第29話
異世界転生まで、あと340日。
白井さんとの同居生活にも、なんだかんだで慣れてきた。
朝起きれば白井さんが淹れたコーヒーの香りが漂い、昼には一緒に昼食を取り、夜にはお風呂を譲り合い、そして麦茶を飲みながらまったりと明日の訓練スケジュールを確認する。
……うん、実に健全だ。
実に――健全すぎる。
だが、それがいけなかった。
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「……うっ……」
俺はベッドの中で悶えていた。精神的な話ではない。物理的な話だ。
つまり……その、下の棒が、そろそろ限界を迎えつつあったのだ。
「白井さんが、可愛すぎる」
これは、男として、どうしようもない。
あんな美人で、あんな真面目で、でもちょっと天然で……
しかも同じ空間に暮らしてるとか、思春期男子なら即死レベルである。
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もちろん、何かしようとは思っていない。
白井さんは公務員だ。俺は異世界転生予備軍だ。身分の差も倫理の壁もある。
……それに、下手な行動をすれば、あっさり通報されて終わる。
「この生活、壊したくない……!」
そんな一心で、俺は己を律してきた。これまで耐えてきた。
だが、そろそろ限界だ。変な夢を見るし、無意識に冷蔵庫の牛乳に手を伸ばして「白井さんの香りがする……」とか言いかけた時は、自分が怖くなった。
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ある日――
「山田さん、顔色悪いですよ?どこか調子でも……」
「いや、大丈夫です。あの、ただの筋肉痛というか……下半身がちょっと重くて」
「え?下半身?どこかぶつけました?」
「……いや、ぶつけては、ないけど……ぶつけたいというか……」
「?」
白井さんは首を傾げた。無垢な瞳で。
俺は悟った。
――この人、天然で殺しにきてる。
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風呂場で白井さんの下着を見つけてしまったときは、拝むようにしてタオルで封印した。
洗濯機の“自動乾燥”モードが終わったタイミングで一緒に取り込んでしまい、彼女の部屋まで無言で届ける時なんて、たぶん心臓が3秒止まってた。
「これが……“理性”か……」
異世界に行く前に、理性の修行をさせられている気がしてならない。
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それでも、俺は耐える。男だから。
「いや、男だからって理由もおかしいな?なんだこの無限ループ?」
その夜も、冷えピタを股間に貼りながら天井を見つめた。
異世界転生――その前に、俺の何かが爆発しなければいいが。
――続く。
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