銅貨物語
RYO
第1話
タッタッタッタッ
誰かが走ってくる音がする。
柱の影に縮こまって身を隠しつつ目を凝らすと、足音の主らしき人影が現れた。
灯に照らされて金色の長い髪をしているのが見える。
どうやら女性冒険者のようだ。
追われているらしい。
大きめのフロアだが、ここは地下2階。
しかも行き止まりだ。
案の定逃走を諦め、足を止めて迎え撃つ覚悟に見える。
追手の姿も現れた。
3つ。
遠目だが子供ほどの小さな影。
小柄な体格に不釣り合いとも言える、頭に1mはゆうに超える直立したタケノコのような突起・・この異様な風体はゴブリンだ。
影が交差する。
一瞬の影の揺らぎの後、静寂に包まれた一つの影だけが立っていた。
ゴブリンだ。
もちろん隠れてやり過ごす。
5分ほど経ったであろうか。
気がつくと影は消えていた。
何もいないのを確認し、慎重に冒険者の元へ向かう。
金髪の冒険者はやはり女性のようだ。
体温はまだ暖かい。
急がないと。
持ち物を探ると冒険者証が出てきた。
ユリア・グレイラムという名前らしい。
名前などに興味はないが。
E級冒険者ライセンス・・、S・A・B・C・D・Eとあるうちの最下位。
まあこれもどうでもいい。
あとは、銅貨4枚。
今日は獲物が少なかったせいでこれでようやく銅貨6枚だ。
隠れていたせいで肩凝りが酷い。
腰も痛いしこれが限界だ。
そろそろ戻ろう。
地上へは各フロアに一つある転移魔法陣を使う。
地上に戻った俺がまずする事、腹ごしらえだ。
10時間ぶりの地上。
もう日が落ちておりひんやりとした空気だ。
ここはウエインスト地方にある、辺境の小さな街。
低級ダンジョンがいくつかあるせいで、初心者冒険者が割と多い。
宿もいくつかあり、その中でも一番古くみすぼらしい建物、ここに俺は8年前から滞在している。
凝った肩を揉みながら入り口のドアを開けると、威勢のいい女主人の声が出迎えてくれる。
それを無視して隅の方の小さなテーブルにつく。
ムームーの肉焼きコムル風味、それからディアッパを注文し、コル酒も1杯。
やはり仕事終わりは酒だろう。
食べ終わったあと、2杯目をいきたいところだが。
眠い。
今年51歳の俺にはもうお眠の時間のようだ。
晩飯を食べるととにかく眠い。
女主人に飯代を支払う。
銅貨2枚。
さっさと俺は2階の部屋に上がり、ベッドに倒れ込んだ。
第1話完
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本日の収支
収入:
・ダンジョンドロップ 銅貨6枚
支出
・ダンジョン入場料 銅貨2枚
・朝飯 銅貨1枚
・晩飯 銅貨2枚
・宿代 銅貨3枚
収支 銅貨−2枚
所持金 残り銅貨3枚
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