第70話 自分語り

 記憶を引き継いだ上でのやり直し。「アザー・キャンディー」は、当然誰にもバレることなく、あたしは絶対にバレないズルを続けた。


 ――と、同時にこの魔法について自分なりの精査を繰り返した。


 具体的には、発動の条件、戻れる時間、使用の負荷や代償……、といったところだ。



 発動の方法・条件はとても簡単なものだった。あたしが明確に「戻りたい、やり直したい」と強く思い込めば次の瞬間には時が戻っているんだ。


 ただ、具体的に「この瞬間に戻りたい」と思うには、明確にその事象を思い浮かべ、記憶を呼び起こさないといけない。



 だから、



 今でもその癖は消えずに残っている。そんなあたしだから、自分の見たできごとや時系列や人の言った台詞なんかは必要以上に記憶していたりするんだ。


 次に戻れる時間について――、これは何度か試行錯誤を繰り返し、時間制限があることに気付いた。


 それは、きっかり1日――、すなわち24時間が限界なんだ。


 一度巻き戻った時点から再度戻ろうとしてもアザー・キャンディーは発動しない。そして、一度魔法を使った時と同じ時点までやって来るとまた使えるようになった。


 あたしはこの最初に魔法を使った時点を「起点」と呼んだ。起点から最長24時間までは時間を戻ることが可能。ただし、戻された時間内でさらに巻き戻ることは不可能。

 ただ、同じ起点からは何度も時間を戻せるので、同じ事象を何度も何度も繰り返すことは可能なのだ。



 使用の負荷に関しては……、拍子抜けするほどに少なかった。正確には、時間を戻すとアザー・キャンディーを使う前の状態のあたしに戻るんだ。

 だから、実質魔力の消費は「0」と言っても過言じゃない。けれど、そこから連発はできないから魔力はあっても戻れる時間の限りは変わらない。


 「アザー・キャンディー」を使うことでの代償――、これに関しては今でもよくわかっていない。

 頭のできがそれほどよくないあたしでも理解した。これはホントに犯罪的に、反則的に、悪魔的に――、強力な魔法だ。

 こんな魔法をあたしなんかが使い放題なんてどうかしてる。けれど、今のところその代償らしい代償をあたしは払っていない。


 実は将来的な寿命を削ってたりしたらショックだけど……、アザー・キャンディーを使えるようになってからあたしは、それこそホントに下らないことも含めて何度も何度もこの魔法を使っている。


 寿命が減ったりするんだったら、今にもぽっくり逝ってもおかしくないくらい使っている気がするんだ。


 だから、今のところの結論として「アザー・キャンディー」に代償はない。



 でも……、どんな力だってようは、使いよう。扱う術者、ようはあたしがしっかりしていなかったら思わぬ災厄を招いてしまうんだ。


 この過ぎたる魔法の力であたしは――、一番の大親友を失ったのだから。

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