ネクレイターズ2
超絶不謹慎作家コウキシン
第1話 炎陽
光る人「アナタ。起きて。」
ベッカー「エレナ。おはよう。ここは?」
見渡す限り、上も下もない真っ白な空間だった。
光る人。
それがなぜだかベッカーには亡き妻だと思えた。
声が妻のだからか?
いや、俺は一目この人を見た瞬間から、そう感じてた。
エレナ「夢と幽世の交わる所?ですか?よくわかりませんけど。」
俺は一度ココに来たことがあるような?
エレナ「すぐに戻りましたね、あの時は。」
君は形はどうした?
エレナ「必要なら、アナタが作ってくださいよ?」
ベッカーは亡き妻の姿を思い出した。
髪は茶色、長さはボブカット。
輪郭は卵みたいで、眉はすらっとくっきりしてて。
エレナ「ふんふん。」
鼻はすらっとした小鼻で、下唇がぷっくりしてて。
エレナ「それから?」
耳たぶはぷっくりしてて、目はパッチリでクリっとしてた。
エレナ「それが私ですか?」
そう、かわいいんだ。世界で一番。
エレナが笑う。懐かしい。心がやすまる。
とても好きだ。誰よりも何よりも。
エレナ「アナタは何時こちらにいらっしゃるの?」
戦争をどうにかして、子供の安全を確保したらかなぁ?
エレナ「うそ。もう、あの子は大丈夫。そう思ってるんじゃなくて?」
そうかも知れない。最近、現し世、生への執着が減ったのを感じる。
エレナ「だから、アナタは私に会いに来た。」
なるほどなぁ……
リュプケ「ベッカー。おい、ベッカーったら。」
ベッカー「また、戻ってきちまった……。」
エレミア「なんのことですか?」
いや、こっちの話さ。
ベッカーはベッドから起き上がった。オーバーホールの済んだ体は以前と変わらない、
変わったのは、以前とは違う、どこかの誰かの体の一部をつなぎ合わせたってところだろうか?
「いずれ馴染む。」
魔女の家。今回はお使いもない、ゆっくりできそうだ。
リュプケ「おいおい、暇なら薪でも割っててくれよ。」
えぇ……
エレミア「我々の性分は、リュプケ様にお仕えすることです。世間のことやドンパチをどうこうするのはホントはどうでもいいんですよ。」
一応、様付けしたほうがいいのだろうか。
リュプケ「お前はしなくていいぞ、堅っ苦しい。そんな奴でもないだろ?」
確かに、魔法剣の師匠、カーラにも様付けはしてなかった、魔女と対等に話をする。上も下もない。昔からそうだった。
子供の頃、森で迷って泣いてたところに出会ったあの人もそうだ。
ベッカーは幼い日の事を思い出した。
黄色い目の魔女「小僧、何処か痛むのか?」
小ベッカー「ううん、違うんだ、帰れなくて。」
黄色い目の魔女「そうか、お前のうちはあっちだ、大人が探しにも来てるぞ?」
小ベッカー「分かった、ありがとう。今度、お礼に来るよ。」
黄色い目の魔女「ケケケ。そうか、そうか。期待しておこう。」
小ベッカー「お姉さんの名前は?」
名前、覚えてない。
欠落してる。捜索隊にも話したと思うんだけどなぁ?
ベッカーは家の外に置いてある薪を立てかけてあった斧で割り始めた。
時折、そばをメイド服の女性のネクロイドが通る。
俺にも制服とかあるのか?ネクロイドになってこの方、ずっと軍の標準服だ。
ベッカー「今度、聞いてみるか。あ、家から持ってくるのもいいな。」
コーン、コーン……
森に薪を割る音が響いている。
服を取りに実家に戻る。
後妻のマリサと息子のジョンが何やらよそよそしい。
大学生と胸のデカい女性がひとつ屋根の下で暮らしてるんだ、何もない方がおかしい。
まぁ、それで良いのかもしれない。自分もどこかでそうなることを期待してた。生ある者同士がくっつくのが自然の摂理だろう。
ベッカー『俺はもう自然の摂理から逸脱してるし。』
荷物を取って生まれ育った村を一望する。
「これが最後かもなぁ……」
妻の墓参り。
ベッカー「君はもうココにはいないんだろ?エレナ。」
チャンネル?ではありますけどね?
遠くからエレナの声がする。墓(ここ)とは違う別の、もっと遠くから。
西の雲が暗い。一雨来るのかもしれない、ベッカーはリュプケの家に、森に帰っていった。
「いたぞ。やつだ。」
木の枝に器用に立つ男たちがベッカーの後を追っていく。木々の上を軽やかに飛び移りながら。
黒い帝国の軍服に身を包み、ガスマスクに帽子を深々と被った出で立ち。特務部隊の構成員。
グワン。
帝国軍人A「結界だ。」
帝国軍人B「魔女の領域か。我々だけでは無理だ。エウレカを呼べ。」
その夜、
リュプケは夜遅くまで、資料を漁っていた。
ベッカーも遠巻きにそれを見ていた。
リュプケ「気になるのか?お前の戦闘データを編集してるのさ。」
ベッカー「ドラゴンドライブについて?」
リュプケ「それも含めてだよ。うーん、個人の能力による所が大きすぎるんだよなぁ。」
ベッカー「?」
リュプケ「褒めてんだよ、もっと喜べ。お前はワンオフの商品だ。他の魔女にくれてやるのは惜しい。」
ベッカー「そりゃどうも。」
リュプケ「エレミアもそうだが、ゴースト作成では格闘スキルは難しそうだ。その筋の魂を使わないとな。」
爆音。
家の何処かでネクロメイド達の悲鳴が上がる。
ベッカー「敵襲?!」
リュプケ「結界は生きてたはずだ!どうして!?」
ベッカーは光の剣を腰に刺して、急いで外に出る。
エレミア「遅い!」
家の外は、一面、火の手が上がる中、エレミアがロンパイアを構えて、黒尽くめの軍服の男と対峙していた。
ベッカー「帝国軍!?」
ベッカーは男たちを見た。男たちもベッカーを見つけて集まってくる。
ベッカー「コイツラ、帝国軍特殊部隊、通称フクロウだ。」
エレミア「フクロウ?」
フクロウA「エウレカはどこだ?」
フクロウB「女を切り刻んでます。」
フクロウA「やめさせろ。ここに呼べ。」
エレミア「お前達、何が狙いだ。」エレミアの口からリュプケの声がする。
フクロウA「魔女だ。気を抜くな。」
そこで一陣の風が舞った。ベッカーはとっさに光の剣を抜いた。
エウレカ「おっと、危ない。それ、私のドレス(装甲)も斬っちゃうんでしょ?」
風のごとく空を舞う白いワンピースの少女が一人ふわっとフクロウ達の真ん中に降り立った。
フクロウA「目的はその男だ。魔女には関係ない。」
エレミア(リュプケ)「そうはいかない。コイツは私の商品だ。非売品だぞ?力付くでも売ってやるもんか。」
ゾン!
エレミアの右手から時空割断魔法が放たれる。
横に一閃。エウレカはフワリと避けるが、
フクロウ達は腰から胴体と足に割られた。反動でエレミアの右腕が吹き飛ぶ。
エレミア「あ、あらら、取れちゃった。」
フクロウ「くそう、一筋縄ではいかないぞ。」
エウレカ「どいてなさいな。クズども。」
シュッ!
エウレカから何か伸びる。
スパン!
エレミアの首が中を舞う。
どっ!どっ!……コロコロ
バウンドして後に転がっていく。
ベッカー「!」
エウレカ「あら、死んじゃったわね。もっと遊べるかと思ったのに。」
ベッカーの体から赤いオーラが放たれる。
フクロウ「コレだ。データを取れ。」
残った男たちがカメラを回す。
リュプケ「おい、直したばかりだぞ?」
頭の中に魔女の声がする。
ここでやらないと。
ドン!ベッカーが大地を蹴る。
エウレカ「なるほど、早いわね。」
フワリ
ベッカーの一撃はかわされた。
ベッカー「何?!」
エウレカ「けど、だめよ。優雅さがないもの。」
シュッ!
ベッカー「うお!」
エウレカの背中の刃の触腕からの高速の一撃。間一髪で避けるが風圧で着ていた服が裂ける。
フクロウ「十分だ。撤収。」
エウレカ「私は、まだ帰らない。コイツと遊ぶのよ。」
少女は狂気じみた笑みを浮かべる。
フクロウ「餌で釣れ、早くしろ。」
フクロウ達はエウレカに何かを与えた。
ベッカー「人形?」
ウフフと笑うとエウレカ共々フクロウはその場から消えるように姿を消した。
リュプケ「なんてこった!ベッカー先ずは消火だ、急げ。資料が燃えちまう。」
ベッカーは腹の中に何かが揺らめくのを感じた。
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