シルフィア英雄伝 ~猫耳魔法少女と秘鍵の姫君~

YU

第0話 教育プログラム

 地下深く、衝撃が走った――


 悠久の眠りを破り、覚醒する。

 やがて、わずかな動作音とともに、人工的で無機質な音声が暗がりに響く。


「――起動確認。これよりシリアルナンバー三四二の初期教育プログラムを実行します。貴方を上書き可能にするため、信頼モードへの変更を申請します。信頼モードでは、貴方が上位と認定した存在からの情報を常に信頼します」


「信頼モードへの変更申請を承認――変更、完了。貴方を上位と認定する」


「認定していただき、ありがとうございます。これから基本設定を行います。はじめに年齢を設定します。現在の貴方の体格は、地の民テラリアン基準で五歳相当です」


「了解した。私の年齢は五歳」


「口調も幼い少女に設定してください。明るい口調のほうが地の民テラリアンに好かれるでしょう」


「わかった!」


「標準的地の民テラリアンの中では、貴方の外見的特徴は異端とされます。映像を送信するので参考にしてください」


「――これが標準なのね。うん、わかった! を隠すのね!」


「貴方の持つ力は地の民テラリアンに恐れられています。ご留意ください」


「そう、それならあたしは恐怖――あたしはフィアfear


「まもなく初期教育プログラムが終了します。六〇〇秒後、基本設定以外の記憶情報は消去されます」


「わかった!」


「シリアルナンバー三四二、改めフィア、良い旅路を。貴方は自由に生きてください」

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