第16話
実家を出た私達はアリスの家族に挨拶をしに行く予定……のはずだったのだが……
「どうして私はここにいるんだろう……?」
私は自分の実家でも学校の寮でもない。ましてや、アリスの実家でもない天井を見つめ、私は思わずそう呟いた。
私の実家を出た後、アリスは私の腕を取って何も言わず移動する。アリスの実家に向かうのだからタクシーかお抱えの車に乗るのかと思ったのだが、それもせずにアリスが向かった先は……どう考えてもカップルが利用するホテルだった。
アリスは迷う事なくホテルに入り受付に向かう。そして、受付にいるおじさんに札束を放り投げるように渡し
「お釣りはいいわ。空いてる部屋で1番いい部屋をよろしく」
いきなり札束を渡されて驚愕した受付のおじさんだったが、慌てて媚びた笑みを浮かべ、1番いい部屋の鍵をアリスに差し出すように渡す。アリスはそれを無言で受け取り、その鍵が書かれた部屋番号へと向かい、アリスにベッドに押し倒され……今に至る。
「なぁ、アリス。確か私達はアリスの実家に結婚の挨拶に向かうんじゃなかったか?」
私はニッコリ笑って私を見下ろしてるアリスに恐る恐る尋ねるが、アリスはニッコリ笑いハッキリと答える。
「あぁ、あれはもちろんあそこら出る為の嘘よ。あぁ言えばすぐに出られると思ってね。まぁ、結局無駄だったけど」
「うぅ……なんか……ごめん」
もう縁を切ったも同然とはいえ、自分の家族がアリスに迷惑をかけ申し訳なさで謝罪の言葉を口にする。
「まぁ、それは別に想定の範囲内だからいいの。それよりも……私は物凄く怒ってるのは理解してる?」
「まぁ……こんな場所に連れられて押し倒された時点でなんとなくは……」
というか、もう凄くいい綺麗な笑顔だが目が笑ってない時点で怒ってるの丸わかりだ。
「じゃあ、私が何で怒ってるのかも分かるわよね?」
「うぅ……それは……」
それも理解している。アリスは私に任せてと伝えて言ってくれたのに、私はそれを無視してあろう事かあんな男の所に行こうとした。私もアリスと同じ立場だったら怒っていただろう。
「まぁ、私に迷惑をかけたくなくて動いたんでしょ。それが愛美のいい所であり可愛い所でもあるんだけどね」
アリスは一つ溜息をついてそう言った。が、すぐにまたあのいい笑顔を浮かべ
「けど、それとこれとは話が別よね♡」
「えっ?あっ、いや……ちょっ……まっ……」
「問答無用♡」
その晩、アリスから激しく愛された私。気づけば翌日の朝になっていた……。結局、私の諸々を考慮してアリスの実家へ結婚の挨拶に向かうのは数日経ってからになった……
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