美少女(73)ハーレムと田舎暮らし
のりお
プロローグ
「やっと終わったー、早く食べよ」
「やべ、俺早弁したわ」
「何してんの。学食行ってきたら?」
「そうする……って、げぇ、アイツらいんじゃん」
「アイツら?ああ、あのキモオタ三人グループねw」
「あそこ通りたくねぇー、匂いが移りそうw」
「ちょっとやめなよ、聞こえるよw」
「大丈夫だってw」
♢ ♢ ♢
いや聞こえてますけどーー。
全く、俺らなんにも迷惑かけてないだろ。何でそんなに
「ひどい言いようだよね、全く」
隣にいた
「ああ、
弁当を食べる手を止め、瓶底メガネをカチャカチャと鳴らしながら俺にそう言ったのは
ちなみに
「そこは『フロート・フラッシュ』だろ。分かってないな」
俺は卵焼きを飲み込んでからそう言った。『フロート・フラッシュ』も、『バイオレンス・フレイム』も、マイナーアニメの必殺技だ。
「それは
「もー。あんな奴らの苦しむ姿見た所で面白くないよ。僕は
「はは、これで二対一だ」
からかってそう言うと、
俺達は、見てわかる通りのオタク三人組。
特徴を聞いて察するだろうが、俺達はいわゆる"陰キャ"というもので、いわゆる"陽キャ"というものに様々なことでからかわれる毎日を過ごしている。
しかし俺達は、そんな陽キャ共に合わせることなく、毎日推しの話をして、ゲームの話をして、アニメの話をして……そんな日々が楽しかった。だから別に陽キャが来たって……
「なあ、君ら三人って何話すの?w」
話しかけて来たのは、先程早弁して食堂に行こうとしていた陽キャA。ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながらこちらへ来る。
「あっ、いや、まあ、色々……」
テンパってしまってそれ以上の言葉が出ない。動揺している間にも、陽キャAは話を続ける。
「やっぱアニメ?それともゲームとか?おっぱい大きい女の子が出てくるやつ?w」
「や、話しても分からないかと……w」
「え?なんて?w聞こえないw」
「あっ、なんでもないです……はい」
「君は?えぇっと、誰だっけw太川くん?太川くんはゲームやるの?w」
「いやぁ……ん~……はは……」
その後はとても気まずい沈黙が流れ、やがて沈黙を破ったのは昼休み終了を告げるチャイムだった。
♢ ♢ ♢
「くーー!やっと六限終わったーー」
放課後も三人でまた集まると、大きな伸びをしてからカバンをかるう。
この学校は肩からかけるタイプのスクールカバンだが、ほとんどの生徒は取っ手を使ってリュックサックのようにして背負っている。まあ俺達三人はその"ほとんど"に全員入っていないが。
「あ、そういえば!
「寄り道などw陽キャでござるかw」
「いやアニ○イト行く陽キャどこにいんだよ」
「どう?楽しそうじゃない?」
思いがけない誘いだったが、なんせ俺達陰キャは予定など無に等しい。放課後のアニ○イト寄り道なんて……そんなの……
「いや行くに決まっているw」
言おうとしたことを
アニ○イトで何を買いたいか話して、新刊の情報を共有して……そんな
まさかこの何気ない選択が、俺達三人の人生を変える、それこそ夢のような選択になるとは。
そう。あれは。
夏の暑さでやられそうになって。
いつも煩い蝉の声に耳を塞いで。
”七月の過去最高気温”と書かれたニュースを横目に見ながら。
普段から運動なんてしない俺達にとっては地獄のような道のりで。
息を切らして歩いた七月十五日。
俺達は。
「下の高校生!!!危ない!!!」
♢ ♢ ♢
「キャァァァァァ!!」
「救急車!!救急車を、!!」
「に……肉と……血が……飛ん……」
「落ちてきたのは……鉄骨か……?」
「落ち着いて!!離れてください!」
工事現場の真下を歩いていた。
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