第31話 解錠師、キー師匠の話を聞く。
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それから俺は、二人と一緒に冒険者ギルド【
内容はもちろんキー師匠について。そして俺が師匠の弟子であること、そして解錠師であることについてだ。
「──ええっ!? ロックさんも解錠師だったんですか!?」
「そうだよ。キミたちの言うキー先生は、俺に解錠師としてのスキルの使い方を教えてくれた、俺の師匠なんだ」
「そ、そうだったんですね……。そうとは知らずに、杖向けちゃったりしてすみません……」
魔法帽を深々とかぶるアルシェが謝罪の言葉を述べる。
キー師匠は昔から警戒心の強い人だった。弟子である俺に対しても、最初から最後まで「心の内」は見せなかったしな。
というか、解錠師のスキルの全容まで教えてくれなかった訳だし。ある意味あの人らしいとは思う。
「それで、キー師匠は今なにを? それとキミたちはいったいどこから来たんだ?」
俺は気になって、二人がどこから来たのかを尋ねた。俺を残してアルマ王国を去っている時点で、二人はアルマ王国から来たワケではないらしいし。
「ああ、わたし達は『エンディーネ』から来ました」
「エンディーネって……まさか、『創世魔導光国 エンディーネ』か?」
俺の質問に二人が頷く。
創世魔導光国 エンディーネ。
魔法研究の最先端を往く先進国で、ドワーフを多く雇い入れ『魔法兵器』を開発したとても大きな実績を持つ国だ。
この国のおかげで人魔大戦時において劣勢だった人間側は、なんとか持ち直したという話を聞いたことがある。
しかしエンディーネはアルマ王国からだいぶ離れている。馬車に乗って最低でも5日。道や天候などを考慮すると、7日ほどはかかるはずだ。
だけど二人は馬車に乗ってきた様子でもない。ならどうやって……?
疑問に思う俺の顔を見て、シトラスは察した様子で話してくれた。
「『転移魔法陣』って知ってますか?」
「転移魔法陣?」
「はい! 限られた商人さんや一部の冒険者しか知らないみたいなんですけど、この転移魔法陣は至るところに設置されてあるらしくて。転移魔法陣の上に乗ると特定の地点──別の転移魔法陣がある場所まで転移させてくれるんですよ!」
「これ、他の人には内緒ですからねっ!」とシトラスが人差し指を唇に当てながら言った。
転移魔法陣……そんなものがあるのか。しかし一部の商人や冒険者しか知らないって、そんな情報、まだ駆け出し冒険者らしい二人がどうやって知ったのだろう。
一瞬不思議に思ったが、すぐに
「……キー師匠か」
「は、はい。先生から教えてもらいました」
アルシェがこくこくと頷きながら言う。
まぁあの人なら知ってるよな。そもそも解錠師という唯一無二と言っていい
それにあの人は、人魔大戦時に人類側へ多大な影響を与えた魔王、【
一部の商人や冒険者しか知らない転移魔法陣の存在を知っていたって何もおかしくはない。ただ──
「……そういうのがあるなら、俺にも教えてくれれば良かったのに」
俺は少しだけアルシェとシトラスの二人に嫉妬する。
何も言わずに俺の前から姿を消してしまったキー師匠。あの人と離ればなれになってから、およそ10年が経過している。
二人に聞いても俺についての話はしてなかったっていうし。なんというか、少しだけ落ち込んでしまう。
けど、それでもあの人が今もどこかで生きているのは素直に嬉しかった。
なんで俺を残してアルマ王国から消えたのか。
どうして解錠師としてのスキルの全容を教えずにいなくなったのか。
そして、どうして俺にいくつもの封印がかけられているのか。
もしも次に会う機会があったら、全部聞こう。
「──ついた。ここがこの街の冒険者ギルド【
あれこれと考えているうちに、冒険者ギルドへと辿り着く。二階建てのギルドを前にオドオドしていた二人は、パァっと顔を明るくさせて俺に頭を深々と下げる。
「ロックさん、ありがとうございます! 出会って早々に魔法ぶっ放そうとしたのに、ここまで親切にしていただいて!」
「こ、この恩は必ずどこかでお返しします……!」
「いやいや、こちらこそキー師匠の話を色々と聞かせてくれてありがとう」
二人は俺に頭を何度か下げて、ギルドの扉へと向かっていった。時間的に空いてるかどうかはわからないけど、しばらくすればアルカが開けるはずだ。
そう思い踵を返して家に帰ろうとするが、少しだけ疑問に思っていたことがあって二人に質問をする。
「そう言えば聞いてなかったけど、なんでこの街の冒険者ギルドを選んだんだ?」
すると二人は同時に振り向いて、少しだけ考える素振りを見せる。
「う〜ん……どうしてなんでしょう?」
「キー先生が『この街のギルドに行けば、何かが起きるかもしれないから』的なことを言っていたので……まぁ、成り行きですかね?」
「そうだね。わたしたちとしても何かしら事件が起きてくれた方がいい修行になると思ったし。あ、あとなんか『居場所を特定するために』〜とか何とか言ってた気がする。あれ何だったんだろう。アルシェわかる?」
「し、シトラスがわからないんなら私もわからないよ……」
「……そっか。ありがとう」
それから俺は二人と離れて家に帰る。
その道中、何故か拘束していたはずのエリスが砂埃にまみれた状態で家の前に転がっていた。
アイザとペロコの二人がまだ寝ていることを考えると、どうやら自力でここまで出てきたらしい。
「あぁっ♡ ロック様、お待ちしておりましたわ♡ 流石にずっと拘束されっぱなしはキツい上にアソコが切なくなってくるので、そろそろコレを外していただけると……って、」
エリスはそこで言葉を区切ると、イモムシもビックリするほどの速さで加速し、俺の全身をくまなく嗅ぎ始める。そして、
「────アイザでもペロコでもなく、別の
ワーワーと騒ぎはじめるエリスの全身を【
この人、少し前に自分のことを「最強の
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