうする? キャー先輩のエッチー! とか、先輩? そんな物が好きなんですか? とりあえず警察に通報しときますね〜とか! 一旦ナイフで刺しときましょうか? とかァ! いや、最後はちょっと誇張しすぎだ。


 ともかく俺はそんな状況を防がなければならない。俺はドアノブを握り開けられないように閉める。


 コンコンッ! とノックされた。


「あの? すみませーん! 私新入生の美紗之美咲みさのみさきと言います! 開けてもらえますか〜? 部活入部届を出しに来たんです!」


「あー、ちょっと待ってね? ……」


 俺は小声にチェンジする。


「おい、ミナミナ。今すぐ着替えろ、そして隠れろ。お前を見られるのは恥だ、早く」


「そんなことを言いなさんな〜、さ? 楽になって」


 ミナミナは机の下から出てきて俺に近づいてきた! 一体ナニをする気だ! ミナミナは俺の腰に手を回した。そしてくすぐりだした。隠せよ! 色々と、と言いたくなった。アニメとかなら謎の光が入りそうだ……最近はそういうのを使わない方法もあるみたいだが。


「ちょ! ヤメロ! 離せ! 離せって!」


 くすぐったくなって俺は壁や扉に身体をぶつける。これは誤解される……終わった、俺の高校生活終わった。


 高校の、突然なぜか、終わったよ。句なんて読んでる場合じゃないんだなコレが……。


 部室の外は静かになった。やはり駄目か……。


「凄いですね、予想以上です。では入りますね?」


 扉の外からはそう聞こえた、今の状況を簡単に説明しよう。俺はくすぐったくてうつ伏せに倒れてしまった、その上に半全裸状態のミナミナが乗っているのだ。


 因みに全裸とは言ったがパンツは履いている、だから途中から半全裸と言ったのだ……そんなことはどうでも良い。


 というか想像以上? とか言ってなかったか新入生! アニメの見過ぎなのでは? というか想像以上って本当になんだよ! アレか? もしかして俺の親友である如月きさらぎが売ったとでも?


 ガチャッ! と扉が開いた……。


 そして扉から入って来たのは女子にしては身長高めな長いサラサラな黒髪で、最近にしては短めのミニスカ、そして黒タイツ……そしてとてつもないスタイルの良さ。


 キョウイの格差社会とはこのことか……。チラッと俺はミナミナの胸を見る。


「変態さんだね〜、タクミ〜」


 俺はもう目を閉じて何を言われても構わん! そう思っていた。


「あっ……、お二人でセッ◯スですか? お年頃ですもんね?」


「は!? 違う!」


「お〜う、新入生良いね〜」


 初手セッ……、マジか。まあこの部活的にはそういうヤバい人の方が良いのかもしれないが……、弁明しないと変な印象を持たれる。口に指を絡ませた手を置いていて美紗の


「違うんだ、俺はコイツにからかわれているだけで」


 俺はミナミナに乗られながらも頭だけ動かし何とか美紗之美咲の顔を見て話している、顔は見て話している、恥は無い。と思うことにしなければやっていられない。


「ふふっ、大丈夫ですよ先輩! 私は面白そうと思ってそう言っただけですから、しかしミナミナ先輩? はとてもエロいですね……触っても良いですか?」


「良いよ〜。そこまで大きくないけどねッ!」


 ドガッ! と俺は頭の頂点を殴られた……。


「痛ぇな! おい!」


「人の胸を馬鹿にするのは罪深いんだよ……、なんて」


 美紗之美咲は俺の横に正座をして座り「ではお願いします」と言いミナミナの胸を揉む、そしてミナミナは「あっ♡」と喘ぐ……。あのさ……。


「まず俺に乗っかっているのを気にしてくれ」


 そう俺は二人に向けて言った。が……。


「何言ってるんですか先輩! ラッキースケベですよ? もっと興奮して下さい、良いアイデアになるんですから」


「何のアイデアだよッ!」


 俺は思わずツッコミをしてしまった、これは現実なのか? 何このエロゲーみたいな現実は……。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る