第18話:2回目の召喚ガチャ

「よし!やるか!」

俺は力強く【はい】を押した。


すると床の召喚陣が光り出した。

俺は何も期待しないで、召喚獣の出現を待つ。

(まあ、一回目はまたスカだろう。)


すると、ポンッ!という間抜けな音と共に何かが召喚陣から飛びだした。


「えっ?!」


驚いて、飛び出した存在を確認すると、手のひらサイズの水の球体だった。


「何だこれは?」


良く眺めても、フワフワと浮いているだけで何も反応しない。


(こういう時こそ、鑑定だよな。)

俺は謎の物体に向けて鑑定すると、


名前:なし 種族:召喚獣(水の精霊) レア度:N レベル:17

力:8-5 知恵:8-5 精神力:8-5 体力:8-5 器用さ:8-5 素早さ:8-5 運の良さ:19-5

スキル:スプラッシュ:水を放出する。智恵が影響。


と表示された。


(レア度N(ノーマル)。レア度が低いから能力は総じてマイナス補正がかかるのか・・・っとひそかに俺の運が上がっている。)


マイやターレス達を助けたことが人助けをした事と認識されたらしい。


(レア度が低いとはいえ、水を生み出せると考えると有能だな。こういうのを上手く使う事も重要になってくるのかも?)


俺が色々考えていると、

【名前を決めて下さい。】

という表示が出てきた。


たしかにこいつには名前がない。

Nなどには名無しが結構いるのかもしれない。

わかりやすく短い方が良いと思ったので、【水】という名前にした。

我ながら酷いネーミングである。


『こっちに来い、【水】。』


声を出さずに通話してみると、伝わっているようでフワフワと近くに寄って来た。

こちらに話しかけてはこないが、こちらの意思は伝わるようだ。


「これは幸先いいな。ドンドンいこう。」


俺はその後何回かスカを出しながらもガチャをし続けて、いつの間にかあと一回となっていた。

ただ、その間にNの風の精霊【風】、火の精霊【火】、土の精霊【土】をゲットした。

能力は【水】と変わらないが、スキルは各々得意分野の属性攻撃?が出来るようだ。

普通ならNだけだとがっかりするところだが、もっと最低のスカがあり武器防具も一緒の闇鍋ガチャから考えたら弱いとはいえ、有用そうなスキルを持っている精霊たちは当たりの部類に思えてきた。

まあ・・・相対的によく見えているだけかもしれないが。


(とはいえ、ゲームのガチャみたいに10連なら最低保証として最後にR(レア)ぐらいは出してくれていいんじゃないか?)


前回のガチャでは最後にヒルダが出てきたところを考えると、意外に最低保証はあるのかもしれない。

俺は軽い気持ちで最後の【はい】押す。


すると、周囲を漂っていた精霊が召喚陣の中心に集まり、回転し始めた。

まるで渦のように混ざり合い、召喚陣を覆い隠していく。


(なんだ?何が起こっている?)


突然の謎演出に驚くが、やがて収まり召喚陣が見えるようになると、いつの間にか誰かが立っていた。

頭にはねじ曲がった角、黒髪のオカッパでメガネをつけており、まるで執事のような服を身にまとった美しい少年だった。


(何者だ?頭に角が生えているところから、少なくとも人間ではないようだが?)


もちろん召喚獣だから全て人間ではないのだが、獣というよりは人間に近い。

それを言うならヒルダは完全に人間の外見だが・・・。


『あなたが僕のマスターですか?僕の名前はフルーレティと申します、以後お見知りおきを・・・。』


彼はうやうやしくお辞儀をしながら、自らの名前を名乗った。

洗練された動きでこちらがのまれそうだ。


『ああ、俺の名前はシンヤという。こちらこそよろしく。』


彼は俺の自己紹介が終わった後、ニヤリと笑った。

その笑みが何を意味していたのか、その時にはわからなかった。









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