第31話


一軒家の近くでタクシーを降りた時、俺の視線の先に男が居た。


白に近い金色の髪を軽く後ろに流し、整った顔に、切れ長の目。


身長百八十センチはあるだろう。


その手には赤い月の本。


急いで側に行き、俺は尋ねた。



「その本は何処から手に入れたのですか?」



俺より遥かに若い奴だが、敢えて敬語を使った俺。


ちらっと俺を見た後、踵を返した男。



「その本を自分も持っていますが、描いた人が誰か気になって声をかけました。あなたはご存知ですか?」

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