番外編 水無川水瀬の本性を暴いてやる!
第1話 ある日、私は出会った。
西日が照らす商店街を歩きながら、私——————
他人の本心は、私には分からない。
そんなことは誰だって知っている簡単な話だ。
だからこそ、その本心を口にすべきだ……なんて世の中は言うけれど、正直その見解は間違えていると思う。
だってそうでしょう?
相手が口にする言葉がどこまで本当なのか証明しようがない。
故に、言葉を交わして本心を知るなんてことは不可能なんだ。
でも世の中は、不可能なら可能になるように工夫して考えてみろとも口にする。
では、そこで必要になる知識は何か?
環境への適応能力? 集団行動の意義? メラビアンの法則?
いいや、そもそも考えるだけ時間の無駄。
要は、その場しのぎの言葉で一個人は、社会は、妥協を強いられているだけなんだ。
世の中にある言葉のピースを一つずつ組み上げていくと、必ずどこかで矛盾が生じる。
まあ、それに気が付いたのは最近なんだけどね。
結局、世の中って正解もなければ不正解もない曖昧に満ちた気持ち悪い世界で、そこの環境に順応できない人間は、順応できる環境を自力で探さないといけない。
だから私は、この町にやってきた。
自分が順応できる環境を探し求めて……。
「多分、今回もダメだろうな……」
私は多分、またやらかす。
人の本性というのは、そう簡単に変えられないから誰もが隠そうと偽装する。
だから、いつかどこかで自分の行動と言動に矛盾が生じて、信用を失った私の元から一人、また一人と離れていく。
そして私はまた一つ、失敗を重ねる。
一体、これを何度繰り返せばいいのだろう。
何度繰り返せば、私は人生一度きりしかない青春を謳歌することができるのだろう。
もちろん、環境に順応する簡単な方法を一つだけ知っている。
けれど、その方法を取ってしまえば、きっと私の欲しい物は手に入らなくなってしまう。
私は、それがたまらなく嫌なんだ。
でも、私は一体どうすれば……。
「——————おや? 初めて見る顔ですね」
急に背後から話しかけられて、反射的に振り返る。
するとそこには、絵本の世界から飛び出してきたと言われても不自然じゃないほどの美少女が立っていた。
やや吊り気味の大きな瞳に、色素の薄い黒色の長髪。
その長髪はハーフアップで結っており、可愛らしい水色のリボンが彼女の魅力をより際立たせている。
にしても肌が白い! どんなケアしたらそんな肌になるのって感じ。
もしかして、モデルさんとかなのかな……。
「すみません、初対面の方に失礼でしたよね。制服とネクタイリボンが一緒だったので、つい……」
そう言って彼女は、自分のネクタイリボンを指さす。
確かに同じ制服だし、同じ水色のネクタイリボン。
私がこれから通う女子校は、学年ごとにネクタイリボンの色が違うので彼女と私は同学年ということになる。
なるほど。急に話しかけてきたのは、見慣れない生徒が自分と同じ制服を着ているから興味本位で尋ねてきたということらしい。
嘘を吐く理由も特にはないし、素直に答えておくとしよう。
「わ、私、明日からあなたの通う学校に転校する予定で、今日は学校に呼び出されたのでその帰りで……」
「……そうなんですね! 同じ学年に新しい仲間が加わってとても嬉しいです!」
彼女は、両手の平を合わせてニコニコと微笑む。
いや一瞬間があったんだけど、もしかしてあんまり歓迎されてない……?
言葉では歓迎ムーブを口にしてるけど、本心はそんなことなかったりする……?
いやいや、断定するにはあまりにも決め手がなさすぎる。
「……あの、どうかされましたか?」
ずいっと身を寄せてくる彼女に、思わず距離を取ってしまった。
うん、間違いない。
この人、絶対何か企んでる!
もしかしたら今、私の弱みを探っているのかも……。
確か、女子校では必ずスクールカーストが存在すると聞いたことがある。
しかも、私が通う女子校は女子校でもお嬢様学校で有名な学校だ。
弱みを握って、権力で強制的に黙らせる……とか?
……ある、その可能性大いにある!
それなら弱みは絶対に見せられない!
絶対に‼
「すみません、いきなりパーソナルスペースに入られたら驚いてしまいますよね。私はただ、どうされたのかと心配になって……」
「お気遣いありがとうございます。でも、私なら大丈夫です。それでは、私はこれから用事があるので失礼します」
「お忙しいところ呼び止めてしまってすみません。では、また学校で」
彼女がお辞儀をしてきたので、お辞儀を返してから
こうして私は、彼女と出会った。
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