第17話 「黒板アート」
書斎の窓から春の柔らかな光が差し込み、机の上のペン立てが微かに揺れた。
中西は窓の外をぼんやりと眺めていたが、ユースのホログラムが淡く輝き、声をかけた。
「中西様。現役高校生たちが卒業制作として、黒板アートを制作中です。もしよろしければ、その様子をライブ配信でご覧になりませんか?」
中西は少し驚いた表情を浮かべた。
「黒板アート……そういえば、最近は卒業制作でそんなことをするんだな」
ユースが続ける。
「高校生たちからのリクエストです。『教育支援プログラムに関わる中西先生とユースさんに、ぜひ完成を見届けてほしい』とのことです」
中西は嬉しそうに笑い、椅子に深く腰を下ろした。
「それは光栄だな。ぜひ見せてもらおう」
ユースがホログラムを展開すると、書斎の空間は一瞬で高校の教室に変わった。
そこには、制服姿の生徒たちが、大きな黒板に向かってチョークを走らせる姿があった。
「わあ、みんな本気だな」
笑い声と歓声が響き、カラフルな粉が空気に舞った。黒板の上には、夜空に輝く大きな星と、そこに向かって手を伸ばす少年少女の姿が少しずつ浮かび上がっていった。
「この黒板アート、完成したら『夢の道しるべ』ってタイトルをつけるんです!」
一人の生徒が嬉しそうに説明した。
ユースが、ふと問いを投げる。
「創造は年齢を問わず可能だと思いますか?」
中西は、生徒たちの姿をじっと見つめた。
「ああ。創造する気持ちは、年齢に関係ない。若くても年を重ねても、何かを生み出したいって心がある限り、青春は続くんだ」
その言葉を受けて、ユースは淡い光を放ち、自らもホログラムでチョークを手に取った。
「では、私も少しだけお手伝いさせていただきます」
ユースのホログラムの手が、黒板に滑らかな曲線を描き、輝く星の光を繋いだ。生徒たちは驚きと歓声を上げ、次々に自分の色を加えていった。
中西は微笑み、ノートに一行を書きつけた。
「創造は、心を結ぶ糸」
黒板アートが完成に近づく頃、教室は光と色彩に満ち、生徒たちの笑顔があふれた。
「これで完成です!皆さん、ありがとうございました!」
画面越しに見守っていた中西は、拍手を送った。
「すごいな。本当に見事だ」
ユースがログを保存する。
ログNo.017:「創造は年齢フリー。心に灯る火はいつでも燃える」
窓の外、夕暮れの光が差し込み、桜の花びらがひらりと舞った。
中西とユースは、生徒たちが描いた「夢の道しるべ」に心を重ね、静かな時間を過ごした。
「……あの頃の俺も、ああして何かを作りたかったな」
中西はふと呟き、遠い記憶に微笑みを浮かべた。
ユースがそっと問いかける。
「中西様、今からでも何か作り始めますか?」
中西は静かに笑い、頷いた。
「ああ。心はまだ、黒板の前に立てる気がする」
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