第41話 社畜女、同僚の妹に会う③

「おにい。いつものあのおはなし、きかせて?」

「またか?しょうがねえなあ。お前はあの話、好きだもんな」

「うん」


 お絵描き大会が終わり、サラサちゃんはリオくんに何かをせがむ。


「何のお話をするの?」

 

 私はリオくんに聞いた。


「アスター王国で一番有名な童話だよ。昔から平民から貴族まで、親から子守歌代わりに聞かされるのさ。オレも、両親が生きてた時はいつも寝る時に聞いたよ」

「そうそう。僕も小さい頃、飽きるくらい母さんや兄さんから聞かされたよ」


 リオくんとジャックさんは顔を見合わせた。

 その後リオくんは一つ、咳払いをした。


「じゃあ、いくよ」



* * * * * *


 

「むかし むかし ある島の国にふたりの王さまがいました。

 王さまたちはふたごの兄弟です。

 兄王さまは とてもまじめで民思い。

 弟王さまは やさしいけどいたずら好き。

 ふたりの性格は正反対だったけど 支え合い、へいわに王国をおさめていました。

 ふたりはそんな日がずっとつづくと思っていました。



 そんなある日 ふたご王は王国のそとから来た人間をたすけます。

 王国の民たちやふたご王はけがをしていた人間を まほうで治りょうし、もてなしました。

 とおい昔は まほうは存在していないものとされていたので、人間はおどろきました。

 ふたご王の国は この世にひとつしかない、まほうの国だったのです。



 人間は自分の国にかえったあと ほかの人にまほうの国のことを話します。

 おそれおののいた人間たちは ふたご王の国に、せんそうをしかけます。


 

 たたかいがはげしくなり 民たちがしんでゆく。

 兄王さまは思いつめてしまいます。


 とうとう兄王さまは、たたかいを終わらせるために『つかってはいけない』とつたえられた黒いまほうをつかってしまいます。


 すると、どういうことでしょう。


 兄王さまは 大きな黒い竜になってしまったのです。


 てきもみかたもわからなくなってしまった竜は てきの兵士たちも、自分の国の民たちもすべて黒いほのおでやきつくしてしまいます。


 そのようすを見て 弟王さまはなみだをながし、やりで竜をつらぬきます。

 竜は元のすがたの兄王さまにもどることはなく、しんでしまいました。

 のこったものはなにもなく あたり一面はやけ野原がひろがっています。



 そして、かなしみにくれた弟王さまは 海をわたり旅をしました。

 弟王さまは旅のとちゅうで “だいせいじゃさま”に出会い、まほうをおしえました。


 やがて、ふたりはテトラきょうをおこしました。



 そう。これが 今につたえられている “だいけんじゃアストラさま”のお話なのです──」



 

* * * * * *

 



 大賢者アストラってあれか……。

 大蛸魔クラーケン退治の時に使ったレプリカの槍の元ネタか……。

 待てよ……?


「……え?オチは?これバッドエンドじゃん」

「おい。お前なんてこと言うんだよ。一応これ『王さまと竜』ってテトラ教の神話だぞ。罰当たりめ」


 私が突っ込むと、リオくんに白い目で見られた。


「ええ……?もっとこう……なんかあるじゃん。鬼ヶ島の鬼を退治してお宝ゲット!とか、クマと相撲して、勝ってしもべにして冒険に出るとかさ……。めでたしめでたしみたいな楽しいエンドじゃないの!?」

「エマさん……その話何?強盗とか危ないチンピラの話なの?」

「チンピラの話じゃないっつの。他人の国の童話を何だと思って……ねえ、ヨセフ様?」


 ジャックさんに日本昔話を強盗やチンピラの話だと誤解され、ヨセフ様に話を振る。


「俺に振られても……。おとぎ話とか、子どもの頃のそういう記憶があんまりないんだ。なんて言ったらいいのやら……。ごめんな」


 ヨセフ様は苦笑しながら、私たちを眺めている。

 

(くっ……。私の味方に引き入れようと思ったのに)




 その後も私はお絵描き大会同様、日本昔話についてリオくんとジャックさんにケチをつけられ続けたのだった。

 サラサちゃんはその様子を、多分よくわかっていないまま楽しそうにはしゃいで見ていた。





続く…

* * * * * *

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