料理と、オムライスと、目標「料理男子」
幼馴染の
「……」
「……」
キッチンにて。俺が頑張ってはじめてのオムライスを作っている最中、後ろをついてくる人影がひとつ……。
「……」
そして、無言ながらもチャカチャカと爪がフローリングに当たる音が響き、存在を主張するもう片方。
「あの、席に座っててくれていいんだけど」
「いいえ、結構です」
「ええ……」
例によって例の如く。キッチンで調理中の俺を見守るように、幼馴染の紗雪と飼い犬のくるみがうろちょろと近くを行ったり来たりしているのだ。
くるみのほうは、俺がいなくなるとついて歩くのでいつものことだが……って、まさか! くるみがついて歩いているから紗雪も……?
「見られてるとやりづらいっていうか……」
「なるほど! では影ながら応援しますね!」
「そ、そう……影ながらね。影ながら……ならいいかな」
「よしっ」
ガッツポーズをして紗雪はキッチンから外に出て行った。やっとひと息ついて、目の前の料理に集中し始める、まだまだ下手だが、目標だったオムライスに初挑戦できるくらいにはなっている。今日ここで成功させて、紗雪に美味しい! と言ってもらえれば俺としては大満足である。
「えーっと、あとは……」
チラッとなにかが見えて振り返る。
そこには、キッチンの外からこちらを覗き込む紗雪とくるみの姿。よく見れば紗雪のほうはなにやら光るペンライトのようなものを持って……って、なにやってるんだこいつ。
「ペンライト振るのはやめろ」
「推しの晴れ舞台なのにですか!?」
「やめて……めっちゃ恥ずかしい」
当たり前のように推しだと言われて顔を覆う。顔が熱くなるのが分かった。恥ずかしい……し、照れる。照れてしまう自分にも、なんか「おいおい」って気持ちになる。いたたまれない。
「大人しく席に座ってて待ってて。お願いだから」
「はーい……」
不満そうに紗雪は返事をして、くるみをしっかりと抱きかかえてリビングに引っ込んでいった。
「ペンライト置いてくなよ……」
あとで食事を運ぶついでにペンライトも運んだら、「?」って顔で見上げられた。なんでだよ! お前の忘れ物だろ!! 存在を忘れてんじゃないよ!!
なお、オムライスはちゃんと美味しいと言ってもらえたのだった。
料理上手な男子は格好いい。そのはずだ。美味しいと笑う紗雪の顔を見て、俺は密かにやる気を燃やすのだった。
次はなにを作ろう? 次のことを考えるのすら、楽しみだ。
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