第一幕:再会と監禁

 翌朝、ドアが開いていた。


 目覚めた紗和は、夢か現実かも分からないまま、廊下に出た。

 昨日の雨のような対話が、胸の奥に薄く染みていた。


 一階の食堂には、綾女が静かに座っていた。白いテーブルクロスの上に、温かい紅茶と、バターの香るトースト。それは、まるで日常を演じるための舞台装置のようだった。


「おはよう、紗和」


「……おはよう」


 どちらからともなく視線を合わせる。けれど、紗和はまだ警戒を解いていない。

 椅子に座り、紅茶を一口飲む。そのあたたかさが、意外にも現実的で、少しだけ混乱した。


「昨日のこと……謝るべきか、わからないの。でも、話せて、少しだけ……楽になった」


「私も、なんで言えなかったんだろうって、ずっと思ってた。ごめんね、綾女」


 謝罪の言葉を口にした瞬間、綾女の表情が崩れた。

 ——安堵。けれど、その裏にある感情は、未だ読み取れない。


「今日からは、好きに過ごして。もう鍵もかけない。……逃げても、いい」


 その言葉に、紗和は戸惑う。


「逃げてもいいって……どういう意味?」


「本当に逃げたい人なら、もうここにいない。そう思って」


「……私はまだ、ここにいる」


「なら、それだけで、嬉しい」


 その笑顔が、紗和の心を揺らす。

 監禁の事実は変わらない。けれど今、綾女の言葉には、もう「罰」の匂いはなかった。

 ——それは、救いか、それとも新たな檻か。


 館の大窓から差し込む朝の光が、ふたりの影をゆっくりと引き伸ばしていく。


 時間は止まっているようでいて、どこかで確かに動き始めていた。




第二幕:記憶と真実(予告)


 少しずつ蘇る、綾女と紗和の過去。

 かつて起きた「裏切り」と「事故」。

 そして、綾女がこの館に籠もるようになった真の理由。


 ふたりが「過去」に閉じ込められた理由とは何か。

 再会は贖罪か、救済か、それとも——

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