第6話 裏切りと真実の影
夢時たちは、デュランの研究所がある不気味な森を歩いていた。
木々の間を抜ける風は冷たく、鳥の声すら聞こえない。
ふと、倒れている少女を見つける。夢時は息を呑んだ。
――死んだ幼馴染・麗奈にそっくりだったからだ。
「大丈夫ですか!? ……酷い怪我です、すぐに治療を!」
ロゼナが叫ぶと、ルーシスは何も言わず少女を背負った。
「おい! 大丈夫か!? 連れていくんだ!」アーサーが慌てて叫ぶ。
ルーシスは振り向き、微笑むだけだった。
「その時は、その時です」
夢時はその少女を見つめながら、胸の奥で何かがざわつく。
(……そんなはずない。絶対に……)
そして、走り出した――。
研究所の扉をルーシスが叩くと、同時に中から刃が飛び出した。
「な、何だ!?」
ものすごい勢いでデュランが現れ、ルーシスの前に立ちはだかる。
ルーシスは少女をゆっくり地面に置いた。
「答えろ、『ルーセ』!」
デュランはなぜかルーシスを“ルーセ”と呼ぶ。
ルーシスはいつもの笑顔を浮かべていたが、何かが違う、冷たい笑みを見せた。
「何、言ってんだ……嘘……だろ」
夢時は嫌な予感に体が硬直する。逃げようとするも、遅かった。
「そうですね」
ルーシスは夢時の首を締め上げた。
「ルーシス先生!? やめて!!」
ロゼナが駆け寄ろうとするが、突き飛ばされる。
「ロ、ロゼナ……」
夢時は必死に声を振り絞るも、さらに首を絞められ苦しむ。
「テメー!」
アーサーが短剣を抜き叫ぶ。
「一体どうなってるの?」ニナも動揺を隠せない。
怒りと恐怖で、夢時は妖族化する。額に模様が浮かび上がり、力が溢れた。
「フッ」
ルーシスは手を離すと、その場から消え去った。
ルーシスは、スランの元へ向かっていた。
「目的はスランか……」
デュランが走り出す。ルーシスは迷わずスランを連れ去る。
夢時はルーシスの優しい笑顔を思い出す。
(何だよ、これ……)
窓を見つめ拳を握りしめる。
「夢時……」
ロゼナが声をかけるが、夢時は壁を殴った。
「何で俺はここに来たんだ! こんなことになるなら……」
胸ぐらを掴まれ、デュランが睨みつける。
「来なければ良かったとでも言いたいか」
「もう嫌だ……元の世界に帰りたい……魔王の力なんていらない……」夢時の声は弱々しい。
「帰るなどと言えるか。お前の父が『魔王ルーセ』――別名ルーシスだと知って」
夢時は言葉の意味が理解できず、頭を抱える。
「お前の名は夢時ではない、『ルイ』だ」
「そんな……そんなわけない……」
夢時は母と父の顔を思い出し、涙を流す。
「夢時、今は休もう」
ロゼナが肩に手を置き、優しく微笑む。
夢時は横になり考えた。
(あの現代の母と父は、式神だった……なら、あの声は母の……)
幼き日に魔王の姿のルーシスが頭を触り、言ったことを思い出す。
「私は、どんなことがあっても、ルイを守る」
「……信じたくねぇー……」
ロゼナたちは別の部屋にいた。
「ルーシス先生がスランを殺すなんて……」ロゼナは動揺。
「夢時の父親なのに?」ニナも驚く。
「復讐か……くそっ!」アーサーは苛立ちを隠せない。
「俺は、ルーシスを探す。ちゃんと話を聞きたい」
夢時はデュランに言うと、デュランは振り向いた。
「戦えるのか? お前の父と」
夢時は目を閉じ、覚悟を決める。
「……戦う」
ロゼナは涙を堪えながらも理解した。
「勝手にすればいい。だが、奴より早くヨーデを探さなければならない」
デュランの言葉に夢時は頷く。
「決まりだ。ローフェルノを目指しつつ、ルーシスを探し、スランを助ける」
夢時が指示すると、ロゼナは涙を拭った。
「ロゼナ、アーサー、ニナは、その子と一緒にいてほしい」夢時の言葉に、アーサーとニナは頷く。
「じゃー、ローフェルノを目指そう」
デュランは問いかける。
「その前に、お前たちは、ここに何しに来た」
夢時は答えず、ロゼナが説明した。
デュランは話を聞き、手を組んだ。
「結界が消えたのは、ヨーデの封印が解けたからだろう」
「ローフェルノに行きます。魔人のことも知りたいです」
「結界の中心にいるのは、『メリア』――お前の母親だ」
ロゼナは驚き、ネックレスの宝石を握りしめる。
「ローフェルノ……」不安げに呟いた。
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