第23話
23話
冒険者ギルド、会議室。
ワシとアビーはその一角に座っておる。
隣にはエルミナ殿。
対面には、先程戦った四人が腰掛けておる。
襲撃者の正体は、なんと全員が小娘じゃった。
「それで、どこまで話が進んでる?」
上座に座るギルドマスター——ギデオンがワシの顔を見る。
「ほう?お主の言う話とは、突然斬りつけることを言うのか?」
ワシの嫌味に、エルミナ殿が慌てて口を挟んだ。
「し、師匠、怒らないでくれ。師匠の力を試すように言ったのは私なんだ」
「カカカ。別に怒ってはおらん。あんなの襲われたうちに入らんからのう」
ワシの言葉に、槍の者——銀白髪娘が立ち上がった。
「は?あんた、ケンカ売ってんの!?」
「止めろ、ヴィオラ。私の師匠に失礼な口を聞くんじゃない」
「なんでよ!なんでこんなガキに、エルミナ姐さんが尻尾振らなきゃならないのよ!」
「尻尾を振っているわけではない。敬意を示しているのだ。——師匠の強さと優しさがまだわからんのか?お前が怪我を負ってないのはどうしてだと思う? なぜそれを理解しようとしない?」
エルミナの言葉に槍娘——ヴィオラが口ごもる。
「あのさぁ、話が進まないし、ヴィオっちは黙っててくんないかな?」
弓の者——氷青髪の娘が苛立ち気味にヴィオラを睨みつけた。
「も、もう止めようよ。わ、わたし達の完敗だったじゃない」
盾の者——黒髪の巨漢娘がオドオドと、言った。
「わたくしもセレーヌと同意見ですわ。四人掛かりで突然襲いかかって、しかも負けた分際で突っかかるだなんて、どうかしてますわ」
杖の者——白金髪娘が呆れ顔で言った。
「まぁよい。話があるならさっさとするがよい」
「あんた、何様なのよ!」
「ヴィオラ!貴様——」
憤慨するエルミナ殿を手で制して、言った。
「——ヴィオラ、と言ったかな?
お主は理解していないようじゃから説明するが、ワシは望んでここにいるわけではない。
弟子であるエルミナ殿の顔を立てただけじゃ。
聞いておれば、お主はエルミナ殿に一目置いておるようじゃが、お主の行動はエルミナ殿の顔に泥を塗るも同じじゃぞ?」
「か、かといって、あんたの態度は——」
「次に、お主が口を挟んだら、ワシは帰る。——ギデオン、続けるがよい」
ここまで言うと、流石にヴィオラとやらは黙った。
椅子に座ると、腕を組み、ワシから顔を背ける。
カカカ。
若いのう。
じゃが、最低限の礼儀は守らねばな。
「コホン。では説明しよう。レイヴァリア君はダリス・スレイドを覚えているかね?」
無言で頷いた。
ダリスと言えば、ギルド入会試験の相手だったキモ男じゃな。
悪さをせんように、股間を潰したはずじゃが。
「そのダリスが失踪した。君に叩きのめされたその日にだ。——いや、そのことについて言及する気はない。奴の素行を調べたら、とんでもない証拠が次々に見つかってな。あのままでは、間違いなく縛り首になるはずだった。それを恐れて逃亡したんだろう」
キモ男が失踪、か。
半神の力を使って自白させたのが効いたのじゃろう。
って言うか、あんな悪党を取り逃すとは、なんと情けない組織じゃ。
「コホン。続けるぞ? ダリスがいた『ブラッドハウンド』には、Bランクに降格の上、3ヶ月の活動禁止命令を下した。ただ『ブラッドハウンド』は、我が冒険者ギルドで唯一のAランクだったんだ」
「つまり、ワシのせいで実力のある奴らが使えなくなったから、責任を取れというわけじゃな」
「それは——」
「ここからは、私に説明させてくれ」
エルミナ殿がギデオンを制止して、言った。
「師匠、高ランクの冒険者には特権が与えられるんだ。特にAランクになると素行が悪くても逮捕も、捜査すらできない。犯罪を自白でもしない限りはな。しかし、そんなことは普通ありえない」
「……ワシは知らん」
「いや、そのことはいいんだ。
言いたいことは、我らとて、好きでアイツラをのさばらせていたわけではない、ということだ。
街の警備をする立場からしても、あいつらに特権を与えるのはどうかと思っていたしな。
ただし、奴らの実力は確かだった。
その実力者がいなくなった結果、高ランクのクエストを受けるものがいなくなった」
「話が見えてきたのう」
「お察しの通り——師匠には高ランクのクエストを、こいつら『スノーレギンス』と一緒にこなしてもらいたいんだ」
「それは強制なのかの?」
「強制——ではない。だが、頼れるのが師匠しかいないのだ。騎士団である私は街の防衛と治安維持にしか手をだせん。街を、周囲の村を守るために手を貸してもらえないだろうか?」
我が弟子の表情に余裕はない。
それほど追い詰められているのじゃろう。
さて、困った。
ワシには大事な宿屋と焼菓子店の仕事がある。
ようやく馴染んできた『普通の生活』なのじゃ。
簡単に手放すわけにはいかん。
どうしたものかと思案するワシを、不安そうなエルミナ殿とギデオンが見つめておる。
はぁ……仕方あるまい。
「……やり方は任せてもらうぞ?」
「もちろんだ!」
即答するギデオンに向け、ニヤリと笑う。
「言ったな?では、好きにやらせてもらうとしよう」
『スノーレギオン』の小娘共を笑顔のまま見つめた。
「な、なによ?」
視線に気づいた小娘共が身震いする。
本能が己の恐ろしい未来を予見したのじゃろう。
「これからよろしくな、小娘共。——逃げるでないぞ?」
コイツラには地獄を見てもらう。
ワシの普通の生活を守るためじゃ。
仕方あるまい。
カカ。
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