ゼロ適性召還士と記録されない契約獣
暁月奏真
序章
星環ノ召還士
アルシオネ帝国――召還術を“理”と定め、千年以上続く巨大な国家。
その歴史の始まりは、かつて一人の契約者が異界の獣と交わした、たったひとつの契約から始まったと言われている。
その契約を“理”として定めた瞬間――
この世界は、
以後、召還術は帝国の根幹となり、人と異界は新たな関係を築いていく。
以来、召還術は戦争を終わらせ、街を守り、人の文明を押し上げた。
今や召喚士は、帝国において“職業”ではなく、“階級”とすら見なされている。
そんな召還士を育てる為に創設されたのが、帝国直轄の育成機関――国立
召還術を学び、契約獣と共に歩む者達の、始まりの門。
◆
『観測完了。適性値:ゼロ。魔力反応、感知されず』
無機質な音声にそう告げられ、測定が終了した。
アストラリアに入学する前の事前検査のようなもので、彼等はこの観測結果に基づき配属されるクラスが決まる。測定結果はEと表示された。
これが何を意味するのかというと、落ちこぼれの格付けを入学早々押されてしまったという事だ。
普通の生徒ならばこの時点で落胆する者、己の無力さを嘆く者、様々な感情が渦巻きながら最悪の学園生活を謳歌する事になるだろう。それだけ「E判定」というものは世間から見れば、十分過ぎる程の欠陥なのだ。
しかし、この男はそんな事を一切気にも止めずに会場を後にする。
「――レイン。どうでしたか?」
会場の外で待ち惚けていたのは、銀髪碧眼の少女。長い後ろ髪は腰にまで到達し、誰が見ても振り返ってしまう程に、彼女の姿には目を奪う何かがあった。一人で会場の出入り口に佇んでいるのだから目立ってしまうのも無理はないだろう。
「E判定だってさ」
レインと呼ばれた男は悪びれることもなく告げた。
彼の名はレイン・クロフォード。召還術を操る魔力もない彼はこの結果が妥当だろうと理解していた。なので判定が最低クラスでも本人は納得のいく結果であり、寧ろ適当なクラス分けをされなくてよかったとすら思っている。
「なぜ貴方が最低クラスなのです? 何かの間違いでは?」
しかし、その銀髪の少女はこの結果に納得がいっていないようだった。怒りをあらわにするわけではないが、どうやら検査機器の不具合を疑い始めたようだ。
もっとも、その機器とは“音声による結果の通知装置”でしかない。本質的な魔力検査は、別に行われる。
検査の核となるのは、“契約石”と呼ばれる球体。魔力を秘めたそれに触れ、意識を集中させることで開かれるのが“
つまり、レインにはその魔力が一切備わっていなかった。
本来であれば、入学すら許されない“E判定未満”の存在――それが彼だった。あの無機質な音声から放たれた言葉を聞いた検査官の表情は、あり得ないものを見たような、結果に納得していないような感じだった。だからこそ、彼女が疑念を抱くのも無理はない。
「事実だよルク。俺に魔術は使えないんだしさ」
レインは宥めるように向き合う。しばらくその少女、セフィルス・ルクレティアに睨まれるが、これ以上言っても無駄だと悟ったのか、諦めるように溜息をついた。
「……いいえ、もう十分です。それでは私も行って参りますね」
銀色の髪を
ルクを待っていてもよかったが、この場で最低クラスのレインが佇むには周りの視線が痛い。彼は若干逃げるように、その足を体育館に運ばせた。
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