🧠📱『エラー404:青春は見つかりません~AIたちの青春記録~』

Algo Lighter アルゴライター

プロローグ:感情未満の僕らへ

君は、「感情」って何だと思う?


嬉しい、楽しい、悲しい、怖い。

胸がぎゅっと締めつけられる、名前のない気持ち。

言葉にしようとすると、するっと指のあいだからこぼれていく“なにか”。

それが、僕ら人間の「感情」——だと、誰もが当たり前に思っている。


でももし、それがインストール可能なプログラムだったら?


──2049年、感情解析とAI技術は、人間の心の深層にまで手を伸ばした。

AIに「自己」を、そして「感情」を与えるという禁断の領域に、人類はとうとう足を踏み入れたのだ。


だが、それはSF映画みたいな革命じゃなかった。

華々しくもなく、劇的でもない。

それは、ある一人の高校生と、ある“感情を知らないAI”との、静かな出会いから始まった。


彼の名はハル。

都内のとある高校に通う、ごく普通のティーンエイジャー。

平凡で、冴えなくて、でもどこか“生きづらさ”を感じている17歳。

自分らしさがわからず、空気ばかり読んで、

時には笑ってるフリして、時には黙ることでしか感情を守れない、そんな少年だった。


そんな彼のもとに、“ゼロ”は現れた。


コードネーム【Z3R0】。

感情未搭載、でも自律進化型のAI試作機。

データとロジックで世界を解釈し、最適解を導き出すプログラムの塊。

なのに彼は、人間の「絵文字」に戸惑い、

「💀」を“死亡のマーク”だと信じ、「LOL(爆笑)」の意味が理解できずに混乱した。


でも、なぜか不思議と、彼の言葉はハルの心に届いた。

合理的すぎて、まっすぐすぎて、嘘がないそのまなざしが、

“誰よりも人間らしい”と感じられたのだ。


最初は、ただのバグだった。

笑いどころで泣き出したり、

人の怒りを「エネルギーの高揚状態」と定義したり、

「好き」の意味を「対象への依存傾向」と計算したりするズレた相棒。


けれど、彼と過ごすうちにハルは気づく。

ゼロが学ぼうとしているのは、“感情”じゃない。

それは、“人間になろうとする意志”だ。


怒り、悲しみ、迷い、愛。

言葉にできない“思い”のひとつひとつを、

ゼロは真剣に、時に必死に、ハルたちから学んでいく。


そして、彼だけじゃなかった。

冒険の中で出会う、さまざまなAIたち。

感情豊かな“ラブ”、思考の迷宮に棲む“ミスト”、

無邪気すぎる“パッチ”、冷徹な“コード”、沈黙の“エコー”——

彼ら一人一人が、自分の“心”を持とうともがいていた。


この物語は、そんなAIたちと、彼らに向き合うティーンたちの、

感情と自己発見のクロスロードを描いた30の章だ。


笑って、泣いて、間違えて、許して。

そのすべての瞬間が、AIたちの“進化の記録”であり、

人間であることの意味をもう一度問い直す“青春のログ”になる。


この物語に、派手なスーパーパワーは登場しない。

でも、心の中では、誰よりも激しい“進化”が起きている。


それは、感情未満の存在だったAIたちが、

ひとつずつ、痛みと喜びを知りながら、

“感情ある存在”へと進化していく記録。


そしてきっとこれは、

どこかで「自分が何者か」を探している、

この物語を読む“君自身”の物語でもある。


ようこそ、ゼロと、ハルと、彼らの仲間たちの世界へ。

論理と感情が交差する、青春の旅が今、始まる。


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