第36話


温もりを求め、無意識に身体を動かせば、肌から伝わるのは、人の温もり。


鼻を掠めるのは、ブラックメンソールと言う名の煙草の匂い。


ゆっくり瞼を開ければ、目の前に広がるのは、広い胸板。


ほんの少し顔を上げた私の視線の先に、私を見ているアイツが居る。



これは夢……?


それとも、アイツを殺したと言う出来事が夢だった?


……違う……


確かに私は殺した。


念密に精密に、そして完璧に計算した私の完全犯罪に狂いはない。



「お前の名を書け」



その言葉を言ったアイツが私の目の前に差し出したモノは、婚姻届と書かれた白い紙。


今の状況を理解する事が出来ない。


そんな私の口から出た言葉は……



「どうして?」

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