学生快楽殺人鬼の日常

tanahiro2010@猫

第1話

「ほら、もっと叫べよ!もっと泣けよ!そうじゃないと面白くないだろぉ?」


 粘着的で、そしてどこか狂気を感じさせる笑みを浮かべた成人男性が、ナイフを振り上げ、振り落とす。

 その先にあるのは、紅く染まった夫婦が1組。

 その光景を僕、堺優斗は呆然と眺めていた。


「なぁ、ほら!お前らの子供が!お前らが殺されてるところを見てるんだぜ?なぁ、だから泣き叫べよ!早く!!」


 僕のことは眼中にないよ…いや、僕の両親を苦しませるための材料としか見ていない男は、そう叫びながらまた、ナイフを振り落とす。

 

 あぁ、楽しそうに笑ってるな。


 ふと、そう思った。



 僕は、空気だ。

 もちろん、言葉通りの意味ではなく、比喩的な意味だ。

 学校には1人も友達がいないことは愚か話せる人もいない。

 なら、ネットはどうかと聞かれても、現実となんら変わらない。

 ネット上で話しかけられても、何を返せばいいのかわからず基本的な挨拶すらできない。


———そう、僕は世間一般的に「チー牛」と呼ばれる人種にもなれない真性のボッチなのだ。


 そのせいで僕は、趣味と呼べるものを一つも持っていない。

 自身がして、「楽しい」と思えるものを一つも持っていないのだ。

 得意なこともなく、僕の特徴といえば信じられないほどに陰が薄く、そこにいても気づかれないことしかない。


 

 だからつい、思ってしまったのだ。

 狂気を感じさせるとはいえ、その、楽しそうな満面の笑みを浮かべられることが、羨ましいと。

 目の前で、両親が殺されているにも関わらず。

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