金曜日の肖像

誰かの何かだったもの

出勤前の孤独

朝の冷たい空気が肺を満たす。まだ薄暗く、街灯の黄色い光が静かに揺れている。俺はいつもの駅前ロータリーに立ち尽くしていた。人影はまばらで、みんながまだ目覚めきらない時間帯。だが俺は今日もここにいる。仕事がある限り、朝はいつも孤独だ。


通勤ラッシュの波を避けるように、歩道の端でスマホを覗く。通知はたくさんあるが、どれも心に響かない。昨日も今日も、そして明日も変わらないだろう日常がそこにあるだけだ。電車が来る遠くの音が聞こえ始めると、少しだけ心がざわつく。


俺の周りで動く人々も皆それぞれの世界を抱えている。でも彼らは誰も俺のことを知らないし、俺も彼らのことを知らない。すれ違う視線は交わることなく、ただ通り過ぎていく。そんな無数の孤独が混ざり合って、今のこの時間を形作っている。


仕事場では上司の指示に追われ、同僚との表面的な会話を繰り返す。求められるのは成果だけで、人間らしい感情は切り捨てられる。帰り道には疲労と虚無感が体を重くするだけだ。けれど、ここに立つこの早朝の時間だけは、そんな束縛から一時的に解放されている気がする。


薄れゆく夜の静寂の中、俺は自分自身と向き合う。何もかもがうまくいかない毎日。でも、この孤独を受け入れることで、少しだけ強くなれる気がする。電車の音が近づく。もうすぐ今日という一日が始まる。


誰にも見られず、ただ静かにここにいること。それが俺の出勤前の孤独だ。

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