Tree

Nagare〆

第1話 偽善者

『死んでください』


やっときた彼からのメールは

このひとことだけだった


━━あら? お願いされちゃったわ 笑


私は、彼からのお願いに答えるため

シャワーを浴びて気合いをいれて化粧をして

彼と結ばれたあの日に着ていた

お気に入りのワンピースを着て部屋をでた。


駐車場に向かい車に乗る。


「待っててね!」


目的地など決まっていない。


わかっているのは

ただ 彼は私が死ぬことを望んでいることだけ


君の望みは何?


彼にこの質問を受けたとき

私は答える事ができなかったけれど

今なら答える事ができる。


私の望みはあなたの望みを叶えること


目的地は決まっていない。


私は、彼の望みを叶えるために

死に場所を探し、車を走らせた。


自暴自棄になって狂ったように


信号?標識?


そんなもの知らない


私が進む先にいるのが悪いのよ


。。。。。。


なぁーんていうと思った?


普通に車を走らせてるわよ


関係ない人達を巻き込んだりしない


人の多い街から


どんどん


どんどん


離れていく


私の死に場所を求めて


待っててね

必ず あなたの望みは叶えるから


ひたすら車を走らせる


いつの間にか車の外は暗くなっていて

行き交う車のライトが。。。


あぁ キレイね


彼は 私が 耐えられなくて無かったことにしていた記憶を全て思い出させてくれた。


いやぁぁぁぁぁぁっ!


過去を思い出したあの日

1人で泣き叫んでそのまま気を失ったのよね



でも 彼は私の秘密を知りたがっていたから。。。


私は 彼に冷静に話せるように

何度も何度も 消し去りたい過去を思い出しては気絶して。。。 笑


それにしても

私の過去を教えてあげたときの彼の顔


いったい

どんな過去を想像していたのかしら?


全て受け入れてくれるって言ったのに

そのあと いくら連絡をとろうとしても

逃げるんだもの。。。


でも やっと返事をくれた


どんな私も受け入れてくれるって言ってた

彼のことばにウソはなかったのね


そんなことを思いながら


死に場所を求めて車を走らせていたら


あ! みーつけた!


再び街に戻っていた私は

キレイな女性の肩を抱いて

嫌らしい笑みを浮かべている

彼の姿を見つけた


やっぱり ここよね


私は 彼のすぐ目の前に車を停めると

ずっと助手席に置いていたナイフを持って

彼のところへ行って


「あなたの望みを叶えてあげる」


と 自らの首にナイフを突き刺した


その瞬間

私はやっと彼と一緒になれたの


私の身体の中にある

全てのものが


彼を求めていた


ねえ これで満足でしょう?

これがあなたの偽善の結果よ


嬉しいでしょう?
























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