第7話 不幸な運命!? 美桜の苦悩!
美桜の心は次第に限界に近づいていた。
美桜は幼い頃から父親に相当厳しく躾られてきた。
「社会に出て困らないように、嫌われ役を買ってでも厳しく躾をする」というのが父親の口実であった。
「自分が嫌われ役に回ってでも子供の将来のことを考えてくれているなんて何て良い父親何だろう。」と最初は思っていた。
しかし、時が経つに連れて自分の家庭が普通ではないと感じるようになっていった。
同学年の子たちが、箸や鉛筆の持ち方がおかしかったり、計算問題が出来なかったりした時、親から「お前なんてただのゴミ」というような罵声を浴びせられたり、物を投げつけられたりするという話は聞いたことがない。
また、他の家庭には兄弟間の能力による差別といったこともないらしい。
美桜はどちらかと言えば物覚えが悪い子供であった。
そのため幼い頃から父親から沢山怒られてきた。
一方、現在小学2年生の弟、賢人は、一度言われたことはすぐ出来るようになる、物覚えが良い、能力値に恵まれた子供であった。
父親はそんな弟と美桜を比較して、「賢人と比べてお前は何て駄目な奴なんだ。」と良く言ったものだ。
小学5年生になった今、厳しい躾によって出来るようになったことも増え、以前より怒られることは少なくなった。
しかし、未だに弟を引き合いに出して人格を否定されたり、自分だけ昼食が抜かれているということも多々あった。
母はもしかしたら心の中で美桜のことを心配してくれていたのかもしれないが、父の彼女に対するそのような仕打ちを傍観しているだけであった。
そのような環境で育ったためか、彼女の心の中では才能がある人や幸福な人に対する憎悪とでも言うべき感情が広がっていった。
父親は右手をしっかり使えるようになったら弟と同じ扱いをしてくれると言った。
そう、美桜には努力してもどうしても出来ないことが1つだけあった。
それは利き手を変えることであった。
生まれつき左利きだった美桜を父親は無理やりにでも右利きに変えようとした。
しかし、それは何度教えても、いくら厳しくしても直ることはなかった。
内心「左利きは生まれつきなんだし、しょうがないじゃないか。無理やり直せるものでもないし...」と思ってたいたがそれを口に出して言うことはなかった。
そのようなことをすれば、何をされるかわからないからだ。
父から怒られてることがないように自分なりに精一杯やっていたつもりなのだがやはり失敗はするものである。
皿洗いを手伝っている時に父が気に入っていた皿を割ってしまったのはつい最近のことである。
慌てて謝ったが父は激怒し、怒鳴りながらお腹を何発か蹴られた。
美桜の年齢が年齢なので一応手加減はしていたのかもしれないが、相当痛かったのを覚えている。
その出来事があってから、心が折れてしまった。
大人の人が近くにいるだけでも恐怖心を感じるようになり、日常生活で頻繁に自分が受けた仕打ちを思い出しては涙が出そうになってしまう。
出来るだけ泣かないように歯を食いしばって我慢するように努めていたのだが、どうしても我慢出来なくて学校のトイレの中で泣いてしまうことも多々あった。
けれど、そこも決して落ち着いていられる場所ではなかった。
当然ながら全校生徒が使うのだから。
人が入ってくると心が緊張状態に入ってしまう。
この前も下級生とはち合わせてしまったっけ...
誰かに相談したい気持ちはあるが、近くに相談出来る人もいない。
「どうしたらいいんだろ。この世界から逃げ出したい...」、美桜はそう思いながら公園のベンチに座っていた。
今日は日曜日で一定期間外出が許されているのだ。
その時、上から声をかけられたら。
「お姉ちゃん、大丈夫!?」
どうやら子供が見てもわかるほど悲しそうな顔をしていたらしい。
そこにはあどけない瞳をした少女が立っていた。
誰でも良いから助けて欲しいという気持ちと何の苦労もなさそうな少女が憎いという気持ちが複雑に絡み合う。
「いくらなんでもこの少女の年齢ではあたしを救うことは無理だろう。」と思い、辛うじてこう答えた。
「ちょっと悩んでたことがあったんだけど、もう大丈夫よ。心配してくれてありがとう。」
少女は少し困ったような顔をして頷いた。
その時、向こうから大人の人が走ってきた。
美桜はつい身構えてしまったが、その必要は無かったようだ。
大人の人は少女のそばまで来ると「純花、そんなことやってないでもう行くよ。」と言った。
それから美桜の方を向いて「すみませんね~。うちの娘が迷惑をおかけして。」というようなことを言った。
美桜は「いえ、全然大丈夫ですよ~。迷惑なんかじゃありません。」と返答すると、お礼を言って去っていくその子のお母さんと、その子が手を繋いで歩いていくのを見つめた。
「あたしもああいう家庭に生まれたかった」と心底思った。
それから時計を見るとそろそろ帰らなければまずい時間になっていた。
家に帰ってから父にまた何かされるのではないかと怯えながら過ごしたが幸いなことにその後数日間は身体的苦痛を味わうことはなかった。
当然精神的苦痛は毎日のように味わったのだが...
その数日間は悪夢を見た。誰かに殴られている夢や、自分が首を吊って死んでしまうという夢だ。
違和感を覚えたのは毎晩見るそのような悪夢の途中に変な夢が入っていたことだ。
短髪の少女が出て来ては言うのだった。
「お願いです。私たちの世界にいらして、私たちの世界を救ってください。」と...
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