第6話 ここはとても素敵な世界ですわ。

「クリスタル、もう君を放さない。」

「シャンパーニュ様。」


そうだシャンパーニュは真面目な紳士であった。

婚約者であろうとも手も握らない堅物であった。

だが今のシャンパーニュは如何したのだ? 

とうとう理性緒が切れたのか? 


「あの目はまるで、まるで、」

「前世の息子のようですわ。」

「そうだ、前世のクリスタル嬢を猛愛していた変態息子の目だ。」


そうだあの目はクリスタル嬢の写真を見詰める目だ。

まさかそんな事があるのか? 


だがシャンパーニュは先程前世からクリスタル嬢を愛していると言っておった。


まさか、シャンパーニュは儂の前世の。

ん? 今王妃もシャンパーニュの事をと言わなかったか?


「王妃よ、今其方シャンパーニュを前世の息子のようだと言わなかったか? 」

「ええ、言いましたわ。あなた。」


なんと言うことだ、まさか王妃よ其方は儂の前世の妻なのか? 


「王妃よ、其方は。」

「ふふふっ。」


なんと言うことだ、王妃が儂の前世の妻だったのか。

なんと言う幸運、なんと言う幸せ。これが運命の糸と言う者なのか!! 

儂は妃を抱き締めた。


「儂は儂は、其方に会えて嬉しいぞ。」

「わたくしもですわ、あなた。」


シャイなあなたが人前でこれ程大胆に抱き締めてくれるなんて。

本当に喜んでくれているのですね。

わたくしも、あなたに会えてとても嬉しいですわ。



「何をやってますの、お父様、お母様!! このままでは、あの変態がクリスタル嬢を拉致監禁してしまいますわ。わたくしの騎士よ、お兄様を捕まえて!! 」


「はい、ロゼッタ様!! 」


あら、この声は。


「ロゼッタ? 其方、如何してここに? 」


娘のロゼッタですわ。

陛下の言うとおり如何してここに? 

あなたはディザート国で第二王子と婚約式をしている筈ではなかったかしら。


「そんな事は後よ!! あのがクリスタル嬢を連れて逃げるわ!! 」


まあ、変態兄貴ですって? 

それは息子に投げ掛けていた言葉ですわ。


「乙女ゲームのバージョン②を思い出したの、急いで帰って来ましたのよ。まさか、シャンパーニュお兄様が変態兄貴の生まれ変わりだなんて。」


「王妃よ、今ロゼッタは乙女ゲームと言わなかったか? 」

「ええ、言いましたわ。シャンパーニュの事も、変態兄貴とも。」

「それはつまり、そう言う事なのか? 」

「ええ、そう言うことでしょう。」


つまりシャンパーニュは儂の前世の息子で、ロゼッタも儂の前世の娘だと言うのか。


家族揃って、乙女ゲームの世界に家族として転生をしまったようなのですね。


「もしかしたらこれは、変態息子の怨念なのかも知れませんわ。」

「うむ、そうかもしれん。」


「お父様、お母様!! 変態兄貴が逃げますわ!! 」


「む、それはいかん。近衛騎士よ、シャンパーニュを捕まえろ!! 」

「ええ、逃がしては一大事ですわ。ついでにそこの楽しい令嬢達も捕まえなさい。」


「「「「はっ!! 」」」」



「ええい!! 俺の愛の邪魔をするな!! 」

「落ち着いて下さい、王太子殿下!! 」

「俺はもう、王太子ではない!! 愛の奴隷だ!! 」


何を言っておるこの馬鹿息子。


「お兄様、クリスタル嬢をお放しになって。」

「うるさい、クリスタルは俺のものだ。誰にも渡さない!! 」


さすがシャンパーニュですわ。

クリスタル嬢を抱えてあの動き。正に変態の極みですわ。


「きゃーー、来ないで!! 私は、悪くないわ!! 」


「そうだ、カロン令嬢は悪くない。」


「「悪いのはクリスタルだ。」」


あら、まあ。

こっちも凄いですわ。逃げられませんわよ、楽しい令嬢さん。


「ふふふっ。」

なんと恐ろしい、この状況で妻が笑っておるぞ。


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