第31話 社畜女、休暇を取る④


 アルゲス村滞在・5日目。

 夕方4時から村の祭り・山神祭りが始まった。


 ──山神祭り。

 元々アルゲス村に根付いていた土着信仰とテトラ教の信仰が融合された秋の祭りである。

 雷鳥サンダーバードはちょうどこのころ、数が増えて村にやってくるらしく、私たちが見たもの以外にもあるらしい。

 全て祭りのメインディッシュとなるそうだ。


雷鳥サンダーバードは神が身体が大きくよく食べるわしらに遣わした、恵みの使いさね。だからその感謝を神に伝える祭りなのさ」


 パトリスさんはそう話していた。



* * * * * *



 祭りは、民族衣装を着た村の長老が山神への感謝の祈りを宣言し始まった。

 サイクロプス人の長老は雷鳥サンダーバードの羽毛で作られた鮮やかな青色・緑色の衣装を纏い、非常に派手だ。

 村の広場には、石で作られた祭り用の囲いがあり、火がくべられている。


 祭りで振る舞われたものは雷鳥サンダーバードの内臓を取り、その中に麦やにんじんにパプリカのような野菜、香草、調味料などを入れた料理……“雷鳥サンダーバードの麦詰め”と呼ばれているものや山で採れたキノコと村の家畜の牛乳で作ったチーズのピザなどだった。

 今までこの村に5日間滞在して、皆すっかり元気になっている。

 リオくんもジャックさんも、いつもの食欲に戻っていた。


 私も食欲が戻りつつある。

 特に雷鳥サンダーバードの麦詰め……これが一番美味しくてたまらない。

 野菜の甘み、雷鳥サンダーバードのほぐれやすい柔らかい肉、調味料のほどよい塩味……。

 魔蛸クラーケンのタコ飯もなかなかよかったけど、これもかなり美味しい。

 何回も言ってしつこいかもしれないが、日本人には米なんだよ!

 まあこれ、米じゃなくて米代わりの麦なんだけどね……。


 そして次点でこれ!

 “雷鳥サンダーバードの肉焼き”!

 木の串に雷鳥サンダーバードの肉をぶっ刺して、塩とちょっとした香草を味付けにしたシンプルなものだけど……美味しい!

 てか、ぶっちゃけこれ日本でいう焼き鳥に近い。

 歩きながら食べられるし、片手に持っている葡萄酒と合う……。

 ……隣でヨセフ様が私が粗相しないかすごい見張ってくるんだけどね。



「おい、エマ!面白そうだからあれやってこいよ!」


 リオくんが大声で私を呼ぶ。

 指差した先には、派手な衣装を着た長老が少し高い櫓にいて、何かを持っている。

 櫓の下には村人の女性たちが沢山集まってる。


「?何をやれって?」

「“雷光の花嫁”っつー催し物!あの櫓から長老が花束を投げて、それをキャッチできた女は将来恋人ができるとか、結婚できるとかそういうのらしいぞ!」


 要するに、ブーケトスみたいなものか……。


「でもリオくん野原で見たじゃん。私運動神経ないんだよ?サイクロプス人と張り合えるわけないじゃん」

「わかんねーだろ!運なんだからさ。おら!人間ヒューマンの意地、見せてこい!」


 よくわからないことを述べられて、私は背中を押された。



* * * * * *



 “雷光の花嫁”が始まった。


 サイクロプス人の乙女たちが手を前にして花束をキャッチしようと構えている。


 というか、皆目が……ギラギラ輝いていて、獲物を狙ったチーターみたいな目つきをしている。

 本気すぎて怖いんだけど……。

 


(勝てる気がしねえー……)



 ──長老は左手に持った鈴を3回鳴らし、右手の花束を櫓の上から投げた。





続く…

* * * * * *

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