第27話 相談


「それでマリアンヌ、ハデルの事だけどどう思う?」


慰問の帰り道、ハデルには買い物をお願いしマリアンヌと私ことライトはカフェで休んでいる。


「どう思うって? いい子じゃない」


確かにその通りだが、私個人の考えとして『死を決意』する時間が短すぎる気がする。


元から命を賭ける約束の契約だから、嫌な話だがいざという時に盾になって貰わないと困る。


正直言えばリリアやマリアンヌの盾になり最悪、守って犠牲になれ。


そういう役割だ。


「そうだね……だけど、死を決意するまでが短すぎると思うんだ」


「やはり、ライトも気がついていたのね。私もそう思うわ」


今迄のクズ冒険者は例外だが、命を捨てるには覚悟がいる。


だが、ハデルは違う。


リメルの時もリリアの時も、既に覚悟が出来ているのか、すぐに動けた。


私はこれでも勇者だ。


勇者とは『勇気がある者』ジョブの特性なのか、決断が早くいざという時には勇気を奮い立たせ戦う事ができる。


そんな私でも命を賭けるという決意には数秒の決意がいる。


その時間のタイムラグが怖いのだが、どう考えてもハデルには決意までのタイムラグが無い。


リメルやリリアが危ない……そう思った瞬間には身を捨てている。


そう、まるでリメルやリリア、私やマリアンヌの為なら死んでも良い。


そう思える行動だ。


それを肌で感じ取ったからこそ、リメルやリリアは完全に『女』になった。


特にリメルは剣聖だから斬り込み役。


勇者パーティでは守れる存在じゃない。


寧ろ誰かを庇って死んでいく存在。


それなのに大切にされまるでお姫様のように守られてしまった。


あの恰好は頂けないが、ああなるのも仕方が無い。


リリアにしても『自分の為に命を捨てられた』んだ。


やり方は兎も角、ああなってしまうのは仕方ないと思う。


「だろう? 覚悟が全然違う。冒険者は元より我々よりも決意が早い。まるで、そう自分の命に価値が無い。そう思える程にな」


「そうね」


「それは、そうと今日はこの後、ちょっとハデルと話そうと思うんだ」


「ハデルと?」


「私は半分男だ、男が命を賭けるのには、なんかしらの意味がある。 きっとハデルにもある筈だ」


「そういう物なの?」


「マリアンヌ。理由もなく命を賭けるような人間はいないよ」


「確かにそうだね」


「ああっ、だから、私はその理由をハデルに聞こうと思うんだ」


「そうね、私も知りたいわ」


「ライト様、マリアンヌ様、買い物が終わりました」


「そう、それじゃハデルもなにか冷たい物を注文しなよ! 少し話そう」


「はい?」


さぁ、どう言って切り出そうか。


ハデルがコフィを頼み、飲み始めた所で切り出した。


私は駆け引きが苦手だからな。


「それでハデル、以前にも聞いたが、なにか困っている事があるんじゃないか?」


「特にありません」


一瞬、顏が暗くなった。


絶対にある筈だ。


地位や名誉が欲しいなら解らなくもない。


だが、ハデルがそれを望んでいるようには思えない。


ならば、命を賭けても叶えたい希望がある筈だ。


それを聞きたい。


「いや、ハデル、悪いが今迄の君の行動を見ていたから分かる。君には叶えたい望みがある筈だ。 君は私達の仲間だ。 困っているなら手を貸そうじゃないか? できるかどうかは分からない。だが、力になりたいんだ」


「そうよ、仲間でしょう? 困っているなら頼ってよ!」


暫く考えたのち、ハデルはゆっくりと口を開き始めた。


◆◆◆


「「そんな事が……」」


僕はライト様とマリアンヌ様に施設の事について『僕が死ぬ為に来た事以外について』話した。


「そうか、随分と苦労しているんだな」


「本当に大変だったんだね」


「すみません」


「あのさぁ、勇者パーティってある意味一蓮托生なんだ」


「そうね、パーティに加われば魔王討伐から逃げられないわ。死ぬか? 栄光か? の究極の二択なのよ。そこにハデルももう加わっているわ」


「それはどう言う事でしょうか?」


「魔王と戦う人間にはそれなりに特権があるんだ」


「そうね……」


「あの、もしかしてどうにかなるのですか?」


もしかして児童施設を助けて貰えるのかな?


「ねぇ、マリアンヌこれは私とキミ、どちらが動いた方が良いのかな?」


「そうね……ハデル。ハデルはホーリスターの建物や施設じゃなく、そこにいる子供や責任者が助かれば良いのよね?」


確かに生まれ育った場所だから未練はある。


だけど、一番大切なのは僕にとって妹や弟の様な子供たち、母親代わりのマザーテージー達が幸せに暮らせるかどうかだ。


「はい」


「そうね、ライトが国王に頼めば施設をどうにか出来るかも知れないけど、その後の運営はきっと火の車だわ。 建物と土地が手に入っても後ろ盾も居ないんじゃ、その後困窮するんじゃない」


「確かにそうかも知れません」


「それなら、私に任せて」


「そうだね、私が動くより聖女のマリアンヌが動いた方が良いかもね。任した」


「わかったわ。それじゃハデル、施設の方は私がどうにかしてあげるから、大船に乗った気でいなさいね」


「はい、マリアンヌ様、ライト様本当にありがとうございます」


「気にしなくて良いよ。仲間だからね」


「そうよ」


マリアンヌ様がどうにかしてくれる……


本当に良かった。



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