第24話 傭兵団、強盗を捕まえる③
数日ヘパイストス中を駆け回って聞き込み調査をしたが、『ほぼ骨と皮しかない強盗犯』の手掛かりは全くつかめない。
そして、本日冒険者ギルドからの依頼を受けて深夜の見回りをすることになった。
他のパーティーにも声をかけて町の見回りを依頼しているらしい。
その順番がうちの傭兵団にも回ってきた、ということだ。
* * * * * *
見回りの日は皆、昼夜逆転生活になってしまった。
朝・昼はぐっすり寝て、夜勤に備える。
いつもの朝昼働いて、夜は寝るという生活と違うのでなんだか調子が狂い、肩こりなどがちょっとある。
とりあえず私たちは、高価なものが売ってそうなお店がある場所を中心に見回ることにした。
化粧品店、服屋、宝石店……。
そして今は時計屋に向かおうとした。
「ねえ……本当にこの特徴で合ってるのかなあ……」
ジャックさんが紙に描かれたモンタージュの絵を見て訝しむ。
私は聞き返した。
「どういうこと?」
「あ、いや……嘘は言ってるとは思わないけど、あの店主のおじいさんがさ、気が動転して勘違いしちゃってるとかないかなあ……」
「なーるほどね……」
そういうことは確かにありえそうだ。
人間、予想外のことにテンパってしまった時、全然違うものを勘違いしてしまうことはある。
「だってさ、骨と皮しかない人間なんて目立つでしょう?なんで昼間には出てこないんだろうね」
ヘパイストスでそんな人間を見かけたら目立つよなあ。
「まあまあ。そんなヒョロガリ人間ならオレたちで倒せるっしょ。ジャックもヨセフも力あるんだしさ」
「油断するな、リオ。この間の店主の噛み跡の傷、見ただろう」
リオくんをヨセフ様が諫めた。
この間見た、宝石店の店主の噛み跡の傷。
骨が見えて抉れていた。
店主が長期療養するのも無理はない。
というか、あの抉れた肉は治療を続けてたとして、無事に細胞再生して元に戻るんだろうか……。
夜も暑い日が続く天気だったのに、今日の夜は涼しく、ちょっと肌寒いくらいだ。
少し強い風が私たちの間に吹く。
「……なんだ。あれ」
ヨセフ様が急に立ち止まった。
時計屋の前にいる、異様な歩き方の人間。
長髪を振り乱し、小刻みに揺れている。
手を無気力にぶらぶらとさせて、足を引きずっているような歩き方──。
その人間のシルエットは一般的な人間の肉付きではない。
まさに、骨と皮。
「あいつ、強盗だ!」
リオくんが叫んで放った矢が強盗犯の腕に刺さった。
狙いどおりだ。
ひるんだところを私たちで取り押さえる手筈だ。
「エマ、どこかに隠れてて」
「わかりました!皆、気を付けて!私も、何かあったらレクシコンで指示するから!」
私はヨセフ様に言われた通り、近くの物陰に隠れながらレクシコンのモニター画面を開いた。
しかし、強盗犯は腕に矢を受けても、何故かひるまない。
もしかして矢が刺さったと思った箇所は、服の繊維にだけ当たったのか?
そんなことがあるのか……?
強盗犯がこちらに気づいた。
その顔に私たちは恐怖した。
ボロ布のような服を着て、ぼさぼさの長髪。
その目は虚ろで、焦点が合っていない。
よだれをボタボタ垂れ流し、何かぶつぶつ呟いている。
性別はおそらく男。
全て、宝石店の店主の証言どおりだ。
「ム……むゲ、んソ……ウ……。む……ゲン……そ……く、れ……」
むげんそう?何のことだろう?
強盗犯はずっと“むげんそう”という意味不明な言葉を繰り返す。
すかさず、ジャックさんが棍棒を思い切り強盗にスイングする。
あの攻撃を受けたら、大抵の人間は気絶する。
最悪、打ち所が悪かったら内臓破裂レベルの攻撃だ。
──ズシャアアッ!
棍棒のスイングにより、勢いよく強盗犯は空中に投げ出され、地面に叩きつけられる。
強盗犯の動きが止まった。
「やった!捕まえようぜ!」
リオくんが麻縄を手にして、近づこうとする。
その時だった。
「リオ!危ない!」
ジャックさんが叫ぶ。
リオくんが持っていた麻縄が、何かにバシッとはじかれた。
「な、なに……」
強盗犯の身体が変化する。
──ぐじゅっ。ぐじゅ、ぐじゅっ。
不快な音とともに粘膜のようなピンク色の細長い触手が、腹部から何本も生えてきた。
麻縄をはじいたのはあの中のうちのどれかだろう。
あの触手に捕まり、首でも噛まれたら……。
数日前の宝石店の店主の傷のように……。
(あれに捕まったら、あの店主の怪我みたいに……。いや、それ以上になるかもしれない!)
私はすかさず、レクシコンの通信機能で皆に指示を出す。
「あの強盗から距離をとって!無理に捕まえようとしないで!あれに捕まったら、宝石屋のおじいさんみたいになる!」
続く…
(2025年8月18日 一部加筆修正)
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