ケーキと紅茶がお酒とおつまみに変わった私たち
「スズーー!」
「杏奈!」
杏奈とタケルくんが到着したのは、おかわりを注文しようかとしていたところ。
「何この髪!可愛い!」
「杏奈だ〜!」
「スズ全然ラインくれないじゃん!」
「杏奈いい匂ーーい」
「まぁまぁ座んなよ二人とも」
会ったのはお盆以来。
ちょっとだけ髪がのびて大人っぽくなった杏奈。
「うわ何?お前ビールなんか飲んでんの?」
「あ、英介おひさ
最近会わないね〜」
「これはスズのビール」
「「え」」
「あ、二人ともなに飲む〜
私ビールおかわりにしよ〜っと」
「「えぇぇ?!」」
なに?
「スズが大人になってる…」
「世界一似合わないのなんで…」
なんか懐かしい。
よく4人で遊んだっけな〜
光輝の事、相談に乗ってもらったりしてさ。
そうだ
私、報告しなきゃいけないの
「あ、ねぇ聞いてあのね私ね」
「待って…」
ニッコニコだった杏奈が、急に真顔で目を見開いて、落とした視線の先は私の手。
そっと左手を持ち上げた。
「スズこれ…」
「あのね」
「朝霧さん…?」
なにか言う前に、杏奈の目には涙が溜まっていた。
「光輝に会ったの…」
杏奈が涙をこぼした。
「もう終った事だと思ってたのに…」
「良かったねスズ!」
色々話そうと思ったのに
杏奈は私を抱きしめ
私以上に泣いていた。
「良かった…!」
何を言うまでもなく
言い訳がましく経緯を話さなくても
杏奈はよかったと何度も言った。
光輝に出会って、告白して振られて
追いかけて追いかけて
やっと両思いになって
幸せでたまらなかった時も
フラれてどん底に落ちたときも
全部を知ってる杏奈は
本気で泣いてくれた。
なによりも
あの頃、ほんの少しの間しか付けていなかったこの指輪を見て、杏奈が光輝だとわかったことが
私には涙を流させる要素だった。
「杏奈」
私を抱きしめて泣いていた杏奈は、タケルくんが呼んでようやく顔を上げた。
「よかったねスズちゃん」
タケルくんが杏奈を座らせ、だから私も座った。
英介が杏奈におしぼりを渡すと、杏奈は涙を拭いてやっと泣き止んだ。
「とりあえずビール…」
「はいはい」
「お前もか」
「私もビールおかわり」
「何でそんな事になってんの!
一語一句漏らさず言いなさい!」
お酒を飲みながら
「秋葉原で偶然ね」
から
「海外永久になったの」まで話すと
「や、海外永久ってなによ」
「そんなんあるか?」
「帰ってこれないって事はないんじゃない?」
「ブラック過ぎるだろそれ」
「騙されてるじゃん」
あれ?
そうなの?
「ここか〜
スズがめっっっちゃ美味しかったって
楽しそうだった居酒屋は」
「スズちゃんおすすめ何?」
「なんかね〜
お好み焼きみたいなのあったんだけどな〜」
「お好み焼き?」
タケルくんと杏奈がメニューを見る。
「俺はもっかいレモンサワー」
「スズちゃんに負けたくないから俺はビールで」
「でもさ、結婚ってホントかな」
「「「……」」」
実感は皆無
だって、
結婚しよう→指輪→飛行機の時間
それからまともに電話で話す事も出来てないからわからない。
「え、結婚?なにいってんの」
「またまたぁ〜」
「まだ先の話だろ」
「結婚しようって言われたの!」
シーーーーーーーン
「「「えぇ?!?!?!」」」
でもあれは
永遠の約束的なやつだったんだよね
わかってる
リアルなやつじゃない
だって私はまだハタチの大学生
「や、マジなやつだと思う」
「必死だな」
「でも実際無理じゃん
電話も出来ないくらい遠いんだよ?
これ遠距離恋愛ていうか文通なんだけど
いつ会えるの?卒業まで文通?」
ゴクゴクゴク
「昭和か」
「健全だねスズちゃん」アハハ
「俺またレモンサワーにしよ」
「私ビールおかわり」
「軟骨唐揚げ~」
「たくちゃんちのエビグラタン食べてみたい」
「ネーミングセンスおかしくない?」
「行けばいいじゃん」
「「「え?」」」
杏奈が私たちのガヤガヤを遮る。
「春休み、アルゼンチン行けばいいじゃん」
「え…」
「「それな」」アハハハ
「それだーー!」
「なんで思いつかないのこの子は」
「杏奈頭いい!春休みなんてすぐじゃん!
え、待ってアルゼンチンってどうやって行くの?
パスポート作って飛行機乗って…
空港からどうやって光輝の家に行くの?」
「その前に英語だな」
「スズが1人で地球の裏側に行くのは
不可能な気がする」
「心配でならない」
なんだろう
こうやって、杏奈とタケルくんと英介が心配を焼いてくれる。
ケーキと紅茶だったのが、お酒とおつまみになって。
そのうち、お茶と羊羹にでもなるのかな。
そうなってほしいな。
いや、いつまで心配かけるつもりなの私。
「スズが一番のりか~」
「いやいや、違うって
あれは告白の延長というか現実話じゃないって」
「まぁそうだよな
現実的に考えて大学生だし」
おかわりの飲み物やグラタンが届いたとこで、私はトイレに立った。
週末だからお店は満席みたい。
いっぱい人がいた。
店員さんが「いらっしゃいませ」って大きな声で言う度に、何度もつられて言いそうになった。
使用中になっていたから少し待って、トイレを済ませ席に戻った。
「え、何?」
杏奈がニヤニヤする。
「英介なにむくれてんの?」
「スズちゃんはいはい持って」
タケルくんが満タンになったジョッキを私に持たせ、英介にもレモンサワーを持たせる。
「乾杯するよ」
「え、なんで?また?」
二度目の乾杯。
「せーの」
「「結婚おめでと~~!」」「ふん」
え?
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