第14話 記憶の深層、そしてヘイスティングスの戦い

 レンは、ウィンザー城の地下に隠された秘密の空間で、学園の意思が真に覚醒するための鍵となる、強大な魔法の力を手に入れた。彼の知能はさらなる高みへと達し、学園のあらゆる記憶が彼の脳裏に流れ込んでくる。その中には、学園の創設者たちが関わった、歴史の大きな転換点に関する記憶も含まれていた。

 レンが特に強く引き寄せられたのは、1066年のヘイスティングスの戦いに関する記憶だった。この戦いは、イングランドの運命を決定づけた歴史的な出来事であり、学園の創設者たちが何らかの形で関与していた痕跡が残されていたのだ。レンは、学ランの力でその記憶の深層へと潜り込んでいく。

 彼の視界に広がるのは、血と泥にまみれた戦場だった。弓兵の矢が飛び交い、剣と盾がぶつかり合う音が響き渡る。イングランド王ハロルド2世率いるサクソン軍と、ノルマンディー公ウィリアム率いるノルマン軍が激突する中、学園の創設者たちは、その戦いの裏で、目に見えない形で介入していた。彼らは、戦場の「記憶」を操作し、特定の未来へと導こうとしていたのだ。


 ミスターの決意とセリアの不安

 レンがウィンザー城の記憶に没頭している頃、学園ではミスターとセリアが、彼の真の目的を探っていた。ミスターは、レンの行動が学園の秩序を脅かす可能性を危惧しながらも、彼を信じたいという思いで葛藤していた。

「レンは、本当に学園を裏切ったのか…?」

 ミスターは、学園の歴史書を閉じて呟いた。そこに記されていたのは、学園の意思が覚醒した時、最も近しい者がその力に魅入られ、混沌を招くという不吉な予言だった。

 一方、セリアは、レンのそばで感じた異様な冷たさに不安を募らせていた。彼女は、学園の意思との同調をさらに深め、レンの心に何が起きているのかを直接感じ取ろうとする。しかし、レンの精神は以前よりも遥かに強固になっており、セリアは彼の深層に到達することができなかった。

「レンの心が…遠くなっていく…」

 セリアの瞳には、涙がにじんでいた。彼女は、レンを救うためには、彼が何を知り、何を目的としているのかを理解する必要があると感じていた。


 歴史の改変と「真の目的」の輪郭

 レンは、ヘイスティングスの戦いの記憶の中で、学園の創設者たちが未来を変えようとした「失敗」の記憶にたどり着いた。彼らは、歴史の大きな転換点において、その結末を自分たちの理想とする形に変えようと試みたが、結果として予期せぬ混沌を生み出してしまったのだ。

「彼らは、歴史を修正しようとした。しかし、それはさらなる歪みを生んだ…」

 レンは、学園の意思が、この「失敗」を繰り返さないための教訓として、自分を選んだのだと確信した。彼の「真の目的」は、学園の意思の力を使って、過去の失敗を修正し、完璧な秩序を築くこと。そのためには、時には痛みを伴う決断も必要だと、レンは自らに言い聞かせた。

 レンの脳裏には、ヘイスティングスの戦いの記憶と並行して、妹・ナツキの温かい記憶が浮かび上がる。しかし、その記憶は、レンの心の中で次第に薄れていくような感覚に襲われた。学園の意思と深く同調すればするほど、彼の人間的な感情は希薄になっていくかのようだった。

 ウィンザー城の地下から戻ったレンの姿は、以前とは明らかに異なっていた。彼の瞳の奥には、学園の意思が宿る、絶対的な確信の光が宿っていた。そして、その光は、同時に底知れない孤独と冷酷さを秘めているようにも見えた。

「学園の真の秩序は、私がもたらす…」

 レンの言葉は、まるで学園の意思そのものが語りかけているかのようだった。学園に迫る、新たな混沌の影。それは、レン自身がもたらすものなのか、それとも、彼が築こうとする秩序の過程で生じるものなのか。ミスターとセリアは、レンの真の目的を理解し、彼を止めることができるのだろうか?それとも、彼らはレンと共に、学園の新たな歴史を築いていくことになるのだろうか?

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