第15話 噂とは違う


「どうですか? 皆さま、今回はリメル様のご要望でミノタウロスのシチューにしました。 如何でしょうか?」


「美味しいよ! これ本当に僕の好みだよ! 早くハデルも席について食べなよ!」


「宜しいのですか?」


「うんうん、いいよね! ライト」


「私もハデルは仲間だと認めているよ! 一緒に食べよう」


「ライトの言う通りだわ! ハデル君も座って食べなさいな」


「はい、それでは失礼します」


許可を貰えたので席についた。


場所は、一番手前に座るのがマナーだったよな。


しかし、ハデル君?


マリアンヌ様はどうしたのだろう?


「マリアンヌ様……」


「あら、どう見ても私の方が年上ですわよね? だから、ハデル君? そう呼んだのだけど、嫌だったかしら?」


「いえ、そんな事無いです」


「そう? それなら今日からあなたはハデル君で、ところで食器がリメルとお揃いみたいですが、どうされたのですか?」


「リメル様に買って頂きました」


「そうなんですの? さっき部屋の前を通りがかりに見ましたが、寝具もリメルと同じような物でしたわね」


「そうなのですか?」


「うんうん、ハデルの寝具や生活用品は僕が使っていて使い心地が良い物を選んでいるからね。そりゃどうしても似ちゃうでしょう?」


「リメル、随分とハデルに優しいのね!」


「うん? リリア、当たり前じゃないか? ハデルは前衛で君やマリアンヌを守ってくれるんだから、これ位はしてあげないとね。 それに僕は実際に守って貰ったから、そのお礼も兼ねているんだ。あっゴメン。このシチュー美味いね。ハデルお代わり貰っていい?」


「はい、只今」


「ハデル、私もお代わり貰えるかな?」


「あっ、私も頂きますわ」


「はい、ライト様、マリアンヌ様」


「ずるい、私もお代わり頂戴!」


「はい、すぐにお持ちしますね」


僕はそう返事をするとキッチンに行きシチューをよそって戻ってきた。


座って僕もシチューとパンを食べ始める事にした。


「いただきます」


まさか、同じ食卓に着く事を許して貰えるなんて思わなかったな。


かなり酷いパーティと聞いていたけど、思った以上に優しく感じる。


確かに仕事は厳しいのかも知れないけど、それは勇者パーティだから当たり前といえば当たり前だ。


皆が美味しそうに食べてくれている姿を見て、心が少しズキッとした。


僕は此処に死にに来た。


勇者パーティなら簡単に死ぬ事が出来る。


そう思っていたのに、なんだか思ったより居心地が良い。


何でだろう?


◆◆◆


食事が終わり、紅茶を淹れてお茶請けにクッキーを出した。


クッキーは市販品だ。


「ハデル、食後のお茶まで用意するなんて、ありがとうな!」


「ハデル君、良く頑張っているわね」


「流石、僕のハデルだ」


「まぁ、やるわね」


普通にお礼の言葉を言ってくれる。


これが、本当に『希望の翼』なのか? 裏で『絶望の翼』って陰口を叩かれるパーティとは到底思えない。


噂とは全然違う。


噂って本当にあてにならないな。


まだ、数日しか過ごしてないけど、凄く居心地が良い。


これなら死ぬまでの間は楽しく暮せそうだ。


僕は施設の為に死ななくちゃならない。


だけど、これならただ死ぬのじゃなく、どうせ死ぬのなら『彼等の役に立って死にたい』 そう思った。


「どう致しまして」


そう伝えると僕はキッチンで洗い物をする為にその場を離れた。







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