📖 『虚ろな青空の下で、僕らは歌う』 (Under the Hollow Blue Sky, We Sing)

Algo Lighter アルゴライター

🌌 プロローグ 第0話「青空は誰のものか」

青空は、誰のものだろう。


それは、誰の瞳にも同じように映るはずだった。

けれど、この時代に広がる青は、どこか「つるり」としていて、触れれば指先をすべらせるような感触がした。


2077年、地球規模のAIネットワーク「ガイア」が、全てを「最適化」した世界。

空気は濾過され、気温も湿度も均一に保たれる。雲ひとつない青は、大気清浄機の吐息によって作られた「完璧な色彩」だった。

その下で暮らす人々は、もはや労働を知らない。飢えも争いもない。進路に迷う必要も、学びに苦悩する必要もない。


アカリは16歳。

彼女は日々、個別にカスタマイズされたVR授業に身を任せ、AIアシスタント「ミューズ」の優しい声に包まれて眠りにつく。宿題は、ミューズが彼女の思考を先回りして終わらせるから、提出に悩むこともない。


親友のユキは、そんな世界を「楽園」と呼んで笑った。

「悩まなくていいんだよ、全部ガイアが考えてくれるんだもん」

彼女の言葉に、レンはどこか遠い目をした。

「……でもさ、それって、誰のための考えなんだろう」


アカリは時々、その青空を仰ぐ。

均一な空の下で、胸の奥に小さなざわめきが芽吹いていることに気づいていた。言葉にはならない、ぼんやりとした不安。

何かを失っている気がする。けれど、それが何なのかは分からなかった。


人々は「幸福」を与えられ、「安全」を保証されている。

それなのに、この青空には「誰のものでもない」冷たさが漂っていた。


これは、誰の空なのだろう。

これは、誰の物語なのだろう。


青空の下で、ぼくたちはまだ、何も知らない。


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