Stars way home~星が海へ還るように、そっとあなたを抱きしめたい~

プロローグ:ふたつの歌声

 


 すべてを産みだし

 すべてがかえ


 ここは

 混沌の宇宙。


 ふちの無い想い……。


 星の生まれる場所。


 星の還る場所。




 ★




 音のない宇宙空間に、緊急脱出用の小型艇が漂っている。

 ガラス張りの冷凍睡眠コールドスリープ装置の中に、一人の青年の姿があった。

 黒髪に宇宙軍の制服。

 瞳の色は、固く閉ざされた目蓋の下で知ることはできなかった。

 ただ、そんな青年の悲しそうな表情を数えきれない星々が、優しい光で照らしていた。


 彼は知っているのだろうか?

 星の眼差しを……。



 ★



 彼は夢を見ていた。


 遠くで、誰かが歌っている。

 優しい、子守歌。

 母さんじゃない。

 あれは、機械仕掛けの愛しい人。

 顔も、名前も、思い出せない……。 


 けれど、心に残る切なさだけが、愛しい人がいたことを教えてくれる。


 星の瞬きにも似た暖かくて、胸が締め付けられるような懐かしい歌声。


 君は誰なんだ?


 いいや、思い出してはいけない。

 このまま、星の海で静かに眠らせてくれ……。




 ♪




 彼の思いとは裏腹に、別の方角から歌声が届く。


 ……これは恋歌?

 明るく元気な少女の声。



 しかし、この声の主を俺はまだ知らない。



 俺は、恋歌ラブソングは苦手だ……。


 太陽にも似た、熱く、眩しすぎる歌声。




 お前は誰なんだ?


 止めろ!


 もう、誰の温もりもいらない。


 俺の時間を動かすな!






 頼むから……。


 起こさないでくれ。


 

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