第12話
【Ⅰ】
12
ショウネン:「普通の人には難しい……でしょ。
僕は改めて〔人〕って何だろうと………」
キム:「自分への問いかけが多くなったってことよね。
思春期だから、特に君みたいな天才には有りがちなことかもね……
〔人〕を知りたければ『小説』を読むことも必要よ。
偏らずいろんなタイプのものをね。
しかも速読で筋だけ追うんじゃ意味無いわ。
ゆっくりじっくり味わうの。
文章の中に自分を置いて、登場する人、言葉、場所、景色、空気、時間、温度……些細なことでも素通りせず味わうの。
時には同化する。 分析する。 批判もする。
もちろん共感したり同情したり…
読み終える頃には作者の意図が見えてくるわ。
いろいろ読んでいると、書き連ねている内容が決してそのままを伝えようとしているわけじゃ無い作品にも出会う筈よ。
数をこなすうちに、読者に対して本当は何を伝えようとしているのかが理解できるようになる。
そのままを受け取っていいのか、全く逆のことを示唆するための反面教師的な表現なのか……」
ショウネン:「そうやって自分以外の様々なタイプの人や人生を知っていく……」
キム「えぇ、できれば知るだけでなく理解を深める過程もあるとベストね。
だけど、理解したからって悪いことを真似しちゃダメよ。
理解はしても必ず自分の視線を失わないことね。
無闇にハマらない! これ原則!」
ショウネン:「その調整はけっこう難しいかもしれませんね………」
キム:「そうね……
実は明日から中間テストだし、来週からは演劇発表会に向けて休日も部活入れてるから、暫く私ここへ来られないんだ。
発表会は来月3日だから、それが済んだらまた此処でゆっくりお話しない?」
ショウネン:「はい!」
キム:「そうだ!
良かったら発表会見に来ない?!
演劇もきっと君の役に立つと思うわ」
少年は目を輝かせた。
ショウネン:「はい!」
キムは発表会の場所と時間を少年に伝え、荷物をまとめた。
キム:「アイムくんに必要なのは経験よ! いろんな経験!
経験に貪欲になって!
音楽や映画や遊びも!
もちろん人との関わりも!
味わって!味わって!味わって!
テストに備えなきゃならないから、今日は退散するわ。
じゃ!」
そう言い放ち後ろ向きで手を振るキムは、既に出口へと歩いていた。
少年の生き返った虹色の眼差しに見送られながら。
つづく
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